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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・前半
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悩み、見透かされ

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


ドミネ首都レギン - PM


コロッセウム近くに隠れていたグリンゴッツを回収し、そのまま宿へ【チャック】を繋げ部屋へと戻る。


結局の所、固まっていた理由は単純なのだ。

私自身、まだ始めてそこまで経っていない初心者ではあるが、恐らく普通のプレイヤーとは全く違うプレイをしていることだろう。

だが、だからこそ。


今回のこの全面戦争……有り体にいえば国に雇われたプレイヤー達との殺し合いに出た方がいいのか。

はっきりと答えを出すことが出来ないでいた。


今回、プレイヤー達の立場はあまり重たいものではない。

結局傭兵でしかないのだ。

だから言ってしまえば、死んだとしても戦犯として後々……などということはない。


参加しようと思えば誰でも出来る。

だからこそ、逆にその一歩が踏み出せない。


「……ふぅ」


一息。部屋のベッドに寝っ転がりながら考える。

戦争というものに忌避しているわけではない。

それがどういう行為であって、どういう結果を産むかも頭では理解している。


ここが私達の実際住む世界ではなく、仮想世界……ヴァーチャルリアリティだということもわかっている。

ちら、とグリンゴッツを見る。

窓の外を見つめる彼は、当然現実には居ない。


「あー、どうするべきかなぁグリンゴッツー」

『いつも通り、ご主人の好きなようにやる……ではいけないのか?』

「いや、悪くないんだけどそれが決まらないんだよ」


そう言うと、彼は少し考えたようなそぶりを見せこう返してくる。


『正直、私にはご主人が何をどうしてそこまで悩んでいるかは理解できない。だが、そうだな。ここは先輩に聞くのも手なのでは?』

「先輩に……確かにそうかもね。よし、連絡取ってみる。ありがとグリンゴッツ」


礼を言い、連絡が取れそうなフレンドを探す。

彼らはどんな答えを、考え方を教えてくれるのだろうか。



-----------------------



『やぁ!やぁやぁクロエちゃん!どうしたんだい?!』

「いつでもテンション高いですね、赤ずきんさん……」


1人目は赤ずきん。

恐らく私の知るプレイヤーの中で一番か二番目くらいにはプレイヤー歴が長い人物だろう。


私は今回のことを相談する。

自分がまだ参加するか決めかねていることや、それに関連する事などを。


『クロエちゃんさぁ……実は君、頭悪いだろ?』

「へ?」

『いやさ、これゲームだぜ?ゲーム。一部の上位陣にとっちゃ違うのかもしれないけど、こっちにゃまだ趣味、遊戯の類なわけ』


おっと、赤ずきんの声のトーンがいつも以上に真剣になっている。


『それなのになんだい、君は!はっはー!誰かに言われてないかい?それとも私がもう言ったかな?考えすぎなんだよクロエちゃんはさー!』

「は、はぁ……」

『別にデスゲーム内で死人の出るものをやるわけじゃないんだ。ここはお遊びとしての戦争に参加しとこうぜ、クロエちゃん?』


と、終始そのようなことを言われ、一方的に切られてしまった。

しかし、まぁなんというか。

1人目だけで終わってもいい気がするくらいには、わかりやすくわたしの状況を言い当ててくれたな、あの人。


少しだけ笑みがこぼれ、次へと通話をかける。


『はい、どうしましたか?クロエさん』

「久々です、テセウスさん。……実は、こんなことがありまして」


と、私はテセウスに事情を説明しつつ、今後どうするべきかの相談をした。

だが、返ってきたきた言葉はある意味で予想通りのものだった。


『失礼だが……君、頭が悪いと言われたことはありませんか?』

「……あはー、テセウスさんもそう思いますか」

『はい、というかですね。貴女、聞いている限りだと答えはもう出てるのでは?』

「まぁ、えっと、そうですね。私の中では出ています。ただ、それを実行に移すか移さないかでちょっと迷ってて」


そういうと、テセウスは少し息を吐き話し始めた。


『いいですか?……どこかの誰かも言ったように、この世界はゲームなんです。決して貴女や多くの人の命が掛かっている現実の話ではないんです。言わば架空の物語……そこに私たちはライターとして好き勝手にシナリオを描いていいんですよ。なんせ、私たちは登場人物(キャラクター)でありながら書き手(ライター)でもあるんですから』

「……」

『本気になるな、とは言いません。ただ……そうですね。貴女には、考えすぎるなと言いましょう。考えすぎなんですよ。もっと肩の力を抜きましょう』


優しく、テセウスは私に語りかけてくれる。

正直、ここまで言われるとは思っていなかったが、大体赤ずきんと同じことを言われた。

礼を言って通話を切る。

……これ以上かけても、みんな言ってくれることは同じかな。


深く息を吐き、自らの頬をパチンと叩く。


『ご主人?』

「あは。うん、らしくないね。これは私らしくない。……ごめんねグリンゴッツ、決まったよ方針」

『それは……何よりだ。おめでとう』

「ありがとう」


私は何度目かわからない礼を言いつつ、運営からのメッセージを再び開く。


「戦争イベント、対人戦沢山出来るんだし参加しないとね!」


答えがわかっていても、人に聞いてしまう時って、ありますよね

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