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元カノと2000万ドルの為。ウェットワーカーは異世界で汚れ仕事をする  作者: 幽霊@ファベーラ


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7/9

旅は道連れ、世は情け


 耳を劈く銃声が響く度。

 鎧兜に身を包んだ衛兵達が次々にバタバタと倒れていく。

 程なくして銃声が止むと、フロアに噎せ返る程の血と硝煙。それに死臭が漂い始めた。

 多数の衛兵達を射殺した張本人であるラリーは即座に空になった弾倉を予備と詰め替えると、ボルトリリースを左の親指で押して初弾を薬室へ送り込みながらロダンに指示を飛ばしていく。


 「ロダン!ビアーヌを連れてこい!!」


 指示を飛ばすと、直ぐにロダンの返事が返って来た。


 「解った!連れてくる!!」


 ロダンが地下に居るビアーヌの元へ向かう姿を見送ると、ジェーンは出入り口の脇に立って外を窺うラリーへ尋ねる。


 「何でコレが解ったの?」


 ジェーンの問いにラリーはアッケラカンに答えた。


 「俺が凄腕だから……じゃ、駄目か?」


 真面目に答えろ。そう言わんばかりの鋭い視線を向けられると、ラリーは真面目な面持ちを浮かべて答えていく。


 「簡単な答えだ。内通者が居て、ソイツは俺達の行動を知ってる。なら、例のクサナギってクソ野郎が取る行動は決まってる」


 「ソレがコレと言う訳?」


 不快そうにしながらジェーンが問えば、ラリーはさも当然の如く肯定する。


 「俺が同じ立場でも同じ様に妨害する」


 「流石は専門家(プロ)と言うべきかしら?」


 ジェーンが称賛の声を挙げると、ラリーは吐き捨てる様に返した。


 「この程度、誰でも解る。寧ろ、解らない方がどーかしてる」


 吐き捨てたラリーは出入り口から外をソッと覗き込むと、どうするべきか?考え始める。


 表から堂々と外に出る?

 駄目だ。そんなんしたら大規模な戦力であっという間に踏み潰されて終わる。

 なら、裏口から逃げるか?

 コレも駄目だ。敵は確実に裏口にも兵を配して手ぐすねを引いて待ってる。

 だったら、残るは……


 最後に浮かんだ考えでいく事を決めた矢先。

 ビアーヌを連れたロダンがやって来た。


 「遅れたか?」


 「大丈夫だ。それより屋上に出られるか?」


 ロダンに尋ねれば、直ぐに頷いてくれた。

 そうして屋上に出る方法が解ると、ラリーは店の酒と灯り用のランタンをフロアに全てブチ撒けて火を点し、M67破片手榴弾を手に取ってピンを抜いて投げた。

 外でM67が爆発して何人かの衛兵がぶっ飛ばされると共に混乱が起き始めた頃。

 酒場が激しく炎え盛り、炎に包まれると共にもうもうと黒い煙が辺りを包み込んでいく。

 そんな状況を他所にラリー達は煙に紛れて屋上から隣の建物の屋根を伝い、逃げていた。


 「まさか、こんな逃げ方があるなんて」


 ビアーヌが驚いた様子で漏らしてしまうのを他所にラリーは先頭に立ち、進んで行く。

 表口と裏口で見張られてる以上は()か、(地下)から逃げるのが一番良い。

 それを建物を燃やし、燃やした事で出る大量の煙を隠蔽用の煙幕にして屋上や屋根を伝って逃げる方法を短時間の間に考え出すと共に実行に移したラリーに対し、ロダンは呆れ混じりに聴いて来た。


 「お前さん、普段どんな生活しとるんだ?」


 ロダンに問われたラリーは正直に答えた。


 「貧乏暇無しな生活だ」


 その答えを聞くと、ロダンはさも当然の様に返した。


 「だと思った」


 そうして屋上を伝って逃げると、酒場から大きく離れた建物の屋根に来た所で窓から入ったラリー達は其処で、何故か休憩を始めた。


 「逃げなくて良いのか?」


 「その前にやる事がある」


 ロダンにそう返したラリーはビアーヌの方を見ると、ジェーンに指示を飛ばす。


 「俺の荷物から毛染めと変装セットだしてくれ」


 その指示を聞くと、ジェーンは直ぐにトランクから毛染め液と変装用のセットが入ったケースを取り出し、ラリーに差し出した。


 「何をするの?」


 「ちょっとしたメイクだ」


 ビアーヌにそう返すと、ラリーは毛染めでビアーヌの赤い髪を金髪に塗り替え始めた。

 そうしてビアーヌの髪色を赤から金に変えると、ラリーはケースを開けて中から肌色で厚みのあるシリコン製のシールをビアーヌの顔に貼り付けていく。

 程なくしてビアーヌの顔立ちを変装で変えれば、その場で着替えさせた。

 暫くすれば、ビアーヌは一時的ながらも他人へと変わった。

 その後。ラリー達は建物を通って通りに出ると、王都の住人と衛兵達が火事で混沌とする中をラリー達は悠々と進み始めた。

 30分ほど歩き続けて反対側にある王都の外へ出る城門まで来た面々は堂々と衛兵達の前を通ると、まんまと街の外へ逃げる事に成功したのであった。





 街道を呑気に歩いてると、ビアーヌがラリーに尋ねた。


 「このままシェルドンに向かうの?」


 「それでも良いんだが、先ずは野営地を捜す」


 ラリーの答えから察したビアーヌは察した事が合ってるか?確認する様に問う。


 「夜を待つの?」


 「そうだ」


 今は幸運にも王都の外へ逃げ出す事に成功した。

 だが、何れは捜索範囲が広げられて王都の外も捜索範囲に含まれてしまう。

 ならば、さっさとハンヴィーに乗り込んで機動力でゴリ押して逃げれば良い。誰もがそう考えるだろう。

 だが、自動車の無い世界でハンヴィーは嫌という程に目立ってしまう。

 それ故に人の動きや目が一気に失せる夜を待つ必要があった。

 すると、今度はそんな事情を察してるジェーンが尋ねてきた。


 「貴方の計画は破綻してしまった様に思えるのですが、良いのですか?」


 自分の仲間が裏切者である事への怒りを僅かに滲ませながら問うジェーンに対し、ラリーはさも当然の如く涼しい顔で返した。


 「計画なんて何かしらのアクシデントでブッ潰れちまうんだから問題の内にも入らん。まぁ、出鼻を挫かれたのは癪だがな……」


 ラリーにすれば、当初の計画が破綻するのは想定の範囲内であった。

 寧ろ、依頼人であるジェーン側に標的達と内通する裏切者が居る事が解っただけでも僥倖とすら思っているくらいだ。

 そんな様子ながらもラリーはジェーンに強く要求する。


 「野営地を見付けた後、アンタは裏切者を処理しに行ってくれ。俺に仕事を成功させて欲しいんなら、ソレは絶対条件だ」


 「解りました。夜までには片付けましょう」


 断固たる意志と共にジェーンが快諾すれば、ラリーは思い出した様にロダンの方を見て尋ねる。


 「頼むぜ。おっと、ロダン……アンタの事を忘れる所だった。アンタはどうする?」


 唐突に問われたロダンは「俺の事を忘れてねぇとはありがてぇな」そう皮肉混じりに感謝すると、申し訳無さそうにするラリーに要求する。


 「なら、俺も一緒にシェルドンに連れてってくれや……店は廃業だし、御尋ね者になっちまったからな」


 「宛はあるのか?」


 着の身着のまま逃げ出す羽目になったばかりか、この国では御尋ね者になってしまったのだ。

 そんなロダンを心配する様にラリーが問えば、ロダンは安心しろと言わんばかりに答える。


 「シェルドンに叔父貴が居る。叔父貴を頼れば、何とかなる筈だ」


 「なら、良かった。アンタの店燃やしちまって申し訳無く思ってたんだ」


 本心から申し訳無さそうにするラリーにロダンは意外そうにすると、その対価を要求した。


 「なら、お前さんの仕事が全部片付いたらお前さんの事を色々教えてくれ……それで俺の店と俺の大事な酒を台無しにしたのをチャラにしてやるよ」


 「俺の事?聞いたって何も面白くないぞ」


 素っ気無い様子で遠回しに話したくない。と、ラリーが返せば、ロダンは鼻で笑って返した。


 「ふん。そんな訳あるか……お前さんの動きはこの手の荒事やペテンに長けた奴のソレだ。荒事とペテンの為だけに鍛えられた奴の話が面白くないわけがあるか」


 「あー……俺を高く見てくれるのはありがたいが、生憎と俺には守るべき秘密が沢山あるから話せないんだ」


 自分を高く見てくれたロダンに申し訳無さそうな様子で返せば、察したロダンは折れてくれた。


 「そう言う事なら仕方ねぇな……なら、俺の店と酒を弁償してくれるだけで勘弁してやるよ」


 「あぁ、全てが片付いたら喜んで弁償させて貰うよ」


 ロダンからの弁償要求に喜んで応じると、ジェーンは意外そうな様子で尋ねた。


 「貴方の事ですから、この2人を見棄てる。または口封じの為に殺害して逃走すると思ったのですが、何故しなかったのですか?」


 ジェーンの言葉にビアーヌは顔を青褪めさせ、ラリーの人柄を察していたロダンは「それは俺も気になってた」と、漏らせば、ラリーはアッケラカンとした様子ながらも正直に答える。


 「単純にしない方が後々、メリットが産まれるかなぁ……って思っただけってのもあるが、一番は契約が発生したからだな」


 「契約ですか?」


 「俺は彼女、ビアーヌから情報を得た。対価として彼女を逃がすという条件で……で、ロダンに関しては仕事を果たすのに必要なモノをビアーヌに合わせると言う形で与えてくれた。つまり、俺に対価を支払う義務が産まれた訳だ」


 「成る程。貴方は借りを必ず返すのをポリシーにしている。そう言う訳ですか?」


 「まぁ、踏み倒して良い借りなら踏み倒すんだけどな」


 ジェーンの言葉にシニカルな笑みと共に返すと、ラリーは話は終わりだ。

 そう言わんばかりに沈黙した。

 その後は途中で何度か休憩をしながらも歩みを進め続けながら、王都から数キロ離れた深い森の中へと入っていった。

 そして、野営を始めるのであった。



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