整理。そして行動へ
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障壁。
これまでも何度か敵が使ってきたものを見てきた。
例えば、それは私の持つナイフを遮ったりだとか、攻撃魔術を防いだりだとか。
そういった防御に関して使われてきているのを私は見ている。
ではそれらと結界の違いは一体何なのか。
実を言えば、これには違いはほぼない。
霧と雲が高度だけで区別されているようなもので、用途によって区別されているだけで、本質は同じものだ。
結界は、基本的には自分に対してのものじゃなく相手に対してのもの。
つまりは対人。
障壁は、基本的には自分に対してのもの。
つまりは自己。
この違いが、もっとも分かりやすい違いだろう。
これを踏まえて考えてみると、成程確かに。
相手に影響を与えている【白霧結界】はその名の通り結界に分類されるものだし、それ以外にもこれまで見てきたものも基本的には結界に分類されていいものが多い。
しかし同じような状況、そして同じような禁書を持っていた夫人だけは違う。
あれは自己に対して効果を発揮するタイプのものだ。
では、あの時はどうやって障壁を突破したか。
【怠惰】を使ってゴリ押ししただけ。戦術も何もあったもんじゃない。
それに今回と夫人の時との大きな違いが一つある。
それは、今回の敵である【箱造り】は攻撃魔術やこちらの物理攻撃に合わせて障壁を張ってくる。
とりあえず障壁張っとくか!ぐあーやられたー!な夫人とは大違いだ。
こちら側の攻撃に合わせて障壁を張ってくるのならば、それを上回る数の攻撃をすればいい。
普通に考えるのならば、それが正攻法だろう。
しかし、一度それは防がれている。
ではどうするか。
……いや、特に思いつかないから不味いのだけどね?
ちら、と先ほどから【魔力装】によって私を守ってくれているグリンゴッツを見る。
彼とともに攻撃できたらあるいは、とは思うが。
だがそれも手持ちの魔術の数が足りない。圧倒的にだ。
「あぁもう!私毎回毎回魔術で悩んでるなぁ!」
『ご主人!?突然どうした!』
頭をぐしぐしとかきながら、一度考え直す。
……【チャック】による背中からの攻撃も防がれた。見てからの行動じゃ絶対に背中からの攻撃には反応が遅れるというのに。
しかし結果として、【箱造り】はこちらの攻撃を防いでいる。
いや、一つだけ確かめてみよう。
「……【チャック】二重発動」
先ほどと同じように、されどグリンゴッツの陰に隠れるようにして【チャック】を私の前と【箱造り】の背面に置いて連結させておく。
そこに三本【影槍】を射出してみる……がまたも防がれる。
それに一瞬遅れて【箱造り】がこう言ってくる。
「むっ、同じ手は通用せんよ」
「……あは、でもわかることはわかったよ」
グリンゴッツにはそのまま【魔力装】による盾を張るのを継続してもらい、ここからどうするかを考える。
今得た情報が確かならば、継続して攻撃することが重要となるだろう。
しかし、もう少しだけ情報がほしい。
今度は【チャック】を私の目の前と、少し危ないかもしれないが【箱造り】の真上に設置し連結させる。
そしてそこに【過ぎた薬は猛毒に】を出来るだけ多く流し込んでみる。
「ごばぁ!?これは、毒か!」
「……ほうほう」
『ご主人、遊び始めてないか……?』
グリンゴッツが何やら言っているがこれは遊びではない。絶対に。
きちんと情報は得ているのだ。問題はないだろう。
……【過ぎた薬は猛毒に】は、攻撃魔術ではない補助系の魔術。それが防がれていない。そういえば【霧海】もそうか。
これで大体予想はできた。
「……攻撃に自動反応して発動する障壁、ってところかな」
それならばできることも多いというものだ。
私は純正の攻撃魔術は【影槍】以外にはもっていない。
つまり、それ以外で何とかすればいいというわけだ。
「あは、グリンゴッツそのままお願いね。ちょっといろいろとやりたいことができちゃった」
『いや、先ほどからやりたい放題では……?』
さて、ではではまずは【範囲変異】を【箱造り】の直下の地面、半径5メートルほどを指定しそのまま下へ10m穴を掘る。いつも通りの落とし穴だ。
「ぬっ!?」
「落ちろ落ちろ、さぁ落ちろ」
ぽっかりと空いた穴に【箱造り】は落ちそうになるが、寸でのところで飛行する魔術かなにかを使ったらしく、そのまま浮いている。
ではここでだ。
【影槍】を布状に……そう、狂猪とゴブリンライダーとの戦闘で使った拘束用にイメージした【影槍】だ。
当然そこに、攻撃の意思は込められていない。
「これは……っ、考えたな若造」
「あはっ、何言ってんの老害。まだまだ終わりじゃないよ」
そしてそのままに【箱造り】に対して【怠惰】をかけ続けていく。
耐性がいくらかあるようだが、そんなものは関係ない。
【怠惰】と【怠惰】の間隔が開いているためにかかっても治癒されてしまう?
ならば【禁書行使】でも【怠惰】を使ってその隙を埋めてやればいい。
「そのまま【怠惰】に溺れて沈んでいってね」
群青色の魔力が、白い空間を染めていく。