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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・前半
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霧、不視の中で

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


「【霧よ、霧よ】【現世と異界を繋ぐ境界よ】」

「俺もその場しのぎだが!【結界-物絶】、【呪絶】発動!」


私達の左右にそれぞれ半透明の青と緑の盾が出現し、双頭狼のこちらへの侵入を防ぐ。

リックの結界だ。

赤ずきんはそれを見て、浅く息を吐く。


ガツン、ガツンと多くの体当たりの音がする中で、私とグリンゴッツ以外のメンバーは一旦の休憩を取るが、状況は好転しているわけじゃない。


「【我に害成す者を縛り、不可視の境界へ封印せよ】……【白霧結界】発動」


そして詠唱が終了し、周囲は白い霧へと包まれる。

【白霧結界】は敵対者……つまりは敵に対して作用するものであり、視界はアレだがPTを組んでいる赤ずきんたちに対しては、デバフがかかることはない。

流石に赤ずきん達も驚いたようだが、その白い霧が私から出ているのを確認すると安心したようで、霧に対する警戒を解いた。


それと一緒に、リックに結界を解いてもらう。

この状況ならば必要はないだろう。


「ふぅ、とりあえず結界は張りました。一応こっちのことはどこにいるか分からない状態にはなったと思いますけど、警戒は怠らないように。リックさん固有魔術で索敵お願いしますね」

「お、おう」

「すまないねクロエちゃん。私の持ってる固有魔術だと、準備なしにこの量とPT戦は出来ないから助かったよ」


その赤ずきんの言葉に、灰被りも頷きながら続ける。


「私の固有魔術も使えなくはないのですが、誤射してしまう可能性があるので……」

「問題ないですよー、とりあえず一旦休憩しましょう?」

「あぁ、そうだね。……これ魔力消費は?」

「少し厳しいですけど、MPポーションは買い足してあるんで問題はないですよ」


事実、私の残存魔力は、感覚だがあと半分ほどは残っている。

一応MPポーションを取り出して飲んでおくが、いつまでも張り続けておくのは厳しいだろう。


「あ、あの。私の固有魔術であいつらを一斉に撃つっていうのはどうですか……?」

「ん?あぁ、確かクリスちゃんの固有魔術って座標攻撃……だったっけ?」

「そうです。詳しいことは流石にあれですけど……どこにいるか分かれば、撃てるとは思います」


確か残りの狼はざっと見ても20以上。

流石に全部を仕留めることはできないだろうが、あの列車で見た光の矢ならばある程度の数は減らすことができるだろう。


「じゃあ任せよう。一応こっちも結界を解いた後用に魔術の準備をするから、頑張って」

「はい!リック!場所!」

「あっ、あぁ!ちょっとまっーー」

「座標なら私が詳細にわかるんで、それを渡しましょう。リックさんは休んでてください。少し魔力心もとないでしょう」


そう私が言うと、リックはバツの悪そうな顔をする。

先ほどから彼の動きが少し悪いように感じていたのだ。……もっとも、それは全体を見ながら動かないといけない遊撃手だからこそ、見つけられた些細な違和感だったのだが。


「あー……バレちまったか。すまねぇ」

「いえ、後ろから見てたからわかっただけで、確証はなかったですよ。はい、MPポーション」


リックにMPポーションを渡しつつ、特殊ウィンドウを呼び出し、座標データをクリスへと渡す。

正確には【霧海】が感知し続けているデータのため、少しだけ座標がずれている可能性もあるが、それはなんとかなるだろう。


「こっちは準備おっけい。クロエちゃん、そっちは?」

「問題はないです。あとはクリス待ちですね……っと、グリンゴッツ」

『呼んだか、ご主人』

「【魔力装】貸しとくから、こっからは自由に戦って。飛び出すタイミングはクリスが撃った後ね」


先ほどから、もったいないと思って剥ぎ取りを優先させていたグリンゴッツに対し、【魔力装】を貸し出しておく。

ちまちま身を守るために私の魔術を色々と借りていたようだが、実際彼なら【魔力装】があれば十分だろう。


『了解した。頑張ってくれご主人』

「いわれなくても」

「固有魔術準備できました!撃ちます!」

「撃つと同時に結界解除します、準備を」


と、ここでクリスから私たちに声がかかる。

彼女が撃つのに合わせ、こちらが突撃しやすくするために【白霧結界】を解除する。

私とグリンゴッツだけならば、まだ【霧海】内で物がどこにあるかわかっているため問題はないが、他のPTメンバーには視界の制限がかかってしまう。


「【頭上の林檎は(チャーマ)撃ち抜かれる(ミット)】!」

「【白霧結界】解除!」


クリスが魔力の塊を飛ばすのを感知で確認しつつ、こちらも【白霧結界】を解除し飛び出せるように態勢を低くする。

が、赤ずきんに手で制止される。


「なにを……」

「さっすがーに、ここら辺で上位陣としての実力も見せておかないとね?」

「……クロエさん、すいません。咄嗟の事態に対応できなかったために、少しだけイラついているようで」

「あ、あはー……」


赤ずきんから、ハロウががしゃどくろを出した時のような魔力を感じる。

何をするつもりかわからないが、流石にこれに巻き込まれるとまずいだろう。

同じように突っ込もうとしていたグリンゴッツやリックまでも、それを見て止まっている。


「ありがとうね、皆。……【童話語り(ファンタジーテラー)-鏡の国のアリスよりジャバウォック】」


そう言って発動した彼女の固有魔術は……何も、そこに出現しなかった。


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