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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・後半
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始まったミーティング

もしよかったら感想、ご指摘、評価などよろしくお願いします。


今年ラストの投稿です。

8月から投稿し始めたこの作品も、気づけば4ヵ月ほど続いたようで。

ここまで飽きずに続けられたもの応援してくださった皆さんのおかげです。

今年はありがとうございました!来年もよろしくお願いします。

ではでは、よいお年を。


グリルクロスの工房を後にした私は、赤ずきんたちに拉致された。

まぁ拉致といっても、任意同行のような形だが。

場所はレギン内にある適当な喫茶店だ。


「事前ミーティングって実際何するんです?」

「んー。まぁ基本的には当日の動きについてかな。『静謐な村』である程度みんなの動きも見れたことだしね。……あぁ、そうだクロエちゃん。あの時考えておいてねって言ったこと、答え出た?」

「……えぇ、一応は。というかですね」


私の後ろに立ちながら、真剣な顔でいつまでも狼耳を触り続ける赤ずきん。

周囲のプレイヤーやNPCの客に奇異の目で見られていることは、まぁ別にいいのだ。

顔が半分隠れるように巻かれて装備されているアンガーバンデージに比べれば、それくらいまだ普通な部類だ。怖がられないのだから。


では何が問題かといえば、だ。


「なーんでお金取ろうとしてるんですかね……」


赤ずきんとクリス、そして何故か喫茶店にいたハロウによって、狼耳お触り1回につき金をとる商売を始めようとしていた。

しかもきちんと喫茶店運営しているNPC及びオーナーであるプレイヤーに許可を取った上で、だ。


「んん?良いかいクロエちゃん。この世界にはおよそ人に近い種族しか居ないのは知っているだろう?」

「その中に、所謂ワーアニマル……獣人は居ないのよ。いたとしてもこのゲームじゃモンスターに分類されてるわね」

「そそ、だから安全に触れる獣耳ってのは貴重でね」


ふにふにふにふに、と赤ずきんとハロウが狼耳を触りつつ説明してくれる。

……いや、別に感覚が繋がってるわけじゃないからいいんだけど。いいんだけど!


「いやでも、これあれですよ?ただの狼耳がついたカチューシャってだけですよ?繋がってないんですよ?」

「はは、そんなの言わなきゃバレないもんさ」


そんなものだろうか。

いや、しかしだ。私はここにミーティングをしに来たのだ。そのミーティングが本当に必要なものなのかはともかくとして。


「とりあえずミーティング先に終わらせましょう?その後なら何でもいいので」

「お、本当かい?……ほらほら散った散った!ごめんよ、先にやらないといけないことがあるからね!後でまた来ておくれ!」


周囲から主に女性の残念そうな声が上がりつつ、集まっていたプレイヤーたちは散っていった。

赤ずきんとハロウも触っていた手を放し、それぞれの席へと付く。


はぁ、とため息を付きつつ、こんなちょっとした明るい雰囲気は今日からしばらくはないのだろうな、と思う。

何せ明日からは戦争が始まる。

現実のような侵略しつつされつつのような戦争ではないが、それでも明るい雰囲気というのはないだろう。


「さて、じゃあミーティング……というよりかは、事前の相手側の主力分析、及びその情報の共有を行っていこうか」

「ふふ、まぁそんなことをするってことで私が呼ばれたの。確かに私はふらっと色んな国で仕事していたからね」


WOAだけではないが、対人要素のあるゲームでは掲示板でも有名なプレイヤーの名前は挙がれども、そのプレイヤーが使う戦術などはあまり出回らないことが少なくはない。

かなり迷惑なPKならともかくとして、有名プレイヤーたちは確かに身内で固まりプレイをしていることが多いためだ。


だが、ソロプレイヤーなら?

確かにソロプレイしている人は少なくはない。

だが、そういうプレイヤーに限って掲示板には書き込むことは少ない傾向にあるし、そもそも人の居ないような場所で狩りをするのが基本のWOAでは尚更情報が出にくいだろう。


「ファルシの人らと仕事したことが?」

「えぇ……といっても、ちょっとした傭兵程度なんだけどね。参加してたプレイヤーも多いわけじゃなかったし、そこまで情報を持ってるわけじゃあないんだけどね」


ふふ、とハロウが薄く笑う。

……こういうところから情報ってのは漏れていくんだなぁ。


そう、出にくいといっても人の口には戸は立てられないもので。

結局はどこかから噂という形で情報は漏れていく。

それが正確な情報かどうかはともかくとして。


「で、何人くらいだい?」

「うん、有名な【童話の人物】は勿論として、2回戦ったグラサンお兄さんと他に3人くらいかしら。まぁプレイヤーの部隊長を務めるならってところの人らのは抑えてあるから大丈夫よ」

「あとは私たちの身内のガビーロールさんですね。彼の所有魔術は詳しくは知らないですが……身内ならではの情報、というのがありますしね」


集まっている上位陣……赤ずきん、ハロウ、灰被りの3人のおかげか、少なくともある程度のファルシ側の上位プレイヤーの情報がその場に集まっていく。

クリスとリックの方をみてみれば、彼らも彼らで少ないながらもファルシの有名所の情報を持っているらしく3人の会話に混ざっていっている。


ここでふと気づく。

これ、私いる必要……ないのでは?

……いや、いやいや。情報をだね。共有してあれば戦場で色々とできる可能性はあるからね。


ここでポン、と右肩に誰かが手を乗せた。

そちらのほうを見てみれば、グリンゴッツが【チャック】を使ってまで私の肩まで手を伸ばして乗せていたのだ。


「グリンゴッツ、言わなくていいよ」

『ご主人、この場に必要ないな』

「おうコラ、ご主人様に喧嘩売ってんのかい」


そんなこんなで、私が居る意味があるのかどうか分からない会議は続いていく。


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