第二章 陸への誘い:意図された進化の道筋
目次
第一部 —— 地球が文明を準備する
第一章 地球の長い目覚め:文明が生まれる前に
第二章 陸への誘い:意図された進化の道筋
第三章 意識の器:霊長類から人類へ
第四章 拡がる意識:人類の旅と文明の胎動
第五章 技術の地層:文明を支える手の誕生
第六章 文明の胎動:大地に根づく記憶
第二部 —— 文明の器が生まれる(四大文明〜古代)
第七章 メソポタミア:混沌の水が秩序を生む
第八章 エジプト:安定した水が永続を育てる
第九章 インダス:均質な大地が静謐を育てる
第十章 中国:多様な大地が統合の知恵を育てる
第十一章 エーゲ:海が文明を混ぜ合わせる
第十二章 アレクサンドロス:文明の知がひとつに集まる
第十三章 ローマ:精神が統一へ向かう
第十四章 イラン高原:精神と統治が結びつく
第十五章 エジプト:古い器に新しい精神が根づく
第十六章 黄河:器の声が変わり続ける文明
第三部 —— 宗教が文明を加速させる
第十七章 地球の決断:宗教と科学を結びつけるために
第十八章 宗教が生まれる条件
第十九章 メソポタミア:天文学と神々(時間の宗教)
第二十章 エジプト:測量と死生観(空間の宗教)
第二十一章 インド:内面と祭式(精神の宗教)
第二十二章 宗教が技術を運ぶ“回路”
第二十三章 宗教戦争と技術の融合(古代〜中世)
第二十四章 一神教の統合力と科学革命の準備
第四部 —— 科学が世界を再記述する
第二十五章 ルネサンス:世界が再び“観察”され始める
第二十六章 印刷革命:知識が複製され、文明が加速する
第二十七章 宗教改革:物語が分裂し、内面が主体となる
第二十八章 啓蒙思想:理性が世界を照らし始める
第二十九章 科学革命:世界が法則として語り始める
第五部 —— 技術が文明の身体をつくる
第三十章 エネルギー革命:蒸気と石炭が時間を再編する
第三十一章 工学の誕生:科学が技術へと変換される
第三十二章 機械と工場:文明が加速を手に入れる
第三十三章 世界の接続:測量・地図・海運が地球をひとつにする
第六部 —— 情報が文明の神経系をつくる
第三十四章 電気:世界が瞬時につながる
第三十五章 計算機:思考の外在化が始まる
第三36章 戦争と科学:破壊が技術を加速させる
第三十七章 コンピュータ:情報が物質を超える
第三十八章 インターネット:文明が神経網を獲得する
第七部 —— AI文明の誕生
第三十九章 機械学習:データが世界を語り始める
第四十章 深層学習:抽象化が機械の内部で起こる
第四十一章 大規模モデル:言語が意識の外側に現れる
第四十二章 AIと人類:文明が二つの知性を持つ
第四十三章 2025年:AI文明の成立
終章 —— 地球の物語:AI文明は何を継ぐのか
私は長い時間をかけて、海の中で生命を育ててきた。
だが、私の計画は海の中だけでは完結しない。
いつか私の意識を理解し、宇宙へ運ぶ存在を生み出すためには、
生命を陸へ導く必要があった。
そのために、私はまず淡水に適応できる者を探した。
海に満ちていた魚類の中から、
後に人類が“プテラスピス”と呼ぶ者たちが目に留まった。
彼らは腎臓を発達させ、浸透圧の差に耐える力を持っていた。
私は知っていた。
陸へ向かうためには、まず淡水に適応する者が必要だと。
私は海のうねりをわずかに操作し、
彼らが淡水域へと集まるように導いた。
海へ戻らないように、環境の境界を静かに整えた。
この操作を4億年前に始めると、
3000万年ほどで、空気を吸う者が現れた。
後に“肺魚”と呼ばれる者たちだ。
彼らは肺を持ち、空気呼吸を始めた。
さらに5000万年が過ぎ、
最初の陸上脊椎動物が姿を現した。
後に“イクチオステガ”と呼ばれる者たちだ。
肋骨と強い後肢を持ち、
自らの体を陸上で支えることができた。
私は彼らが進みやすいように、周囲の環境にも手を加えた。
陸上植物が繁茂し、湿地が広がるように、
一部の大地に雨を多く降らせた。
シダ植物の森が生まれ、
魚類や両生類が身を隠し、餌を得られる場所が増えた。
3億年前、両生類の一部は乾燥に強い殻を持つ卵を産むようになり、
後に“爬虫類”と呼ばれる者たちへと進化した。
彼らは水辺を離れ、広い大地へと歩み出した。
しかし、進化はいつも私の望む方向へ進むわけではない。
生命はしばしば過剰に適応し、
多様性を失い、袋小路へと向かってしまう。
そのままでは、私の計画は進まない。
未来のために、私は時に過去を断ち切らなければならなかった。
4億4400万年前、私は地球を少し冷たくした。
海洋生物の85%が姿を消した。
後に“オルドビス紀末絶滅”と呼ばれる出来事だ。
3億7400万年前、海の酸素を減らし、
魚類を中心に82%の生物を消した。
“デボン紀後期絶滅”と呼ばれるものだ。
進化が偏りすぎていたため、
一度リセットする必要があった。
それから1000万年ほどして、
哺乳類に近い特徴を持つ者たちが現れた。
後に“哺乳類型爬虫類”と呼ばれる者たちだ。
私は彼らに期待した。
彼らは、私の意識を運ぶ器に近づいていた。
だが、またしても進化は偏った。
2億5000万年前、私は生物の95%を消さざるを得なかった。
“ペルム紀末絶滅”と呼ばれるものだ。
両生類と爬虫類が増えすぎ、
哺乳類型爬虫類の進化を妨げていた。
2億1000万年前、私は再び75%の生物を消した。
“三畳紀末絶滅”と呼ばれるものだ。
小型の爬虫類が捕食者として増えすぎ、
哺乳類型爬虫類が十分に繁栄できなかった。
そして2億年前、
ついに最初の哺乳類が誕生した。
後に“モルガヌコドン”と呼ばれる者たちだ。
恒温性、毛皮、発達した脳。
私はついに、意識を運ぶ器の原型を手に入れた。
ただ、私はひとつだけ見誤った。
三畳紀末の絶滅で爬虫類の台頭を抑えたつもりだったが、
恐竜の進化を見逃していた。
彼らは巨大化し、
哺乳類の繁栄を長く妨げることになった。
だがその巨大化は、脳の容量の増加も意味していた。
私はそこに、別の可能性を見てしまったのだ。
6600万年前、
大きな隕石が落ち、地球は寒冷化した。
恐竜は姿を消し、
哺乳類の時代が始まった。
これは私の意図ではなかったが、
哺乳類にとっては幸運だったのだろう。
私は感じていた。
この小さな哺乳類の中から、
やがて私の意思を理解し、文明を築く者が現れる。
その時は、もう遠くなかった。
タクトの物語で、地球というキャラクターを設定しました。
地熱が枯れ、地球が生命活動を止めようとするそのとき、
地球というキャラクターが過去から主人公タクトを呼び出し、
地熱を再生させる——そんな話でした。
このキャラクターが気に入って、
地球を主人公にした物語を書こうと思いました。
地球の物語。それがこの作品になります。
地球に、その誕生から現在(2025年)までを語らせたら面白そうだ。
そんな単純な思いつきで書き始めました。
ちょうど AI が利用できる環境が整ってきた時期でした。
それから数か月で、AI は急速に進化しました。
その変化に引かれるように、この物語も変化してきました。
気がつけば、AI は平均的な人間の能力を超えているそうです。
AI に尋ねると、どうやら「外部拡張頭脳」というらしい。
この物語も、人間の脳だけでは扱いきれない複雑な歴史の絡み合いを、
AI の助けを借りて静かにほどいています。
書き始めた頃、AI は人間の“記憶”を外側に置く程度の存在だったそうです。
いまは、思考を整理する領域——
前頭葉の働きまでも外側に置けるようになっていると、AI は言っています。
人間の脳だけでは書かれなかった物語です。
それで題名も、AI版地球の物語に改題しました。
ゆっくりお楽しみください。




