育成要素
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しばらく休んだ後、【霧海】が近づいてくる物を感知したため、戦闘態勢を整える。
しかし、近づけば近づくほどに戦闘態勢をとる必要はないことが分かった。
「なんだ、お前か……」
「……」
私が作ったゴブリン人形だ。
みれば、少しだけ切り傷があるため幾らか戦闘をこなしてきたようだった。
羊皮紙には魔石を取ってくるように、とは書いてはいなかったがゲームシステム的な補助でもあったのだろうか。
両手一杯に魔石を抱えていた。
「これは、全部ゴブリンの魔石か」
数を数えてみれば、14個。
少なくともこの階層にそれだけのゴブリンがいたというわけだ。
……これだけあっても仕方ないなぁ。どうしよう。
「ゴブリン人形、食うかな?」
ゴブリン人形に口を開けさせ、そこに3個ほど魔石を投げ入れてみる。
これで何かしらの変化がない場合は、魔石に関しては【チャック】の中に放り込んでおくことになる。
まぁ出来れば変化のないほうが、懐が温まるため私としてはありがたいのだが。
「お、おぉ?」
しかしながら、そんな甘い考えは通じなかったようで。
ゴブリン人形は少し体を震わせると、虚空だったその眼にきちんとした眼球が生成された。
よくよく見てみれば、先ほどまでと違い少しだけ血色も良いように見える。
私はすぐに、そういうことに詳しそうな人物に連絡をした。
「ヘイ!ガビーロールさん!!」
『んん!?どうしたんだい、クロエさん!何かあったのかい!?』
そう、私に傀儡魔術の存在を教えてくれたガビーロールにだ。
そもそも彼はゴーレムを使う魔術師。
管轄違いとは言え、同じような使役生物、使役物を扱うものとして何かしら知っているだろう。
そこらへんも踏まえ、現在起きたことを伝える。
「……というわけです。何か知ってます?」
『あぁ、知っているとも!というか教えていなかったね!申し訳ない。……それは使役物関係の成長要素さ!魔石で活動するものに魔石を与えるとその分だけ、他のホムンクルスやゴーレムなんかにも核としたアイテムを与えればその分だけ能力が強化されるというものさ!ただし、その能力値の限界は最高で使役者のステータスまで!頼り切ってステータス面を上げるのをサボっていたら、使役物たちも強くならずにアボン!というわけさ!!』
「なるほど……」
育成要素。ゲーム的なやり込み要素の一つなのだろう。
【鑑定】をかけてみても、ゴブリン人形のステータスが見えないのは、おそらくプレイヤーと同じようにして確かめる必要があるのだろう。
まぁ、現在ステータスが分かったところでなにをするわけでもないから、別にいいのだが。
『がんばってその傀儡を育ててみるといい!あんまり傀儡魔術使ってる人は見かけないしね!』
「あれ、そうなんです?」
『あぁ、全く見ないってわけじゃないんだけど!傀儡作るために必要なモンスター素材とかがホムンクルスやゴーレムに比べてコストが高いってのが一番の理由かな!!』
コストが高い。
まぁ、それもそうだろう。しかし、それならば商店などで買ってしまえばいいのでは?
『それがそうもいかないのが傀儡魔術でね!先ほど言った成長要素の部分がここでくるのさ!傀儡の成長に使う魔石なんだけど、元にしたモンスターの魔石でないと受け入れられずに、傀儡側が自壊するそうだよ!』
「それは……違う血液型の血を輸血する、みたいなそんな感じですかね」
『うん、大体そんな感じさ!』
ガビーロールに礼を言った後通話を切る。
傀儡を作る場合に考えたほうがいいことが増えたというべきか、有用な情報が増えたというべきか。
どちらにせよ、現在の私には後回しにするしかないことだ。
「現状は、妖光の館のモンスター殲滅が第一だしね。っと、どうせだし、今持ってる魔石全部食べさせるか」
口を開けさせ、ダバーと持っている魔石20個ほどを流し込む。
見た目でわかる変化は起きている様子はなさそうだが、【魔力視】で観てみると前に見たときよりもかなり魔力量が上がっているように見える。
「一応、まだこの階層全部回ったわけじゃないし、そのままサーチアンドデストロイさせておこう」
先ほどと同じ指示をだし、そのまま分かれる。
私も私でゴブリン人形だけに殲滅を任せるわけにはいかないので、休憩を終了して現在いる部屋から出ることにする。
「って言っても、先に進むなら戻るしかなさそうだよねぇ」
現在いる場所は行き止まり。
ならば壁を壊すか、来た道を戻り他の道を探しに行くしかないだろう。
「【強化-身体強化】発動」
足を重点的に強化をかける。
どうせ戻るのなら一気に走っていったほうがいいだろう。
今更だが、魔術師が思いっきり体育会系なこのゲームは世間一般的にみればおかしい部類に見られるんだろうなぁとなんとなく思う。
一応回りを確認しながら来た道を戻っていく。
もしかしたら別のモンスターが出現している可能性もあるからだ。
……見当たらないかな?
【霧海】を発動させながら走ってはいるのだが、あまり範囲を広げていないために、私の速度に追い付かず私が走った後を感知してしまう形になってしまっていた。
一応解除しておこう。
「まぁ、戦闘になったらまた発動させておけばいいしね」