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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・前半
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自分は?

もし良かったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


「……というわけで」

「うん、私としてはホントゲームの話で良かったと思ってるよ」


事の経緯を説明し、赤ずきんの誤解を解く。

グリンゴッツは後ろで何やら肩をすくめて頭を横に振っているが、直接見ずとも【霧海】で感知出来ているのを忘れているのだろうか。


赤ずきんは一度考えるように唸ると、私に向かってこう聞いてきた。


「クロエちゃんはさ、実際プレイスタイルどういう形にしたいの?」

「プレイスタイル……ですか?」

「そう、プレイスタイル。色々あるでしょ?例えばぁー……クリスちゃん。あの子は支援兼火力役の後衛だね。私なんかもそうなるかな?まぁそんな感じで、自分をどこに置きたいかっていうのを一度明確にしたほうがいいと思うよ」


……自分をどこに置きたいか、か。

思えば、自分の戦い方はめちゃくちゃだ。

遠距離から攻撃出来るような魔術もあれば、それを使いつつ短剣を両手に敵へと突っ込んだりもしている。


この『静謐な村』に入ってから最初の戦闘でも、やろうと思えば遠くから安全に狩る事が出来た筈なのに、わざわざ危険な至近距離まで行って【魔力装】などを使っている。

だが……。


「あの、プレイスタイルの話って範囲攻撃魔術と何の関係が……?」

「はっはっは、大いにあるよ。考えてもみなよ?近接戦闘をするならば、それに合わせた……例えば得物の刃渡りを変えたりだとかすれば範囲攻撃にはなるだろう?」

『つまり、ご主人のプレイスタイル次第で範囲攻撃に使用する魔術が変わってくると』

「そゆこと、グリンゴッツくんはイイね。賢い」


赤ずきんはグリンゴッツの頭を撫でる。

しかし、そうか。確かにその話には一理ある。

自分の立ち位置で使うものを変えるのはその通りだし、実際合っているものを使った方が自爆も少ないだろう。


……でも、私のやりたいプレイスタイルってなんだろう?

他のゲームなら役割というか、やるべき事がしっかりと決まっていたから決めやすかった。

前衛で敵を引きつけたりだとか、火力枠として多くの敵を屠ったりなど本当に分かりやすい。


しかし、このゲームはどうだろうか。

自分で出来る範疇が広すぎて、逆に決めかねている……と言えばいいのだろうか。

やろうと思えば1人で支援から火力、引きつけなど全てが出来てしまう。


ホムンクルスやゴーレム、グリンゴッツのように傀儡なんかを使えばもっと出来る事の幅が広がっていく。


だからこそ、プレイスタイルを決めてやる必要があるのだろう。

幾ら出来る事が多いといっても、方向性を決めてやらなければ、ただの器用貧乏となってしまう。

特化させる必要はないにしても、器用貧乏になるよりかはマシだろう。


「うーん……?」

「悩め悩め若人よ、ってね。相談には乗るから、戦争始まる前には決めちゃいなー」

「あっ、えっ、はい」


じゃ、と言って赤ずきんは他のメンバーがいる方へと去っていく。

範囲攻撃をどうするか、と悩む筈が思ってた以上に大きな問題を抱えてしまった。

グリンゴッツがこちらを見てくるが、大丈夫だと返事する代わりに頭を撫でる。


考えてみれば、このPTの中でプレイスタイルがふわっふわしてるのは私だけなのだ。

赤ずきんやクリスはさっき例に出されたように。


灰被りは見ている限り、前衛も出来る火力枠の中衛辺りだろうし。

リックに関しては、元々組んでいたクリスに合わせた形で前衛を出来るように。

彼に関しては、自分の固有魔術との相性もあるのだろう。


赤ずきんが私を遊撃というポジションに置いたのも頷ける。

ただそのポジションが欲しかったというわけではなく、私だけどこに置いても中途半端なのだ。


「わっかんないなぁ……」


私は一体、何がやりたいんだろうか。

答えはすぐには、出ない。



-----------------------



「さてと、皆休めたかな?」


赤ずきんの言葉に、全員頷きを返す。

あの後結局、唸り続けて考えていたが自分の中で答えは全く出てこなかった。


このダンジョン攻略中に答えを出したいが、それまでは遊撃というどっちでも出来るポジションとなるだろう。

全体を見渡せる位置で、他のメンバーの動きを見て考えろという意味もありそうだ。


急ぐ必要はないのだ。

出来るだけ早めには答えを出したいが、答えを誤ると今後のプレイに支障が出るのだから。


「じゃあ休憩無しで?」

「うん、一気に進んじゃうよ。元々は戦争前に各個人が何出来るかを知りたかっただけだしね」


と、私が考えている間にも話は進んでいたようで。

どうにも、休憩無しでそのまま攻略を終わらせてしまおうという話らしい。

移動には赤ずきんのかぼちゃの馬車を使えば、歩くよりも楽だろうし速いだろう。


赤ずきんが固有魔術を使い、かぼちゃの馬車を呼び出す。

グリンゴッツを抱え、それに入ろうとした時灰被りに話しかけられた。


「あの、クロエさん」

「?はい、何です灰被りさん」

「その、赤ずきんさんはあれでよく周りの事を考えています。何言われたかは分かりませんが……」


あぁ、彼女は彼女なりにこちらを心配してくれたのだろう。

確かに赤ずきんと話してから、私だけ深刻そうな顔して考え込んでいたら心配にもなるだろう。


「あは、ありがとうございます。大丈夫ですよ、酷いことは言われてないですし」

「そうですか?なら良いんですけど……」


そんな話をしながら、馬車へと乗る。

これは自分の問題だ。

それを心配されてしまったのは、素直に自分が表に出し過ぎてしまったのだろう。

これからは気を付けないと。


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