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氷炎護リ人  作者: 有麻環
一章
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1章 5 三人目の護リ人

「で、だ。ライアはシアンを置いて単独行動の末、敵組織に加入し?シアンは寝不足でその組織にしてやられたと。迷イ人まで危険に晒して?お前らやっぱりバカか?え?」

 

 胡座(あぐら)をかいた金髪褐色の男が不機嫌を隠さずシアンとライアを詰める。

 双子は男の前に正座してはいるものの、背筋も伸ばさず気怠げで形だけとしか言いようがない。それでも、誰が見ようと説教タイムだった。

 

「つか、絶対なんかあると思った!あの大陸行ってお前らが問題起こさないわけが無い!」

 

「出禁の人間がなんか言ってら」

 

「問題を起こしたのは私達じゃなくて、人攫いの野郎共なんで。……あぁいや、ライアはギルティ。こいつがその場で潰してればすぐ終わってた」

 

「だって〜、あの野郎共裏切るの楽しそうだったから」

 

「クソが〜〜〜〜〜!」

 

「そもそも!二人一緒に行動してればこうはならなかっただろうが」

 

「「終わり良ければ全てよろしい!!」」

 

「よろしくねえよ!!」


 男の名はソラ=ドラッド。ライア、シアンの幼馴染であり、同じく護リ人。つまりは迷イ人を保護する一族である。

 ライアは方向音痴故すぐ迷子になり、気づいた頃には今回のようにどこかの組織に潜入という名の遊びを始め、シアンは短気ですぐ怒る。

 よって、迷イ人保護はソラが行くのが最も穏便に済むのだが、先ほどライアが言った通り訳あって彼は双子が葉と出会った大陸に出禁とされていた。本人は否定するが、要は根本的な性格はどいつもこいつも同じであるということだ。

 

「それで?(くだん)の迷イ人は今どこに?」

 

「とりあえずはトラリアに任せたよ。世界軌道の話とか帰りたいか否かってのは一応帰還道中に説明してある」


 溜息をつきながらソラが尋ねた。件の迷イ人、葉はその後双子と共に船に乗ってバルフィレム王国へ来ていたのだ。

 説教が終わったことを察した双子はそうそうに正座を崩し、なんならライアは寝そべっている。

 

「まぁ、私と会ったのがこっちに来た直後って感じだったからな。まだ猶予はあるだろうぜ…………と言っても軌道にもよるが、長くてあと三日か?」

 

「本人に帰るつもりがあるなら早いに超したことはないだろ」


 シアンが猶予と口にしたのは、迷イ人が元いた世界に帰ることが出来るのは長くても来界から五日と定めているからである。それは異世界へ帰るための門を開く、彼女ら護リ人の都合でもあり、迷イ人が元いた世界――元いた時代に戻るために必要な措置でもあった。


「それなんだけど!」


 ライアが突然飛び起きた。


「葉は弟がいたらしいんだ。いやまー、別居だったらしいけど……。それはいいとして、そいつが半年前くらいに消えちまったんだって」

 

「行方不明?」

 

「そ。弟くんと一緒に住んでた母親が必死に探したけど見つかってなくて、手がかりも何もなし。神隠しって言われるくらいにはなー」

 

「それがどう関係して…………まさか」

 

「そう、そのまさかを疑ってる。風希(かざき)(けい)、弟の名だそうだ。ソラ、お前心当たりないか?」

 

「風希……カザキ……ケイ……………………あー、ねえな」

 

「ほんとに〜?また忘れてんじゃねーの」

 

「世界が違うとはいえ半年前だろ?こっちの基準で長く見てもまだアーカイブしてねえよ」

 

「一応後で記録は漁っとくけどよ、葉が帰る帰らないはそれにもよるかもしれねぇぜ」


 もし弟がこの世界にいるのなら、自分は彼を探したいのだと言った葉を思い出すシアン。思い返せば彼女はこの世界を死後の世界と勘違いしていた。それはつまり元の世界で死ぬ直前にあったということだろう。

 事故か事件かは知ったことでは無いが、本人がこの場にいるのだから、元の世界に死体はない――が、既に()()()()()として扱われている可能性が高い。そういう前例はいくつかあったのだ。

 

 それに加えて彼女が母親を語る目は、思い出したくもない己の敵を語る目だった。生死とは別に元の世界に戻りたくない理由があるのかもしれない。だからといって本人が話し始めるまで深く聞くつもりは無いのだが。


 三人が葉について話していると、ふいにモニターが現れた。ライアが持っていた通信用デバイスが起動したのだ。

 以前ライアとバルフィレム国軍の機械オタクが結託して作ったもので、この世界エインスカイの魔力工学とどこかの世界の科学技術を組み合わせたベータ版だとかなんとか言っていた。

 画面の向こうには先程葉を預けた軍属の女。桃色髪に蛍光ピンクのメッシュが入ったお下げ。見た目はどう見ても10代前半の少女だが、既に立派な25歳。片腕が機甲義手の通称「隻甲の虎」。バルフィレム国軍三番(ベルナイース)隊隊長のトラリア=ラルジィだ。

 

「三人ともお疲れ様!葉ちゃんの迷イ人登録はちゃんと終わったよ」

 

「おっつ〜トラリア!仕事が早くて助かるぜ」

 

「いえいえ〜これくらいは当然だよぅ。それよりも、お休みのところ悪いんだけどね……」

 

「また迷イ人が来たってんだろ?私も今気づいたよ」


 彼女たち三番ベルナイース隊の役割はシアンたち護リ人と協力し、今後のための迷イ人に関する情報整理、迷イ人がエインスカイに残る場合は一定期間の生活補助も行っている。また、流石に護リ人三人だけでエインスカイ中の迷イ人を保護しに行くのは無理があるため、保護の補助と異界と繋がる予兆の察知も行う。

 正確に言うと正確に予兆を感じ取れるのは護リ人の血筋のみだが、研究を重ね可能な機器を発明したのだ。天気予報みたいなものである。

 

「その通り!誰か見に行ってくれないかな。あ、一人は残って欲しいの。葉ちゃんに説明をもう一回したいから。そのまま帰還ってなったら門開けて欲しいんだよぅ」

 

「それは結構だけどー、連日って…………なんかおかしくね?」

 

「おかしかろうと行くしかねえよ。それがオレたち護リ人の仕事だろ」

 

「うんうん、さすが!ソラくんはプロ意識高いねぇ。じゃあ後のことはそっちにお願いします!」

 

「はーいよ」


 そう言って、トラリアとの通信が切れた。

 エインスカイには迷イ人が何人も暮らしているとはいえ、連日来るのは今まで無かった――とライア。とはいえ、迷イ人がまた人攫いに合わないとも限らない。

 

 それに迷イ人を狙うのは人間だけではないのだ。

 なるべく早く保護をし、エインスカイを護るためにも門を閉じなければならない。門を閉じることこそが護リ人の本当の使命と言っても過言では無いのだから。

 三人ほぼ同時に立ち上がり、各々伸びやら首を回すやらしながら互いに見合せた。


「さて、誰が行く?」

 

「じゃんけん」

 

「よし、恨みっこなしな。せーの!!」

 

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