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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第三章・前半
110/242

彼女は。そしてそのモノは。

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


試験的に、今週から土日に2話ずつ投稿してみようと思います。

これは1話目です。


もう1体のボスを探すにも、とりあえず今抑えているボスをどうにかしないといけない。

全力で抑え込んでいるのにも関わらず、今も起き上がろうとしているのだから。


「【大罪ー怒煙】」


ならば、と再び腕に【怒煙】を纏い、そのまま顔ではなく両腕両足を攻撃し付与させる。

【怒煙】によってしっかりと動かなくなったことを確認した後、落とし穴を10mほど掘りその下に突き落とす。


「【過ぎた薬は猛毒に】発動」


そして、第1階層のオーガの時と同じように、液体タイプの毒を大量に流し込んでおく。

こちらは動けないため、蓋はしない。


落とし穴の半分くらいまで毒を流し込んだ後に、【白霧結界】を解除する。

後衛系のボスに対し、【白霧結界】は確かに有効だがそもそも私の視界を塞いでしまうという欠点もある。

これから接近して【霧海】内にそのボスが入ってから、また発動し直すのでもいいだろう。


【魔力視】を使い、斧のボスから伸びている経路(パス)を辿る。

私からみて2時方向に伸びているため、そちらの方向にいるのだろう。

一度【魔力装】による疑似神経も解いておく。こちらは単純に魔力の消費を抑えるためだ。


一応、インベントリのMPポーションの数にはある程度余裕はあるが、魔力は節約できるときに節約しておかないと魔力切れで倒れてしまう。

そんなところを見せてしまえば、一瞬で死に戻りだ。


「何処に居るカな」


観客席のほうへと近づき、【霧海】をできる限りの最大範囲で展開する。

すると意外とすぐに反応があった。

……大体斜め上方向かな。洗脳系か何かを使うようだし、少し慎重にいかないと。


慎重に、とは言っても私の持つ魔術の中に慎重に事を進められるものは少ないのだが。

【霧海】の感知により、ある程度正確な位置を補足し隠れているボスの背中側と私の目の前に【チャック】を発動させる。

【異次元連結】を使い、一気に背後から仕掛ける。

これが一番簡単で、一番確実な方法だ。


連結(リンク)


私の前に開いていた【チャック】が違う光景を映し出す。

目の前には、火の玉を3個浮かべ笑みを浮かべているゴブリンの姿があった。


「マズッ……」

「グッヒャァ!!」


ボンッ!と大きな爆発音が広い闘技場内に鳴り響いた。



-----------------------



ゴブリン人形は、ご主人に指示された事をこなすだけの所謂本当の人形だ。

ゲームのシステムによって、ゴブリンというモンスターの皮とその魔石を使い作られた使役物という立ち位置だ。


元々仲間だった、集落で一緒に暮らしていたかもしれない相手も、ご主人に指示されたため何の忌避感もなく殺す。

殺し、心臓部の魔石を剥ぎ取り、それをご主人への手土産とする。


しかし、ゴブリン人形は先ほども言ったようにゴブリンというモンスターを元に作られた人形だ。

何が言いたいかといえば、あまり身体は大きくなく手土産にしようとも魔石をそんなに多く持ち運ぶことはできない。

ならばどうするべきか。指示をもらっていないゴブリン人形にはどうにもできない。


とりあえず、魔石は少しずつ少しずつ来た道を往復するように運んでいった。

ご主人の位置は、この胸の魔石から伸びている魔力を辿ればいいから、そこは問題ではない。

しばらくそのようにして運んでいると、問題が発生した。


ゴブリン人形が運んでいた魔石を、食っているゴブリンたちがいたのだ。

そういえば、ご主人もゴブリン人形に魔石を食べさせていたのを、映像記録として覚えている。


そして今のように運んでいると、どこかから魔石があるのを嗅ぎ付けてモンスターが寄ってくるのだと。

プレイヤーならばインベントリにしまうことができるが、ゴブリン人形など使役モンスターや使役物にはそんなものはない。

ならば、だ。食べてしまえばいいだろう。

質の良い魔石だけ残し、それ以外を食べてしまう。


それならば、モンスターに食われることもなくご主人に質の良い手土産も持っていくことができる。

そう判断したのか、それとも『考え』たのか。

ゴブリン人形は自身が持っていた大量の魔石を食べ始める。


大量の魔石。

それも、ゴブリンではなく上位種や亜種の魔石を食べる。

一部の物好きなプレイヤーが見れば、こう言っただろう。


「あぁ!それはモンスターの位階を上げるために行う行動だね!実に興味深いよね、傀儡とモンスターが『同じ方法』で強くなっていくなんてさ!!」


普通、傀儡は元となったモンスターの魔石を食らわねば、ステータスは強化されていかない。

そして、他のモンスターの魔石を食らったら、緩やかに自壊していく。これは何故か?

理由は簡単だ。種族が違えば体内で生成される魔力の質もガラッと変わる。人間でいう血液型のように。


そのため、違う種族の魔石を食らうことがあればそのまま自壊してしまう。

しかしだ。ここにあるのは?

今、この妖光の館を巣食っている種族は何だったか?


そして、ゴブリン人形は食らう。

影の魔力によって、勝手に裂けていく自身の皮など気にせずに。

できれば塞がってほしいと『思い』ながら、ただ手持ちの荷物を軽くするためだけに食らう。

その結果に何が待つかもわからずに。


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