1:いつもの朝
とある私立校に通う私こと湯ノ宮結生の朝は、全然すがすがしくない。全くもって、すがすがしくない。
まず起床からもう爽やかじゃない。昨日の晩、私はしっかり鍵を閉めて寝た。そして今、私はまだ布団の中でうとうとしているわけだが。
ガチャガチャガチャガチャ……ガチャリ
「結生ねーおはよー!」
そう、弟は何故か鍵を持っていないのに中に入ってくるのだ。
「結生ねー、もう朝だよ?学校行く仕度しなきゃ」
「あーうん…はよ…ねーちゃんお弁当作んなきゃ…」
ここまでなら(やってはいけない部分もあるが)良い弟だ。わざわざ朝の弱い姉を起こしてくれるんだから。厄介なのはここから。
「じゃ、結生ねーチューしよ?」
「え…また?」
「だってわざわざ鍵壊してまでして結生ねーのこと起こしたんだよ?お礼くらいほしいよね」
「だからそれは鍵を壊さず外から声を掛ければいい話じゃないかな?」
「だって僕結生ねーの寝顔見たいもん。僕は結生ねーが好きなんだから」
そう純真な笑顔で答えるコイツ。くっそ、私がコレが弱いのを知ってわざと…!
「結生ねーがチューしないと、昨日結生ねーにしつこく絡んでた奴、遺体になっちゃうよ?」
「は、はあ!?そ、それは危険だ…!」
「僕ならホントにやりかねないもんねー?ふふっ」
「………」
仕方なく、頬に軽くキスをすると、「やったー!じゃーね結生ねー、下で待ってるよー」と元気に下へ降りてった。コイツがまだ中学生で良かったよ…
私が毎日困っているのはコレ。腹黒小悪魔系弟・遊斗の毎朝のキス。
朝が弱い私を起こしてくれるのはとてもありがたいのだが、その見返りにキスをねだってくるのだ。しかも毎日。
まだ中学1年なのに実の姉を手の上で転がす男って一体どうなんだ。いや、そもそも転がされてる高校2年もダメか。
「あーっ!弁当作んないと!」