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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
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幼女と、巫女服と

もしよかったら感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします。


「アハハ、お姉さん。なんで私がここにいるの?って顔してるよ?分かりやすいねぇわかりやすいねぇ」

「そりゃ当然……というか、すぐには襲い掛かってこないんですね」


グリムから視線を離さないようにしつつ、少しずつ【霧海】を広げていく。

白い部屋だからこそ、私の白い霧が目立たない。


「すぐに死なれても楽しくないからねっ」

「あは、そういうものですかね……【深影-影槍】」


とりあえずで1本だけ【影槍】を撃つ……が、やはり黒い靄によって浸食され最終的には靄の一部へと変化されていった。

……あぁ、確か魔力に対して反応するタイプの固有魔術だったっけ。


確か前回戦った時は、相手が靄を手に集めていたからこそ【異次元連結】を使い殺せたのだ。

しかし今回は……どうにも、手に集中させるようなことをさせなさそうな予感がする。

私でさえ前回失敗したことは改善しようとするのだ。

名の知れたプレイヤーがそれをしていないはずがない。


「無駄だよ無駄無駄。忘れちゃったのかな?」

「……あはー。これ結構面倒な気がするなぁ」


気付けばグリンゴッツも近くにいない。

魔術的な繋がりは依然感じるため問題はないが、この空間に入ってからPTメンバーのHP表示などが文字化けし、きちんと見れなくなっているのだ。

どうにかしてここから出るほうが都合がよさそうな気がする。

……PTチャットも封じられてるのね。通りで誰からも安否確認が飛んでこないと思ったら。


「お姉さんこれだけしかやってこないの?……じゃあ、行くぞ」

「おいでませ、おいでませーっと」


グリムがこちらへと突っ込んでくるが、靄以外には気を付けるものはない。

速度はそこまでないし、動きも読みやすいものだ。

周りに石が転がっていればあの時と同じように、一見いじめの現場のような戦闘が繰り返せたとは思うのだが……。


……ん、そういえばなんで彼女の周りは崩れていってないんだろ?

この白い正方形の部屋は、恐らくあの時こちらへと飛んできたファルシ側のプレイヤーが使った固有魔術にて作られたものだろう。

そしてグリムが纏う黒い靄が、以前私の【霧海】を徐々に浸食していったはずだ。


「ちょこまかとっ今回も避けやがって!」

「いやいや、さすがにそれ食らったら一発アウトですからね?避けますよ」


つまりは、固有魔術すらも浸食し黒い靄へと変えていくはずなのだが……うん。

変わっていっていないということは、だ。

……わざと触れないように靄を操っている?ということは、だ。


足元は黒い靄を纏っていない可能性がある。

グリムの突進を避けつつ、【影槍】を3本水平に足元へと発射する。


「チッ」


彼女はそれを上に飛びつつ避け、体勢を立て直すために一旦距離を取る。

深追いはせずに、少しずつ少しずつ確かめていったほうがいいだろう。

……靄で受けずに飛んで避ける。うん、予想は当たってるのかな。


【白霧結界】は恐らくあの黒い靄に浸食されてしまうために使えない。

魔力に反応するということは、【異次元連結】を使おうにも浸食されてしまう可能性が高い。

近づこうにも私自身が魔力をもっているために、確実に死ぬだろう。


「……あれ?これ詰んでない?」

「今更ァ?じゃあ、一緒に沢山踊って踊って踊り続けようね、お姉さんッ!」



-----------------------



リック視点


「……うん。閉じ込められたのか、俺」


周囲を見渡しながら、【魔臭捜犬】の効果が発揮されていないことに気付いた。

ある程度の方向までは分かるものの、途中で魔力の臭いが途切れてしまってPTメンバーの魔力を探知できないのだ。

……恐らくここは結界系統の固有魔術の効果内。早めに抜け出さないと何が起こるか分からないな。


「ふふ、君が私の相手?楽しめるかしら」

「は?」


白い壁を触って調べていると、背後から声が掛かる。

振り向くとそこには巫女服を着たエルフ耳のプレイヤーが立っていた。

……誰だ?巫女服、って事は禊術系統の使い手だろうけど、禊術はドミネくらいしか取得できる国はないはず。


「ファルシ側のプレイヤー、か?」

「えぇ、そうですよ。どうも、森精族の音桜と申します。……では殺しますね」

「おおっと!?」


突如飛んできた針を咄嗟に発動させた【物絶】で弾きつつ、相手から距離をとる。

森精族ということは、風系統の魔術や補助魔術に特化している魔術ビルドをしているはずだ。

また巫女服というのは、禊術という巫女や神主しか取得できない魔術を使うのに必須になると言われている装備だ。


……音桜、って名前には聞き覚えはないな。ということは通り名無しのプレイヤーか。

ミーティングで挙がっていた名前の中には音桜という名前はなかったはず、だ。

単純に記憶力の悪い俺が忘れている可能性もあるのだが。


「あら、防がれてしまいましたか……では、仕方ありませんね」

「……【結界-物絶】及び【呪絶】発動」


目の前に物理攻撃と魔術に対して効果のある結界を展開しておく。

さらに、思考発動にて【身体強化】を足元を重点に発動させ、逃げ回れるようにしておいた。

PTメンバーの中、唯一の男の戦いが始まった。


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