読書しよう、そのあとは…
もしよかったら感想やご指摘などよろしくおねがいします。
始まりの街 - AM
ログイン後、宿にて研究していた禁書を取り出す。
「うわ、なんか禍々しい」
取り出した禁書は、何故かどす黒いオーラを垂れ流していて、いかにも危険物という風貌に変わっている。
これも研究が終わったことによる影響なのだろうか。
本を開き、1ページ目を読んでみる。
【汝、我を求め、我を行使する者也】
この一文を読んだ瞬間、身体が重くなった気がする。
ステータスを開くと【怠惰 Lv1】というデバフがかかっていたのと、禁書カテゴリの習熟度に5がプラスされていた。
「1ページ目を読むだけでこれかぁ。ちょっと本気でやばいかも」
でも読んでみよう。
もしかしたら、今よりももっと魔術をうまく扱えるようになるかもしれない。
今日一日この禁書を読むことに費やそう。
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始まりの街 - PM
「身体が…だるい…」
【怠惰】のレベルが上がったようで、身体を動かすのも一苦労という状態だった。
ちらっと確認すると、身体を動かすたびにHPが削れていっているのが分かった。
【怠惰】のレベルは現在5。高レベルのデバフなのだろう。
どれだけ身体を動かすのがつらくても、億劫でも。身体の節々が悲鳴を上げたとしても。それでも読むことを止める気には更々ならない。
禁書カテゴリの習熟度がそろそろ500になりそうだからだ。
1ページ、また1ページ読み進めていく。
すると。
『禁書の習熟度が500になりました。新たに【禁書耐性:第一章】、【禁書行使】を取得しました』
ログが出た瞬間に、私の身体を襲っていた気怠さはきれいさっぱり消え去った。
ついでに、もう一つ【禁書行使】なるものも取得したようだ。
【鑑定】にて調べておく。
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【禁書行使】
所持している禁書の魔術を行使する。
使用可能禁書:第一章
使用可能魔術:【怠惰】、【痛覚軽減】、【■■■■■■■■■■】
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一つだけ文字化けのようになっているのは、まだ禁書を読み終わっていないからだろうか。
そんなことを呑気に考えていると、
『鑑定魔術の習熟度が500になりました。新たに【情報検索】を取得しました』
というログも出てきた。
そういえば鑑定魔術も習熟度がそれなりにたまっていたのだった。忘れていた。
【情報検索】についても【鑑定】を使おうかと思ったが、調べずともすぐにわかった。
今まで【鑑定】で調べたことのある情報…鑑定結果を閲覧、検索できる魔術のようだ。
ある意味システムのようだが、これはこれでありがたい。
「さぁーって、じゃあ禁書の残りも読んじゃいますかー」
立て続けに習熟度報酬を貰えたからか、少しだけ気分が明るくなる。
この調子でそのまま最後まで読んでしまおう。
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「読み終わったぁ…長かったけど、割かし禁書って名前がついている理由は分かったかな」
内容的には、簡単であった。
というか、最初の一文以外がすごく簡単というか、もうなんというか。
……これ、内容だけみるのなら、ただの開発スタッフの黒歴史ノートなのだ。
しかも第一章というところを見るに、確実に続きがある。
この第一章に記されていた黒歴史は、開発スタッフのうちの一人の幼少時代の話だった。
簡単にいえば、自分は異世界の知識がある!異世界の力だって使えるんだ!と近所に自慢して回ってしまった…などといった(あれ、ちょっと頭がお花畑なお子さんかな?)と思う程度のものだった。
面白半分でアイテムとして誰かが追加して、でも簡単に取らせてしまうといけないからってことで禁書という形で実装したのだろう。
しかし、ゲーム内のアイテムとしてはかなりいい代物だった。
【禁書耐性:第一章】を取得してからは、禁書を読むことによってかかるデバフをすべて弾いてくれたためか、最後まで読むことができ、新たに【禁書行使】で使えることのできる魔術も増えた。
最後の文字化けしていた魔術、あれの名前は【召喚-棚-第一章一節】という、召喚魔術だった。
効果は何故か【鑑定】が弾かれたため読み取れなかったが、召喚魔術はロマンがある。
それに、他の魔術もなかなかだ。
特に【怠惰】。流石にデバフ耐性が高い相手に対してはなかなか通らないだろうが、これを相手に使うことによって、戦闘中かなりのアドバンテージになるだろう。
それに【痛覚軽減】は、相手も指定できるバフだ。
これの用途は簡単だ。相手に高レベルの【怠惰】をかけた場合、先ほど私が掛かっていたような状態になるのは目に見えている。
身体を動かすのがつらい。すごく億劫である。そして、身体の節々が悲鳴を上げるほどに痛む。
まだ試していないからわからないが、この高レベルの【怠惰】によって引き起こされる痛みというのも【痛覚軽減】にて軽減…打ち消すことは可能なんじゃないだろうか。
一回試してみるのはありかもしれない。
それこそ、自分の身体を使ってでも。
「いやぁ、これで明日からのWOAライフが画期的なものになるだろう!はっはっは!」
明日はまた森へ行くつもりだ。
ワーウルフと出会った辺りはまだ少ししか探索していない。
ダンジョンや何かでも、MAP埋めという作業が好きな私からすると、MAPの隅々まで埋めていないと何かもやもやした気持ちになり、気になって仕方がないのだ。
「っと、いけない。最後にやることやらないと」
一つ試したいことがあったのだ。
【武器創造】にて短剣を材木から作成し、その刃の腹の部分に対し
「【錬成-刻印】発動。対象は禁書第一章から【怠惰】。レベルは2」
すぅーっと指でなぞるように蛇が這ったような波線を描く。
すると、指でなぞった部分が窪んでいき魔術的な意味を持つようになる。
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木の短剣
付与魔術【怠惰 Lv2】
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完成だ。
これで、この短剣で攻撃された相手に怠惰をかけることが可能になった。
しかもアイテムに付与されているために、発動と声に出す必要も思考する必要もない。
「【刻印】の効果が思った通りでよかった…、いやこれも私はそうであると考えていたからできたのかな?」
要はイメージの問題だったのかもしれない。
人によっては【刻印】という魔術は、ただ彫像に対し名前を刻むだけのものとなるかもしれないが、私はこの魔術の事を『アイテムに対し魔術を刻むもの』としてイメージしていたから出来た可能性がある。
「……このゲームの魔術って、本当に多種多様なんだろうなぁ」