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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・前半
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戦闘再開

もし良かったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


私が【影槍】を射出した瞬間、グリンゴッツはそのマスコットの手に【魔力装】による刃を作成し突っ込んでいく。

それを確認した私は、ゴブリンキングに対し新たに攻撃するための魔術を準備し始める。

当たったかなんて今は確認していられない。


当たったか一々確認しているよりも、【怒煙】を付与した魔術を大量に放った方がどれかが当たるだろう。

数撃ちゃ当たる、というものだ。


「【深影-影槍-分裂】、今回は特別にッ!」


いつも通りのイメージ、ではなく今回は普通の力押し。

通常消費される魔力に加え、射出前の【影槍】に対してプラス3本分の魔力を注ぎ込んでみたのだ。


結果として、槍と言うよりは杭。

言うなれば、【影杭】が完成した。

太さは大体【影槍】4本を束ねたほどのもので、丸太よりかは細いといった程度だろう。


「よし、射出!」


【怒煙】を付与するのを忘れずに射出する。

【分裂槍】の性質も与えたため、下手しなくともグリンゴッツを巻き込んでしまうだろうが、それはもう初めから諦めている。


【影杭】は射出されると同時に30本以上へと分裂し、ゴブリンキングとグリンゴッツを襲う。

それに加え、【白霧結界】が展開中だが【五里霧】を発動させる。


前々から思ってはいた。

【霧海】という固有魔術は、元々感知能力と認識阻害能力がある周囲に影響が出るタイプの固有魔術だ。

しかし、その干渉能力はあまり高くない。


レンという女の子には普通に正体を看破されていたし、最近敵対する者らも【霧海】の認識阻害に関して何も気にした風もなく突破してくる。

そのため【白霧結界】に関しても、幾ら結界とは言えど相手によってはこちらの位置などが分かってしまうのではないか?と考えたのだ。


だから、それをどうにか出来ないかという意味での【霧海】の派生魔術の重ね掛け。

消費魔力は加速度的に増えていくが、それはもう仕方ないだろう。

インベントリからMPポーションを取り出し、1本飲み干すと、私は更に魔術を行使する。


目の前の戦場では、着弾した【影杭】によって土煙が立ち上り中の様子がイマイチ掴みにくい。

まぁ良いだろう。おおよその位置が分かっていればそれで問題ないのだから。


そして私は、異次元を通じ戦場に足を踏み入れた。



-----------------------



グリンゴッツは思考する。

神か何かか分からないが、ただの傀儡の時には出来なかった思考をする。

ご主人と共に、この身体で初めて戦っている敵に関して思考する。


……中々に、アレはマズイ代物なのだろう。

右手に【魔力装】による刃を作り出しながら、自分が相対しているモノをみる。

両腕から赤黒い魔力を垂れ流し、それでいて血の涙を流すゴブリンキングを。


止めなければならない。そうしないと自分の主人が死んでしまうかもしれないから。

しかし、なんなのだろうか。このもやっとした思考は。


……私は、やはり彼に対し攻撃するのを躊躇っているのだろう。

恐らくそうだ、と決めつけ彼はゴブリンキングへと攻撃を仕掛けようとする、が。

あと少しで刃が届くというところで、振り下ろす腕が止まってしまう。


グリンゴッツは、元はゴブリンから作られた所謂動く剥製のようなものだった。

それが大量のゴブリン種の魔石を食い、今の身体と思考能力を得た。


その身体を作るのはゴブリン達の血肉。

その思考をするのはゴブリン達の集合体。

そして目の前にいる敵は、そんなゴブリン達の中の王。


『……ハッ。ゴブリンだからキングには攻撃出来ないと。そういうことか私の身体(ゴブリンたち)……!』

「……気付いたか、我が同胞の集合体よ」


声のした方を見る。

血涙を流しながらも、こちらへと言葉を投げかけてくる王の姿があった。

いや、グリンゴッツにとっては元王だ。


「そんな身体になってまで、戦う必要はないのだ」

『何を……』

「こちらへ、戻ってこい我が同胞の集合体よ」


ゴブリンキングが此方へと優しく声を投げかけてくる。

その言葉に従った方が良いのではないかとすら思えてくる。


だが、しかし。


『そんなものは、幻想だ』


……既に自分はゴブリンとしてではなく、ご主人の傀儡として動き戦っているのだ。

こんな場面で寝返るはずもない。

確かに彼の言葉には従ってしまいそうになるほどの力がある。魅力があると思ってしまう。


だが、それはこの身体や思考を作り上げている元がそう思っているだけであって、グリンゴッツ自身の気持ちではない。


AIに気持ち、というものがあるかどうかグリンゴッツにも分からない。

喜び、怒り、悲しみ、楽しむ。

それらがあるのかすらわからない。


だが、あるとするならば。


『私は、貴方よりも今のご主人を選ぶよ。元王よ』


そう言いながら、グリンゴッツは右手の刃で動かない元自分の王の胸を貫いた。


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