双頭の狼
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「皆、とりあえず自分が出来ることを!同士討ちとか今更するような実力じゃないって信じてるよ!」
「「「了解!」」」
リーダーである赤ずきんから指示が飛び、私とグリンゴッツ以外がいつでも迎撃出来る様に構える。
私はと言うと。
「【魔力装:日本刀】、【過ぎた薬は猛毒に】発動」
一足先に【五里霧】と【チャック】を使用し、一番後ろに居た1匹の左側の首元に対し、上から奇襲をかけていた。
「グガッ……!」
「流石に首に刃物刺さったら死んで欲しいなぁ。【深影-影槍】3本射出」
動かなくなった左側の頭を切り落としつつ、此方が見えていないにも関わらず、口から何やら火花を散らす右側の頭に対し、双頭狼自身の影から3本【影槍】を射出する。
下から串刺しにする形になったため、双頭狼の口は塞がれ、爆発し完全に動かなくなった。
「グリンゴッツ、魔石回収。他にも使えそうな素材あったら回収しといて」
『了解』
グリンゴッツに指示を出し、戦況を確認する。
赤ずきん達は二手に分かれて戦闘しているようだ。
灰被りとクリス、赤ずきんとリックという普段組まない相手とのツーマンセルだ。
見れば、灰被りの方は攻撃を完全に捌きつつクリスに攻撃させる隙を作る動きを。
赤ずきんの方は、リックを補助するように魔術を後ろから行使していた。
「んー……見てるだけで良さそうかな。【霧海】再展開」
出来る限り広く【霧海】を展開し直した後、全体の戦闘を観察する。
どこに対し補助に入ればいいか、どう動けば彼らの動きを邪魔しないかを考えながら。
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「お疲れ様です」
「おつおつー」
戦闘終了後、魔石を回収し動きについて話し合う。
パーティ戦闘では細かい欠点などを直していかないと、いざとなった時に様々なことに対応出来ないからだ。
「1人で1体倒しちゃいましたけど、問題なかったです?」
「あぁ、なんか姿消えてたから攻撃しに行ったんだろうなぁって思って、奥の1体に関しては除外して考えてたから問題ないよ」
赤ずきんは笑いながらそう言う。
ならば良し、と今回の戦闘で一番頑張ったリックの近くへと行く。
近くには灰被りとクリスが居り、落ち込んでいるリックに対し励ましの言葉を言っているようだ。
「お疲れ様です……リックはまだ落ち込んでいるので?」
「あ、クロエさんお疲れ様です。えぇ、何も出来なかったと」
「お疲れ様ー。そうそう。出来ないものは仕方ないのにね」
ちらと見れば、リックは落ち込んではいるがブツブツと小さく自分の動きについて失敗点を吐き出しているようだった。
……あー、トライアンドエラーするタイプかぁ。
失敗を繰り返し、成功を勝ち取るタイプ。
と言うことはだ。これは落ち込んでいるのではないのではないか?
「あは、多分彼は大丈夫でしょう。警戒は私がするんでお二人は休んでください」
「そうですか?……では失礼して」
と、灰被りは赤ずきんの方へと歩いていった。
クリスはというと、彼女は彼女でリックの近くに座り休憩しているようだった。
元々のコンビだからなのか、彼女的にはその位置がいつも通りのようなのでそのままにしておく。
「ふぅ。……そういえば。グリムの魔術書使ってないな」
私もその辺に座り、インベントリを整理する。
現在は戦闘後の小休憩時間中なので、すぐには先に進まない。
真っ白な魔術書を取り出し、固有魔術を取得することにした。
『【固有魔術-逸話のある物語】を取得しました』
「ふむ……」
「おやクロエちゃん、新しい固有魔術でも取ったのかい?」
「赤ずきんさん」
後ろから声を掛けられ、振り向くとそこにはニヤニヤした赤ずきんが立っていた。
近付いてきているのは分かっていたが、特に何をするわけでもなかったため放っておいたのだ。
「取りましたよ。ちょっと面白そうなやつでした」
「へぇ、それは見るのが楽しみだ……と、そろそろ出発したいんだけど大丈夫?」
「大丈夫です。じゃ行きましょうか」
立ち上がり、皆の近くへ行く。
各自自分の改善点などを洗い出したようで、特にリックは先程よりも良い顔をしている。
そして私達は村の奥へ奥へ進んでいく。
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「これで何体目?!」
「10から先は数えてないです!」
「各自防衛!力使い過ぎないように!倒れるよ!!」
それから約10分後。
私達を大量の双頭狼が襲った。
罠に掛かったわけでもなく(そも罠に関しては【魔力視】で見える為有り得ない)、左右から双頭狼の群れが此方へと突っ込んできたのだ。
……さっき倒した3体は偵察役だったかな。
恐らく偵察役が戻ってこないとの事で、異変が起きたと群れで出てきたのだろう。
こちらとしては良い迷惑だ。
「赤ずきんさん!ここら一帯に結界張ります!」
「っ!了解クロエちゃん!皆集まって!」
そしてわたしがそんな状況で取れるのは1つくらいだ。
私は詠唱を開始した。