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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・前半
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深い霧の中で考えること

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


『ご主人!こちらの盾が破壊された!』

「見ればわかる!張り直して!!」


赤黒い光が一瞬玉座内を満たした後、ズドンという音と共にグリンゴッツが張っていた【魔力装】の盾がガラスの割れるような音を立てながら破壊された。

再びすぐに盾は張り直されるが、その瞬間相手の姿を確認することができたが……あれは一体なんなのだろうか。


ゴブリンキングの姿はそう変わってはいない。

しかし、両腕に赤黒い魔力を纏い血涙を流していた。

彼が完成させた魔術……【王として(アヴェンジャー)】だったか。

その影響であるのは確実だろうが、効果がイマイチ掴めない。


……ステータス強化であるのは確実。でも他がどういうモノなのかさっぱりわかんないな。

一瞬しか確認出来ていないのもあるが、【魔力視】も満足にできていない状況でそれを言うのはあんまりか。

まずはこちらも魔術を完成させてしまおう。


「【白霧結界】展開」


考えている間にも何回か響いていた盾の破壊音が止む。

目の前が白く染まり、白い霧による敵対する者に不利なステータスを与える結界が玉座内に展開された。


これで一時的にでもこちらを見失ってくれるだろう。

第2階層の斧のボスのように、こちらの霧を侵食してくる事さえなければ問題はないはずだ。


『ご主人!』

「グリンゴッツ、あれの正体何か分かる?」

『いや、流石に。しかし……』


グリンゴッツが言い淀む。

言わんとしている事は分かる。仮にも幾らキングとは言え、固有魔術である【魔力装】にて作った盾を何度も割ったのだ。

見た目ならばゴブリンキングよりも巨大なオーガの拳ですら防いでいたモノを、だ。


ステータス強化前だったら、彼は【魔力装】の盾は割れていなかっただろう。

だからこそ、その数段階段をすっ飛ばしたような強化に違和感がある。

何か裏がある、これは間違いはないだろう。


「……あそこまでだと、多分私の禁書での強化と同じようにデメリットは当然あるだろうね。結構キッツイやつ」

『ということは?』

「こっちに取れる方法は2つ。なんとか殺すか、相手が力尽きるのを待つか。どっちかだ」


恐らくだが、あの状態は長くは続かないだろう。

長期戦になったとしてもあのステータス強化が切れた後に叩いた方が、幾分か楽に決まっている。


しかし、そのステータス強化が切れるまで【白霧結界】を維持するのは消費魔力的に厳しいものがある。

誰かがあの状態のゴブリンキングを抑え込んでおく必要があるのだ。

誰が?……そんなの決まっているだろう。


『……私はご主人の傀儡だ。何、どんな指示をされてもそれに従うまで』

「あは、ありがとね。じゃあ頼むよ。……ただ、少しは今の内に傷は付けておこうか」


【影槍】を自分の影から5本出現させる。

そしてそれに対し、【怒煙】を付与してから射出する。

何故5本か?頭、両腕両足を拘束するためだ。

一応、避けられた時の為【分裂槍】の様に任意で分裂するようにしておく。


「グリンゴッツ、私が撃ったら突っ込んでね。一応【怒煙】かけておくけど、もし心もとなかったら自分でも重ね掛けして。あと【魔力装】は全力で使っていいから。私との|経路≪パス≫を使って私から魔力持っていっても問題ないよ」

『……いいのかご主人?私が【魔力装】使っていては、貴女が狙われた時どうする?』

「あは、元々持っていなかった固有魔術なんだから。気にしない気にしない」


これも私がよく考えている手札の話だ。

現在、私の手札……所持魔術を扱えるのはグリンゴッツを含め2人?1人と1体?なのだ。

ここで問題が発生する。


片方が使っている魔術を、もう片方は使えるのかどうか。

答えとしては使えない。

カードをイメージすればわかりやすいだろうか。


5枚あるカードを、2人で共有しているとする。

片方がその中から1枚使ってしまえば、もう片方は残りの4枚しか使えない。

それと同じことが魔術でも起きる、というわけだ。

……まぁ普通こんな事起きないと思うんだけどね


この事例を知っているのは、身近でも赤ずきんくらいなのではないだろうか。

彼女もジーニーという意思ある者を使役することができるのだから、一度はそういう事態に陥ったことくらいはあるだろう。

それについて先ほど通話したときに話さなかったのは、恐らくガビーロールが居たからというわけでもないだろう。


この世界は隣人が殺人者である可能性が高い、ワールドのほぼ全てがPVPフィールドであるVRMMOなのだ。

いくら気を許していたとしても、いつ敵になるかも分からない相手に対して攻略の鍵となるかもしれない情報を伝えてしまうほど彼女らは初心者ではない。


『……ご主人?』

「あぁ、ごめんね。少し考え事してた。……じゃあ行くよ。準備はいいかいグリンゴッツ」

『既に。貴女に合わせよう』


その言葉に軽く頷く。

彼がそういうのであれば、私のタイミングで撃ち出して戦闘を再開しよう。

深呼吸を軽く2回ほどしておく。リラックス、というよりは改めて集中しなおすためだ。


「戦闘、開始だ」


私は【怒煙】が付与された【影槍】を、先ほどからどこか見つめて動かないゴブリンキングへと撃ち出した。


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