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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・前半
113/242

もし、貴方が

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


部屋に入ると、そこは大きな……言うなれば玉座のような場所だった。

石造りではあるが、荘厳な雰囲気を感じる……ような気がする。

左右には盾と槍を持ち、鎧を着たゴブリンたちがざっと10匹。

そして玉座に座るのは、もちろんゴブリンだった。


しかし、見たことのないゴブリンだ。

頭には王冠、体の色はほかのゴブリンとは違い緑色ではなく黒。

そしてほかのゴブリンよりも体が大きいのがわかる。


「……ほう、人間の侵入者か。珍しい。……我が同胞を殺して回っているのは貴様か」

「うわ、見てよグリンゴッツ。あのゴブリン喋ってるよすっごい」

『ご主人よ、ここは黙っておくのが流れではないか?』


おや、注意されてしまった。

しかし、あのゴブリンは一体何なのだろうか。

……普通に考えるならゴブリンキングか何か、だろうなぁ。そういうモンスターがいるのならだけど。


「身に余る蛮勇は身を滅ぼす。同胞の敵、王として果たしてくれる」

「でも、あの人?ゴブリン?そのまま話してるし多分演出じゃない?」

『……そういうものか』


ゴブリンキング(仮定)は玉座から立ち上がりつつ、どこからか剣を取り出しこちらへと構える。


「さぁ、死合うぞ。侵入者」

「グリンゴッツ、前衛は任せた。ある程度防いでくれたらいいや。無理はしないように」

『了解したご主人。……周りの雑兵はどうする?』

「大丈夫、私が殺すよ」


そう言うと、私は【影槍】を【爆裂槍】、【分裂槍】の要領で3本、周りにいる鎧を着ているゴブリンへと撃ち出した。

ゴブリンたちは避けようとしたり、防ごうと盾を構えたりとしていたが、そんなものは関係ない。

避けようとしたゴブリンには回避先に【影槍】が分裂するように。盾を構えたゴブリンには、そのまま爆破し巻き込んでいく。

半分は重症、もう半分は軽傷といったところだろう。


さらに【影槍】を追加で射出。それぞれに引導を渡していく。

2、3ほどそれすら避けてこちらへと近づいてくるゴブリンもいたが、さほど問題ではない。

近づいてきた者から順々に【範囲変異】で床から槍を突き出させ、串刺しにしていく。


「こっちはこんなもんかな。うん、慣れたもんだね」


グリンゴッツの方はといえば、私に背中を任せゴブリンキングの方へと駆け出していた。

特に武器を持ってはいないが、私の魔術がある程度使えるというならばそれは問題にならないだろう。

いざとなったら床から【武器創造(ウェポンクリエイト)】でもすればいいのだから。


このまま援護でもしながら、ゴブリンキングの行動把握に費やしたほうがいいだろう。

グリンゴッツが危なくなったら、傀儡魔術を使って指示を出し下がらせれば何とかはなるだろう。


「グリンゴッツ、こっちは終わった!援護に入るよ!」

『了解した!』


ゴブリンキングの振るう剣を避けつつ、彼は返事をする。

……しかしAIってすごいな。ホント人と話してるみたいだ。

グリンゴッツに対し【怒煙】を使い、その身体に黒い靄を纏わせる。

これで彼の攻撃に当たり、ダメージを受けたものはその身体の動きが制限されることとなった。


「……我の前で、我が同胞を更に殺したか」

「ん?」


ここで、ゴブリンキングが何やら喋っているのが聞こえてきた。

いや、聞こえてきたというよりかはボス戦中の演出のようなもので、どこにいても聞こえるようにされているのだろう。

ゴブリンキングはそのままグリンゴッツへ剣を振りながらも、言葉を続ける。


「【あぁ、あぁ我が同胞よ】【汝らを護れなかった我を赦してくれ】」

「詠唱……?まずいかも。【チャック】二重発動、連結(リンク)

『む?……おぉ?!』


私は【チャック】を使い、ゴブリンキングの近くで剣を避けつつも一発打撃を加えようと機を伺っていたグリンゴッツの足元と、私のすぐ隣の空中に出現させ連結させる。

緊急退避のようなものだ。


「【もし天に還った汝らが我を赦さぬと言うのなら】」

「グリンゴッツ、【魔力装】使える?」

『ご主人ほどではないが、使えなくもないな』

「なら盾作って、大き目のやつ。それあっちに向かって構えといてね」


ゴブリンキングは近くにグリンゴッツが居なくなったというのに、ただ一匹で舞うように剣を振るい詠唱を続ける。

【魔力視】をする限り、かなり膨大な魔力が練り上げられているようだ。

……本当にゴブリン系のモンスターなのあれ?流石にさっきみた魔術師ゴブリンより魔力が濃いってどういうこと?


と、そこでグリンゴッツによる【魔力装】による盾が目の前に出現した。

私も、【霧海】を玉座全体に広がるように操作し遅れてしまったが詠唱を開始した。


「【霧よ、霧よ】【現世と異界を繋ぐ境界よ】」

「【我は眼前の(かたき)を討つ事で贖罪としよう】」


二つの詠唱が玉座に響く。

言葉を紡ぐ度、片方からは白く何者も包み込む深い霧が、もう片方からはドロリとした赤黒い魔力が、その身体から溢れ空間を満たしていく。

……やっぱり詠唱開始遅れたから、流石にあっちのが早いか。


「【我に害成す者を縛り、不可視の境界へ封印せよ】」

「……【王として(アヴェンジャー)】」


瞬間、赤黒い光が玉座内を駆け抜けていった。


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