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出会い


「龍牙君はどんな武器使うの?」


一つ目の質問。まあ、何となくわかってたけどやっぱり興味はそっちだよね…


「僕の神器は双剣だよ」


「おお~」


皆が歓声を上げる中、一人の活発そうな銀髪の少女が手を上げる


「あなたの神器見せてよ!」


「えっ」


「あれ、もしかして今持ってなかったり?」


どうしよう、剣を近くで見せるわけにもいかないし…。かといってダメと言うのも…


「後で適性検査の時に使うと思うから、その時なら良いかな」


俺が苦し紛れに言ったその言葉を特に気に止めることなく次の質問に移ってくれた


「転校生君の神狼としてのlevelが知りたいかな」


「あ、そういえば聞いてなかったよね!いくつなの?」


「僕のlevelは1だよ。あんまし戦闘は得意じゃなくてね、あはは」


俺がひきつった笑顔を浮かべると女の子達は興味をなくしたように散っていく


そう、この学校では強さこそが全てであり弱いものには興味のないものが多い


これで終わりかと思いきやまだ一人の女の子が残っている


短い銀髪の少女がずっと俺を見たまま動かない


「どうしたんですか?」


「あなた、嘘ついたでしょ」


…ッ!?


気づいたのか?この短時間で


いや、そんなはずはない。何かの間違いのはずだ


俺は立ち上がると無言で少女を壁際まで追い込む


「え?ちょっと、なんのつも───ひゃうっ」


ドンッ


俺が手を壁に叩きつける。俗に言う壁ドンってやつだな、これはただ手が痛いだけじゃねぇか


一方、やられた方の少女は顔を赤くしている。近くで見ると可愛い顔してるんだな───じゃなくて


俺は耳元に口を寄せ小声で話す


「…なぜ気がついた、お前は何者だ?levelを教えろ」


「!?」


少女は俺の口調に驚いたのか口をパクパクと動かしている


チッ。面倒だな


「昼休みに裏庭に来い。話がある」


そう言い残し解放すると女の子は床に座り込む


周りが何か小さな声で話しているので不本意ではあるが聞き耳を立てる


「あの春華があんな風になるなんてね…」


「ビックリだよねー。やっぱり男の子の力なのかなぁ」


名前は春華って言うのか


とは言え、遅かれ早かれ気づかれるとは思っていたが、既に気づかれているとは思わなかった


キーンコーンカーンコーン


俺の思考を遮るかのように授業開始のチャイムが鳴る



─◇─



四時限目が終わり、パンを片手に裏庭へ向かう途中、俺はどうするべきかを考える


正直、あの春華とか言う少女がなぜ俺の嘘を見破ることができたのかは俺にはわからない。もしも何らかの能力や神器の特性なら対処をする必要がある


俺の力を知った人間は俺を恐れる、自分達の敵である神と同じ力を持っていれば忌むべきものだとして見られるのも当然だろう


「お、いたいた」


俺の視界に映ったのは裏庭のベンチにちょこんと座り、周りの様子を伺う少女


近づくとこちらに気づいたのか勢いよく立ち上がり怒鳴る


「あんたいきなりなんつもりよ!無言で近寄ってきて壁まで追い込んであげくの果てには耳元で囁くなんてっ!破廉恥よ!」


「いきなりどうしたんだよ」


「話しかけないでよ、この変態!」


変態はないだろ、変態は


「別に俺だってやりたくてやった訳じゃねぇよ。周りに聞かれると困るんだよ」


「何が困るのよ」


「俺がlevelを偽ったことに決まってんだろ」


「え、そうなの?」


「は?」


不思議そうに首をかしげる春華。その行動を理解できない俺


「だってお前俺が嘘ついてるって…」


「いや、私はあなたの使う武器のことだったんだけど」


「なんのことだ?」


俺が聞き返すと少し自慢げに話始める


「あなたの近くに行ったとき火薬の臭いがしたの。それにあなたの手には剣を使い込んでいる人に見られる癖が全くないのよ」


そこまで見てたのか。と言うか、どういう鼻してんだよ。犬か貴様は


いや、今はそんなことに気をとられている場合ではない


「そうか、俺の勘違いだった。手間かけさせてすまなかった」


さっさと教室へ戻ろうとした俺の腕が掴まれる


「何だよ」


「あなたのlevel教えなさいよ」


「嫌だ。誰が教えるもんか!教えたら俺の高校生活が灰色になるんだよ」


「教えて!」


「嫌だって言ってんだろ!」


俺が力ずくで手を振りほどいた反動で春華の体が地面から離れる


またやっちまった。頭に血が上るとつい人外的な力が出ちまう


春華は何が起こったのかも分からないのか、受け身をとる様子もない


春華の方向へ跳躍し抱き止める。地面に背中から着地し勢いを殺すために数回転する


「大丈夫か?」


俺が春華を見ると外傷はないようだが顔が真っ赤になっている


「どうした?顔が赤いぞ」


「…近い」


近い?


「か、顔が近い」


「あ、悪い」


俺は立ち上がるが春華は座ったまま俯いている


「はあ、しかたねえな。教えてやるよ、俺のlevel」


「本当に!?」


さっきの恥じらいはどこへやら、春華は目を輝かせている


「俺のlevelは───」


「おい貴様。適性検査を忘れたのか?こんなところで女子生徒とイチャついている場合じゃないだろ」


俺の言葉を遮ったのは女子生徒を数人連れた禍月だった


「すみません、この人に学内を案内してもらっていました。適性検査の場所も分からなかったので」


禍月は俺と春華を交互に見て嫌みったらしい笑みを浮かべる


「まあいい、さっさと来い」


「はい。またあとでな」


俺は春華に手を振り禍月についていく


そうして俺は成り行きとは言え、春華にlevelを教えるのを回避することに成功した



─◇─



俺が案内されたのは四方を強化ガラス、床と天井はコンクリートで覆われた空間だった


それはいいとして、何で強化ガラスの周りには生徒がこんなにいるんだよ


人が来ないようにlevelも偽ったのによ


「では、今から適性検査を行う。」


観戦者がいることに対しての説明はないですよねー


「相手はこいつだ」


禍月の隣の女の子が一歩前に出て自己紹介をする


「初めましてレヴィア・フォルアと言います。神狼としてのlevelは3です」


青髪の少女の手には三メートルを優に越える大剣をもっている


「でっかい剣だね」


「ありがとうございます。貴方も神器を手に取ってください」


「いや、素手でやるよ」


俺の言葉に眉を一ミリほど動かし禍月に問いかける


「あのごみを肉片に変えてもいいですか」


「ふ、構わんよ。死んだらその程度だったと言うことだ」


そういわれた瞬間、レヴィアはこちらに向かい走り出す


「私を舐めたまま死ね、level1がっ!」


助走の勢いそのままに大剣を降り下ろしてくる。俺はその場から動かずに両手をポケットに突っ込みながらタイミングを図る


「龍牙!!」


この声は春華か。お前も見に来るとは意外だったな、怒って教室に行ったかと思ったのに


刃が俺の体を真っ二つにする前に右手で大剣の側面を掴み、それを阻止する


片手白刃取り、初めてやったな


「っ!?」


「残念、僕はまだ生きてるよ」


俺が剣を離すとレヴィアは間合いを取り突きの構えをする


「降参するか、武器を握りなさい。次は本気で殺します」


「こちらも警告。武器を捨ててくれないと手加減できないよ」


俺は両手をポケットに入れ片足重心になる


「どこまで私を侮辱すれば満足するんだ!」


レヴィアがさっきの一撃とは比べ物にならないほどの速度で突きを放つ


剣に合わせ俺も蹴り真っ正面からぶつける


ギィィィィィン


大剣の一撃は俺の靴底に激突し威力を失う


俺がその場で高速の回し蹴りを大剣に炸裂させ、離れたところまで蹴り飛ばす


「まだやりますか?」


「くっ!」


レヴィアは素手で戦う意思を見せるが、俺は脚力をフル稼動させレヴィアの目の前へ瞬間的に移動し、首に手刀を突き付ける


「降参、ですか?」


俺の言葉にレヴィアは悔しそうに頷く。あらあら泣いちゃってるよ


涙を拭くとそのまま走って検査会場から出ていく


「意外にやるじゃないか。私も楽しめそうだ」


禍月のでかい扇子の親骨は鋭利な刃物に変化しているのを見る限り、既に戦闘形態のようだ


さすがに武器を使うか…?


「ほら、さっさと武器を握れ、さもないと刺身にするぞ」


「わかりました。先生相手に素手は荷が重いので」


俺は懐のホルスターから拳銃を取りだし構える


「貴様は本当にアホなのか?因子の入っていない武器で神狼と戦うなど言語道断だ。話にならん」


禍月の戦意が消え扇子も通常の大きさに戻っている


「敬遠していただきありがとうございました」


俺の言い回しに禍月は眉を顰めるが、すぐに俺のほうに足を進める


「今日の適性検査は終わりだ」


禍月は俺とすれ違う瞬間


「明日話がある。放課後付き合え」


「わかりました」


周りに聞こえない程度の声で約束が結ばれた



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