ゴブリン?それとも?
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本日2話目です。
目の前で火の玉が爆発し、数瞬。
衝撃も何もなく、どういうことかと思い目を開ける。
すると、だ。
目の前に知らない何かがいた。
見た目は何やら継ぎ接ぎだらけの、遊園地のマスコットのようだ。おそらく鬼がモチーフとなっているのだろう。
しかし、鬼だというのに基本の色は緑。それ以外の補強のために使われているであろう布は灰色だったり茶色だったりと、よくわからない。
大きさはあまり大きくはない。
大体90センチくらいの大きさだろうか。
……え、なに。これ?えっ??
頭の中に疑問符が何個も浮かび上がるが、ただ一つだけわかることがある。
私がその何かに救われた、助けられたのだと。
「あ、あの……」
『話は後だ、ご主人。まずはアレを何とかしたほうがいい。そうだろう?』
「え、えぇそうです、ね……?」
……今、この何かは私の事をご主人と呼んだか?こんな従者私は知らないよ?
とりあえず、そのマスコットが言うように目の前の階層ボスをどうにかするべきだろう。
『とりあえず、私はこのまま突っ込む。何分それしか戦い方は知らないものでな。合わせてくれると嬉しい』
「……了解」
私がそう返事をするとマスコットは一つ頷き、そのまま先ほどまで戦っていた斧のボスと同じような速度でボスの方へ突っ込んでいく。
それに合わせるように、マスコットに当てないよう足元から【影槍】を3本射出する。
階層ボスの方も何か驚いていたようで、マスコットによるタックルも私の【影槍】も全て命中する。
されど、流石はボスというべきか。
見た目は魔術師っぽいゴブリンなのに私たちの攻撃を息絶え絶えになりつつも、耐えきった。
『止めだ、【影槍】』
しかし、それもマスコットが発動した【影槍】によって頭を複数の影の槍で貫かれ息絶える。
よくわからないうちに、戦闘が終了した。
そして、マスコットはこちらへと振り返る。
今まで見ていたのは背中部分だけのためよくわからなかったが、腹部に大きなチャックがついているそのマスコットは、おそらくただの鬼ではなく子鬼……ゴブリンがモチーフなのだろう。
『申し訳、ありませんでしたっ!!』
「……は?」
そしてマスコットはそのまま土下座した。
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「……つまり、君は私の作ったあのゴブリン人形で、色々あってAIとして自我を得た、と?」
『そのえーあい?というのはよくわからないが……それであっている、はずだ』
事情を聞くと、こういうことらしい。
道中、ゴブリンたちを指示通り狩っていたのはいいが手持ちの魔石が持てる量ではなくなった。
それをある程度何とか運んでいたのだが、いろいろあり限界を感じて私がしていたことを思い出し要らないであろう魔石を食べた。
そして気づいたら身体がこうなっていて、喋ることも可能になっていた。
私との魔術的な繋がりを使い、詳細な位置を確認し報告しようと急いできたら何やらピンチっぽかったから割って入ったと。
……無茶苦茶すぎる。
「あー……一旦待機してて。ちょっと話さないといけない人がいるから」
『了解した、ご主人』
旧・ゴブリン人形にそう指示すると、私はある二人にグループ通話をかけた。
「もしもし」
『おやおやおや、非通知設定だから誰かと思えば!クロエちゃんじゃないか!やぁやぁ久しぶり!元気だったかい?最後にあったのは君がドミネへ行く前だったよねぇ』
『おっ、なんだクロエさんじゃあないか!!どうしたんだい!?また傀儡魔術でわからないことでもあったのかな?!それともまた別の問題でも発生したのかい!?』
バカ一号とバカ二号の二人だ。
おそらく、彼女らはこの現状について何か知っていることがある。
というか、周りの知り合いで知ってそうなのがこの二人と灰被りやハロウくらいなのだ。
この二人以外は忙しそうだから通話をかけないが。
「事情を話すと長くなるんですけど、まぁいろいろありまして。……とりあえず映像ログ投げるんで見てください」
『映像ログ、かい?うん、いいけれど……おっ来た来たこれだね?』
『いやぁ!また頼りにしてくれてうれしいよ!人に頼られるというのは気持ちいいものだね!彼女の気持ちが分かったかもしれないな!!……っとこっちも動画来たね!観るとしよう!!』
そしてある程度……マスコットが現れたあたりからの現在に至るまでの映像を見終わったのだろう。
彼女らは彼女らで考え、結論を出してくれた。
『じゃ、先に私から。……確かにそのマスコット?ぬいぐるみ?に宿っているのは私のジーニーと同じようなAIだろうね。ただ、私の方とは成り立ちから違うから、詳しいことは言えないけれど……』
「言えないけれど?」
『このWOAって世界には、魂魄魔術ってのもあるんだよクロエちゃん。つまり、魂の存在が肯定されてる世界なの。それならば、魔石の強化によって元々の魂……ここでいうならゴブリンの魂かな?それに関連つけられて運営側がAIを付与した可能性は、ないとは言えないんだよね』
「一応聞いておきたいんですけど、こういうのって前例は?赤ずきんさんのジーニー以外で」
『はは、聞いたことがあったら良かったんだけどね。このゲームのプレイヤー、全体で必要なこと以外は結構皆隠すからさ。そういう情報は出回ってないかな』
ということらしい。
赤ずきんがいうには、ジーニーがAIによって喋っている、思考していると知っているのも知り合いのごく一部だけらしい。
続いてガビーロールの話だ。
『じゃ、次は私だね!まず、傀儡というのは他の人造生命や土人形と違い、一番モンスターに近い存在とされているんだ!』
「一番、近い……ですか?」
『あぁ!モンスター由来の素材を使い、身体を形どり、動力源にもモンスター由来の魔石を使う。他の使役物達よりもよっぽどモンスターに近い形をとっているのさ!』
「ほう……」
いわれてみれば、そうかもしれない。
ホムンクルスは、薬品から。ゴーレムは、基本的には土や岩から。
それに比べて傀儡は、モンスターから作り出される。
近いといえば、一番近いものなのだろう。
『で、だ!モンスターというのは、同種族の魔石を食らって上位種や亜種なんかに進化していくらしい!つまりだ!モンスターに一番近い傀儡にも同じように上位種や亜種へと変化する可能性があってもいいんじゃないか!と私は考えるよ!』
「……で、実際に変化したのが私の例だと」
『そういうことになるね!』
そういうことらしい。
……いろいろ、面倒なことになっているかもしれないなぁ。