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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・前半
117/242

まず一手

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


「【影槍】!」


私は迷わずグリンゴッツの示した方向へ【影槍】を複数本射出する。

それと同時に、グリンゴッツがそちらへと接近しようとする、が。


視界に映る玉座が、ぐにゃりと歪んでいく。

まるで空間ごと作り直しているかのようなその光景は、すぐに収まるがそこは既に玉座ではなかった。


明かりはあるものの薄暗く、鉄の格子のようなものが等間隔で設置されている。

石造りの地下牢、といったところだろうか。


その中でも一際大きい牢の中にそれは居た。

ゴブリンのようでありながら、しかしゴブリンとは全く違うものだと見るだけでわかる。

杖を持ち、床をガリガリと削りながらローブを着たそれはこちらへと話しかけてくる。


「力技で幻術を破るたぁ、アンタ本当に魔術師かい?」


【影槍】を放つ、が障壁のようなものに遮られそれには届かない。

私の反応をみたそれは、可笑しそうに笑う。


「カッカッカッ、物騒な。……良いか若造、年寄の話はキチンと聞くもんだ」

「……ハッ、モンスターの老害の話なんざ聞く耳持たないよ」


グリンゴッツも右手に【魔力装】の刃を作り出し、そのまま突っ込んで行く。

だが、やはり目に見えぬ何かでそれは阻まれてしまう。

【魔力視】してみても、そこに何か魔力が通っているわけでもない。


「これだから最近の若者は嫌いなんだ。どれ、そろそろ名乗ろうか」


そう言いつつもニヤリと笑うそれは、1つ大きい咳払いをすると、こう言った。


「儂に与えられた名は【箱造り】!この妖光の館の新たなる主!侵入者の若造よ、我を倒してみるが良い!」

「言われなくとも」


【チャック】を私の目の前と【箱造り】の背面に発動し連結させる。

そしてそのまま【影槍】を【チャック】に向かって撃ち出した。


しかしそれも何かによって防がれる。

……一体何を?いや、それならば。

【霧海】を展開する。ここは第2階層のボス部屋よりも狭いため、【霧海】の効果は万全の状態で発揮できるはずだ。


【魔力視】に見えないものがそこに『あるかもしれない』。

ならば、それが分かる【霧海】ならばどうだ?

感知によって、ステルス状態の敵でも見抜く魔力の霧が地下牢全体へ広がっていく。


しかし、障壁のようなものは感知できない。

……これでもダメ。まるでその瞬間だけ出現してるみたい。


「そろそろ此方からも行かせてもらおう。ほれ、まず二十」

「なっ……」


そう言いながら【箱造り】は氷塊をおよそ20個ほど出現させる。

それは氷柱のように先が尖っており、その先全てがこちらへと向いていた。


「グリンゴッツ!」

『言われなくとも!』


呼ぶより早く私の前へ移動していたグリンゴッツは、正面に【魔力装】による盾を作り飛んできたそれらを防御する。

一撃一撃がこちらを殺せる必殺の威力を秘めている。

それを【魔力装】で防ぎながら、こちらの攻撃を防いでいる仕組みを考える。


一瞬だけ。本当に防ぐときだけ出現しているような何か。

【魔力視】にも【霧海】にも引っかからないため、事前に何かを設置しているという線はない。

じゃあなにか。


「……もしかしてだけど、一瞬だけ障壁張ってるだけ?」

「かかっ、簡単なこって。否定はせんよ」


一瞬だけ、本当に一瞬だけこちらの攻撃を防ぐためだけに適切な位置に障壁を張る。

人間ができるかはおいておいて。

システムに操作されているモンスターだからこそできる芸当といったところじゃないだろうか。


……肯定されるとは思わなかったけど。まぁそれならそれで対策を考えるまで。

結局、障壁を張るのも魔術を使っているのだ。

ならば、その障壁ごと貫けるようにどうにかすれば。


「【霧よ、霧よ】」

「またそれか。一度見たものを許すとでも思うたか。ほれ、さらに追加」

『くっ……ご主人、【変異】も借りるぞ!!』


何も言わずにこちらは詠唱を続ける。

グリンゴッツはそれを肯定とし、【変異】にて石畳を壁へと変え私たちの前へ張る。

激しい音が鳴りつつもかろうじて防げているような、そんな状態に私は詠唱するスピードを少しだけあげていく。


「【現世と異界を繋ぐ境界よ】【我に害成す者を縛り、不可視の境界へ封印せよ】」

「むむ、まだ耐えるか。ならばこういうのはどうかな?【禁書行使】」

『ぐっ!?ご主人よ、すまない魔力を貰うぞ!!!』


ごっそりと魔力が持ってかれた気配があり、さらに巨大な【魔力装】による盾と、何枚かの石の壁が出現する。

みれば、赤黒い炎が氷塊を包み込んだものがかなりの数こちらへ向かって飛んできている。


あれは……恐らく【憤怒】関係の何かなのだろう。

ボスが【憤怒】に関する禁書を持っていることは考えていたことだ。

第2階層の斧の方のボスが纏っていたものから連想はできる。

……流石に【憤怒】系の魔術は厄介だけど、まずは。


「【白霧結界】展開。さぁ力を失え」


魔力の霧で満たされた空間が、徐々に白く白く染まっていく。

そして染まっていくと同時に、相手の放つ氷塊の勢いが落ちていく。

【白霧結界】の効果の一つだ。


これで邪魔されずに相手の障壁対策を練ることも可能となった。


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