第2章 闇オークション(2)
「会場に入ったらオークションが始まるまで、待機するんだ」
ラクビースの家で闇オークションへの忍び込み計画を立てているとき、ラクビースは言った。
「調べたところ、闇オークションに出入りすることはとても容易いみたいなんだ。だけど、何故か闇オークションが行われていることについて、どこからも漏れていない。これは何故かわかるか?」
「さあ?」
キツい物言いをしたドリュウルは、本心の苛立ちを隠すこともなく肩をすくめた。ラクビースの答えをすぐに言わない独特の喋り方に苛立っていたのだ。
「クルダマオ族の巧妙な術だよ」
自分が出したお茶をすすりながら、ラクビースは言う。落ち着いた口調だった。
「それが何かは詳しくはわからないけど、闇オークションのことを口をすることができない何か強力な力が働いているとしか思えない」
「口にできないって……それじゃ、どうやって窃盗団のことを暴くつもりなんだよ」
「盗品を持ち出してそれを証拠にするしかないだろうな。でもそれじゃあ、僕たちが疑われる可能性があるから、決定的な瞬間に警備隊に踏み込んでもらうのが一番だと思うけどね」
「なんだよ、結局警備隊に今日行われることを報告に行くのかよ」
ドリュウルが机をトントンと人差し指で叩く。耳の鱗をパタパタとさせ、鋭く赤い目はラクビースの瞳を逃さず、真剣というより冒険を楽しもうとしているようなラクビースの軽薄な顔を睨んでいる。だけど、当の本人はそんなドリュウルの威嚇も怖くないようで、飄々と話しを続けた。
「いや……。警備隊にこのとこを話しても、信じてもらえないどころか頭を心配されるだけだと思う。警備隊員様が味方になってくださる可能性はほとんどゼロだよ。なにより、今日犯人たちを捕まえることになったせいで、警備隊員たちを説得するための時間も証拠もない。それに、敵陣にも警備をする奴らがいるんだ。そいつらが易々と警備隊を入れてくれるとは思えない。そういう理由で、警備隊に手伝ってもらうのはほとんど不可能に近いと僕は思っている」
「じゃ、どうするだ。さっきからアンタの話は堂々巡りじゃないかい?」
「一つだけ、警備隊員を確実に会場に呼び込む方法があるんだ」
「もったいぶらず、さっさとその方法を言いな」
「それは、あり得ないくらいの大規模な騒動をオークション会場で起こすことだ。あの廃墟には警備隊が常駐している。騒ぎが起これば、必ず警備隊が廃墟の中に入ってくる。それに、敵側の警備隊も騒ぎが起これば、意識が廃墟ではなく会場内へと向いて、秘密扉の警備が疎かになるはずだ。そこを警備隊員たちに踏み込んでもらう」
「なるほど……。だけど、そんなに簡単に大騒ぎを起こすことができるのか?」
思わず、キヒュームは前のめりになっていた。
聞きたい、知りたい、クルダマオ族を一網打尽にしたい。
キヒュームの高揚していた。正義感がグツグツと心の中で煮立つのを感じる。
自分の手で、悪を捕らえることができるかもしれないのだ。
興奮する。気持ちが昂る。
「簡単だよ。クルダマオ族の奴らは自分の能力を過信している。そこを利用するんだ。さぁ、これから、騒ぎを起こす前までに必要なことをいくつか話す。全部頭に叩き込んでくれ」
「わかった」
うなずき、そして、ラクビースの言葉を繰り返す。
証拠を確保するために、出品に伴って金庫が開けられるその時まで、決して騒ぎを起こしてはならないこと。金庫が開けられ、暴れる準備が整い次第、ラクビースが用意した魔力と科学力が融合した謎の兵器を用いて、大騒ぎを起こすこと。その隙に三人のうちの誰かが警備隊員たちを会場に招き入れること……。
ラクビースの作戦を聞けば聞くほど、この作戦の規模の大きさに気持ちを揺さぶられた。
うまくいけば、歴史に名を残すことになるかもしれない。それってかなり名誉のあることだ。




