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ポワミエ伯爵邸への帰り道。コレットは馬車に揺られていた。
王都の整備された道を、ゆっくりとした速度で走っている。車輪でレンガや砂利を踏みしめる音と一定のリズムが、疲れた心をほんの少しだけ癒す。
いつもは帰りたくないと願うが、今は一刻も早く帰りたい。
コレットは疲れた様子で、ぼんやりと窓から外の景色を眺める。
行きは愛しの相手に会えることを心待ちにしていた。
しかし、帰りは気分が重く沈んでいる。
今後、少なくともジョイルに対して、同じ感情を味わうことは無いのかもしれない。これは予感だった。
少しでも相手との距離を縮めたくて、同乗している侍女に相談した思い出が遠い昔のように感じる。
これから、ポワミエ伯爵に報告しなければならないと思うと気が重い。窓の景色から視線を外し、なんとなく膝に置いていた手を見る。
ポワミエ伯爵は、ベルワーテ侯爵家との繋がりを更に強めるために、ジョイルとの結婚を強いるかもしれない。
爵位の序列は相手の家が上。貴族であれば、家や領地の発展のために望まぬ相手と結婚することは、当たり前のように行われている。命令されても拒否する権限はコレットに無い。
ジョイルと結婚できることを待ち望んでいたはずが、今は分からなくなってしまった。
何となく、ジョイルに重ねられた手を見る。
何故あの時、手を払いのけたのだろうと彼女は疑問に思っていた。愛している相手から手を重ねられると、恥ずかしくなった経験はある。その経験と比べると、恥ずかしさからではなく、嫌悪感の方が近い気がした。
考え事をしているコレットに、誰かが声をかける。
「お嬢様」
同乗している侍女だ。
心配しているのだろう。無表情に見えるが、どこか悲しげだった。
「お嬢様の行く先に、私もお供いたします」
そう言って、コレットの手を包み込むように握る。
彼女の立場を理解しているので、安心させるためにだろう。侍女の優しさが、手の温もりを通して感じる。
コレットは長い間、この侍女に世話をしてもらっていた。長所や短所、癖なども知られている。それだけ、心を開いているのだ。
「ありがとう」
侍女の優しさに、笑顔で答える。
コレットは自身に問いかける。
今も、彼を愛しているのだろうか?
そうこうしている内に馬車の速度が落ち、やがて止まる。
答えが導き出される前に、ポワミエ伯爵邸に到着した。
7話が短いので、0時から1時ごろに8話を投稿する予定です。
できたら良いな。




