2階層へ
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妖光の館 - 2F
「下に降りたわけだけど、2階か……」
休憩後、私はゴブリン人形と共に出現した階段を降り第2階層に来た。
このままある程度狩りつつ進んでいけば、モンスターの殲滅は出来るだろう。
……そういえば。
「別に誰かが入場制限してるわけじゃないのに、他のプレイヤーを全く見てないなぁ……」
不自然ではある。
普通、こういうダンジョンというものは他のプレイヤーがいるものだし、少なくともこの妖光の館は挑んでいる限り、あのオーガ以外は特に難しいダンジョンではない気がする。
初心者の1人や2人くらい見てもおかしくはないと思うのだが……。
とりあえず周囲を見渡してみる。
第2階層は、先ほどまでいた第1階層よりも廃墟感が増していた。
所々にある調度品は必ずどこかしら壊れているし、先ほどまでいた第1階層と比べると暗く、そしてどこか埃っぽい。
また、よくよく見てみれば蜘蛛の糸などが張られており、手入れされていないようにも見える。
「考えていても仕方ないし、まぁ接敵したら倒すを繰り返していくかな」
ゴブリン人形にも第1階層の時と同じ指示を出し、勝手に遊ばせておく。
一応【霧海】を使い広域感知を試みてみるが……またも上手くいかない。
やはりこのダンジョン内では使えないと考えたほうが良さそうだ。
最低限周囲の感知ができる距離まで狭めた【霧海】を展開しつつ、探索を開始する。
トラップがあるかどうかの確認のため【魔力視】を使いながら歩く。
ハロウに聞いた話だが、どうやらこうやって普段から魔力操作をしていると、魔術として取得していなくとも習熟度は溜まっていくらしいのだ。
そして一定数まで溜まれば、所持魔術と同じように習熟度ボーナスを得ることができる。
自分の技術を磨いていけば、システムに認められるというものだ。
「トラップ、やっぱり増えてるなぁ」
道一面に、とは言わないもののちょこちょこと地面に埋まっているものや壁に埋め込まれているものを発見できる。
恐らく、地面のほうは地雷か何か。壁の方は第1階層で私が受けた矢のトラップか何かだろう。
【魔力視】でよくよく見てみると、どこかから魔術的な経路が繋がっているのがわかった。
恐らくどこかしらにトラップに必要な稼働魔力を賄う何かがあるのだろう。
みれば、この階層のどこかに繋がっているようなので、後で壊しておいたほうがいいかもしれない。
「ギギィ!」
「ギィー!!」
「おっと」
目の前からこちらへ走って近づいてくるゴブリンらしきモンスターが2匹。
黒いボロボロの外套を羽織っているため、おそらくゴブリンの派生種か何かなのだろう。
しかし、声が聞こえる距離になってから気づくというのはかなり危ない。
それだけ【霧海】の感知に慣れすぎているということなのだろう。
「どうにかしないとねっと」
「!?」
背後から近づいてきていた外套ゴブリン(暫定)を、左腕から【魔力装】の刃を出現させ迎撃する。こういう背後から近寄ってくるタイプの敵に対して便利だからこそ、【霧海】をいつも使ってしまうのだ。
正面にいる2匹のほうは、奇襲が失敗したと見るや外套を深くかぶり影へと沈んでいく。
「【影化】とか、私以外に使ってるの初めて見たよ」
「ギィ!」
「ギーィ!」
影から半分だけ顔を出し、こちらを煽ってくる外套ゴブリン。
背後に居た1匹も影に潜っていったようだ。
……普通なら、もぐら叩きみたいに影から出てくるところを狙うんだろうけど。
こちらにも【影化】はある。同じ影内に繋がるかはわからないが、やってみる価値はあるだろう。
「【影化】発動」
ずぶずぶと影の中に沈んでいく。
影の中の世界はやはり、水中のような拘束感があり、それでいて心地よい感覚もある。
周囲を見てみると私が沈んできたことに対して驚いている外套ゴブリンが3匹ほど発見できた。
「いいね、ちゃんと繋がってる。少し遠いけどこれは現実とは少しだけ距離の間隔が違うってことかな」
外套ゴブリンは影の中で距離があることに安堵しているのか、こちらを笑い始めている。
彼我の距離は大体20メートルほどだろうか。
しかし、私にはもう距離は関係ない。見えてさえいればそれでいい。
「【チャック】二重発動、連結。さて、こんにちは」
「ギィ?!」
「ギッ、ギーィ!!」
「あは、逃がさないからね」
ジタバタ犬かきのような形で元の世界へ戻ろうとする彼らを、【魔力装】の刃と取り出した護身石の短剣で切っていく。
影の中に逃げたのが、彼らの敗因だろう。
3匹目にとどめを刺し【影化】を解除する。
すると、久々のログが出現した。
『深影魔術の習熟度が1000になりました。新たに【影槍】を習得しました』
「おぉ、影系のが増えた。やったね」
今の使用で習熟度が溜まったのだろう。新しい魔術を覚えることができた。
名前からしても、私が持っていなかった純正の攻撃魔術だと考えていいだろう。
これで戦闘での戦術の幅が広がるというものだ。
素直にありがたい。
「よし、この調子で【霧海】のほうも習熟度上げていくぞぉー」
軽く1人でガッツポーズをしつつ、解体を始めるのであった。