my act.2 予想通り
歩き出してから、30分。
さきほど、木に登り周囲を観察したところ、遠くに城下町のようなイメージの町を見つけた。
その方向に歩いていたのだが、やはりなかなか辿り着かないわけだ。
魔物には会わなかったが、残念なことに盗賊のような連中に遭遇した。
「よォ、見られたからにァ、ただじゃすませねェぜ」
実にありきたりな台詞を吐いてくる。
人数は5人。一人リーダーのような強面の相当な筋肉をつけたおっさんが、一歩も前に出ている。
後ろの四人も、何だか色々と物騒な言葉を吐いてくる。
「・・・・・・はあ、そりゃどうも」
呆れて、うっかり、口に出してしまった。
すると予想通り、前にいるリーダーが、
「あァ? なめた口きいてんじゃねェぞ」
予想通りの言葉が飛んできた。どちらかというと、舐めてるのはそっちだと思うんだが。
その言葉を無視して、彼らの奥にある二台の馬車を凝視する。
よく見ると、そこに一人、あきらかに戦闘には不向きな格好をした太りめの中年がいた。
(あれを護衛してるのか? でも、こいつら護衛って感じじゃないよな)
まぁ、関係ないからいいか。と、そう思っていると、無視していたおっさんが怒り出した。
「無視たァいい度胸してるじゃねェか! おめェら! やっちまえ!」
そう怒声を浴びせると、後ろにいた4人のうち、2人が剣をもって襲いかかってきた。
「はあ」
左右から襲い掛かってくる2人。
相手が剣を振りかぶると同時に、右から来た奴との距離を詰めて、剣を握っている右手の肩に拳底ぶつけて弾く。
「くッ───!」
拳底をくらった奴の身体が崩れた。攻撃のでがかりを攻め、モーションを崩したのだ。
「せぁ!」
そのままもう片方の手で顔面を容赦無く殴り、吹っ飛ばす。
こっちに寄ってきたもう一人も、先に距離を詰めて足を払う。
あっけなく倒れたそいつの鳩尾に、同じように思いっきり拳底を当てる。
かはッ、と呻き声を漏らし、その痛みに地面をのたうち回っている。
「な、なんなんだテメェ!」
「何なんだって言われても・・・・・・」
お約束通りの言葉しか言わない彼らに、いい加減飽きてきた結兎。
「こ、こうなったら、オメェら! 一斉に魔術あてんぞ!」
そういい、3人は手を真上に上げた。
すると、手の上には炎の球体が螺旋を描きながら現れた。
「火球の魔術か。まぁまぁだね」
相変わらず覇気の無い気だるげな表情を見た三人は、一抹の恐怖心を覚えた。
「かまうな! ぶッ殺せ!」
リーダーの大声で、拭いきれない恐怖を押し殺して、火球を放ってくる。
すかさず、彼は、
「目には目を魔術には魔術を、ってね」
そう言い放つと、急に右手が発光し、青白いプラズマのような光に包まれた。
視認できたのはそこまで。飛んでくる3つの火球が標的へ一直線に飛び、着弾した。
着弾と同時に響き渡る轟音。地面を穿ち、辺りの草や木に、火が燃え移っている。
パチパチ、と燃える火の音が、場を支配する。
「や、殺ったか?」
したっぱの一人が生唾を飲みこんで、そう言う。
しばらくして、気持ちの整理がついた頃。ようやく、緊張が解けた3人に、安堵が生まれた。
そして、リーダーが口にした瞬間、
「・・・・・・は、はッ、たいしたこと───」
「うん? 何だって?」
背後から、弾みのいい笑いを含んだ声が聞こえた。
「て、テメェ!?」
そう言って、後ろを振り向こうとするが、そうはさせない。
半回転したところで、わき腹を思いっきり殴る。
思いっきり吹っ飛ばされ、苦しそうに呻いている。
「・・・・・・く、そ! テメェ、なにモンだ・・・・・・!」
わき腹を押さえ、こちらを睨んでそう言ったが、すぐにその顔は驚きの表情に変わる。
「・・・・・・て、テメェ・・・・・・何だ、ソレ・・・・・・」
そいつが見たものとは、雷を纏っている結兎の姿だった。
雷というより、電気に近いかもしれない。
ところどころ、バチバチ、と電気が漏れ出している。
包むようにではなく、高威力の静電気のように帯雷している。
黒髪で黒い瞳だった、薄いイメージは青白い光を発した事で、もの凄く勇ましく見えた。
「悪いけど、気絶してもらうよ」
彼は、一瞬で倒れていたリーダーの元へと移動した。
文字通り一瞬だ。唯一見えたのは、彼の軌道に流れた電気、それだけ。
これは瞬消と呼ばれる現象。
一瞬で消える、ではなく一瞬消えたように見える、という意味からジパングで付けられた名称だ。
そして、彼は右腕で拳底の形をつくり、
「───蒼雷の舞龍」
雷の纏った右腕を思いっきり腹へと叩き込んだ。
下が地面だったため、殴った衝撃がそのまま直撃し、痛みに声を上げ気絶した。
「ふぅ・・・・・・そこの二人も闘る?」
その言葉を聞き、2人は腰を抜かしながらも、おぼつかない足取りで走っていた。
「さて、向こうの馬車に行ってみるかぁ。ついでに、乗せてもらう」
そう言い、奥にある二台の馬車の方へ歩いていく。
向こうにいる、太った中年はこちらに気付いたようだ。
焦った表情を浮かべ、急いで馬車を進めようとしている。
だが、そうはさせない。
彼は瞬消を使って、一気に中年の元へと駆ける。
「やっと人を見つけたんだから逃がしてたまるか!」