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元カノと2000万ドルの為。ウェットワーカーは異世界で汚れ仕事をする  作者: 幽霊@ファベーラ


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4/12

準備開始

仕事する為の準備回


 夕食を済ませてから約2時間と40分後。

 ラリーはマイアミ郊外にある1件の屋外シューティングレンジへと来ていた。

 カマロを皆大好きガトリングことM134ミニガンと、ソレをぐるりと取り囲む様な防盾が据えられたM1114 ハンヴィーと黒塗りのベンツが停められた駐車場に停める。

 それから直ぐに降りると、ラリーはシューティングレンジの事務所へと歩みを進めていく。

 明かりの灯る事務所の扉を開けると、其処にはブルーの姿があった。


 「やぁ、よく来た。フィルには申し訳無いが、暫く席を外して貰ってる」


 やって来たばかりのラリーに告げると、ブルーは早速と言わんばかりに物資を用意したスペースへと誘った。

 ブルーに誘われるままに数分ほど歩みを進めると、其処には大量の大小異なるアモ缶(弾薬箱)と銃器が収められているだろう複数のPELICANケース。それに大量の様々な木箱と段ボール箱が多数あった。


 「各種銃器と弾薬。それに爆薬や食糧等を初めとした、君の要求した品を揃えた」


 大量に並ぶ要求した品が並んでるのを見ると、ラリーは思わず感心してしまう。


 「まるで軍のデポ(物資集積所)だな。3時間でコレだけ揃えるとか流石だな……」


 武器商人も真っ青な速さで揃えてくれたブルーに感心すると、当人はさも当然の様に返した。


 「なーに。この程度なら簡単さ……それに此処はフロリダだ。テキサスと並んで銃器に関しては大らかだろう?」


 「それもそうだな」


 ブルーの言葉に納得すると、ラリーはPELICANケースに赴いてその内の1つを開ける。

 中には完璧にCoD:MWに出て来る様なカスタマイズされた軍用の自動小銃があった。


 「ダニエルディフェンスのMk18。それのMod.1だ。君に説明するのは釈迦に説法だろうが、米軍特殊部隊も使用してる信頼性抜群のアサルトライフルだ」


 陽気に語ったブルーを他所にMk18を手に取ると、ラリーは点検をしていく。


 「見ての通り、ハンドガードはM-LOKにしてフラッシュライトとレーザーユニット。それにショートタイプのフォアグリップと折り畳み式のアイアンサイトも取り付けてある。無論、そのACOGの後ろにも折り畳み式のアイアンサイトを付けてあるし、ストックもMAGPULのMOEに換装済みだ」


 ブルーが語った通りの仕様となっているMk18を点検し終えると、ラリーは尋ねる。


 「銃口のコンペンセイターが通常の物じゃないな?」


 「ソレはマズルブレーキだ。サプレッサーを直ぐに取り付けられるな」


 ラリーの質問に答えると、ブルーはMk18と一緒にあったサプレッサーを手に取って差し出して来た。

 ソレを受け取ると、ラリーは銃口にサプレッサーを取り付けて告げられた内容である事を確認する。


 「こりゃ良い」


 「君の事だからサプレッサーは常に付けるだろうと思ってね」


 「銃撃戦なんざ周りの皆様御免なさい……って赤面しながらするもんだし、サプ付けずに銃声バンバカ響かせまくったら耳もおかしくなっちまうんだから当然だ」


 皮肉と嫌味。それに自嘲も込めてラリーが返すと、ブルーは「君のそう言う皮肉に満ちた言い方は嫌いじゃない」そう返してから更に続けて告げる。


 「既にフィルがゼロインも兼ねて500発撃ってあるから直ぐに問題無く使える」


 今は居ないシューティングレンジの主であるフィルは、フロリダで最も腕の良いガンスミス(銃職人)でもあった。

 そんな彼が仕上げてくれた。そう聞くと、ラリーは信頼に満ちた笑みを浮かべる。


 「そりゃ最高だな」


 その言葉と共にMk18からサプレッサーを外してPELICANケースへ戻すと、今度は別のPELICANケースを開けて中に収められていた大型のスコープを装備した長くて大きなライフルを手に取った。


 「バレットM107。コレも君は使い慣れてるだろう?アフガニスタンやシリア、それにアンゴラ等で君は2キロ先の標的を殺害したワザマエは実に見事だった。特にモスルでダーイシュの幹部を撃ち抜いたのは最高だったな」


 過去の仕事を出した上で賞賛するブルーにラリーは素っ気無く返す。


 「あの程度、真面目に訓練してれば誰でも出来る」


 「過ぎた謙遜は嫌味にしかならないぞ。まぁ、兎に角だ。高性能なスコープと最高の腕を持ったガンスミスが調整した完璧な仕上がりのスナイパーライフルと君の腕があれば最高の結果を齎してくれる事は確かだ」


 「そりゃどうも」


 褒め殺しとも言えるブルーの言葉に興味無さそうに返すと、ラリーは共にあったもう一つのスコープに視線を移す。

 そんなラリーに気付いたブルーはそのスコープに関しても説明してくれた。


 「そのスコープはサーマルスコープだ。ソレが有れば、夜間であっても君なら容易く獲物を狩れる。因みに最大望遠は50だそうだ」


 「ライフルに付けてない時にも便利に使えるな」


 心の籠ってない声で返すと、ラリーは他の銃器も見ていく。

 暫くして全ての銃器を実際に触り、見て回り終えると、今度は装具に移った。


 「戦闘服は赤外線処理をしたデジタル迷彩だ。地球と違い、敵味方の識別が難しいと言う事は無いだろうから問題無いだろう」


 地球上の軍隊では各国がデジタル迷彩を用いてる。

 それ故に敵味方の識別が難しくなってしまっている。と、言う問題が起きていた。

 だが、異世界ではそんな問題は無い。

 ブルーがそう言うと、ラリーは「異世界で同じ迷彩使われてても問題無いだろ?」と、呑気に返した。

 戦闘服を確認し、異常が無い事を確認すると、今度は暗視ゴーグル付きのFASTヘルメットに視線を移した。

 FASTヘルメットに取り付けられた暗視ゴーグルを見ると、ラリーは驚きを露わにしてしまう。


 「マジか!?コイツ、F-Panoじゃねぇか!?どうやって手に入れたんだよ!!?」


 ラリーが驚くのも当然であった。

 F-Panoと呼んだ5つのレンズが目を引く暗視ゴーグル……GPNVG-18の改良モデルとも言えるFPNVGは、米軍のTier1に指定されるデルタフォースの様な部隊にしか配備されてない。

 それ故、民間には未だ流れていない最新機材と言えた。

 そんな最新機材は当然ながら値段もお高い。10万ドルで買えたら奇跡と言える程に。

 ソレを容易く調達したブルーはアッケラカンに答える。


 「カードで大勝ちしてね。相手から巻き上げた。それで、折角だから君に進呈しようと思ってね……気に入ってくれて嬉しいよ」


 具体的に答える気は無い。そう言わんばかりの答えを聞くと、ラリーは普段ならば問わない事を敢えて問う事を選んだ。


 「アンタはこの仕事で何を得るんだ?」


 「依頼人であるジェーンから君に投資した以上の利益。それじゃ不満かな?」


 煙に巻く様な答えを聞いても、ラリーが納得する事は無かった。


 「普段なら気にしない。だが、今回に関しては聞かせて貰う」


 「ほう?何故だね?」


 「確かにアンタは気前が良い。だが、今回の仕事に関しては準備が()()()()し、()()()()()()()。まるで、この事を予期していたかの様だ」


 ラリーの言う通りであった。

 各種仕事道具に関しては、まぁ良いだろう。

 しかし、昨晩出会って別れてから24時間も経たずに本命であろう標的達を割り出した事は流石に腑に落ちない。

 そうラリーが言えば、ブルーは淡々と答える。


 「君に仕事を持ち込む前日に謎多き彼女……ジェーンから私に依頼があった。で、私はその時点で彼女から提供された勇者達のリストを元に日本に居る取引先の力も借りながら調査を進めていた。で、その際に私はソフィー(ソフィア)の娘が居る事を知り、その後は調査を続けさせていた」


 ブルーの語った内容は非の打ち所が無い理路整然とした答えと言えた。

 しかし、それでもラリーは何と言えば良いのか?解らぬ引っ掛かるモノを感じていた。

 そんなラリーを察してか、ブルーは告げる。


 「君が私を疑うのは当然だ。私も君と同様に墓場まで持っていく秘密が多い身だから尚更だ」


 「つまり、答える気は無い訳か?」


 「そう言う事だ」


 「なら、1つだけ教えろ」


 「何だね?」


 「アンタは俺の仕事が成功して欲しい側か?」


 嘘偽りは許さない。

 そんな視線を向けると、ブルーは正直に答える。


 「勿論だとも。私は君に仕事を成功させて貰いたい。だからこそ、現段階で揃えられる最高品質の品々を用意した。じゃなければ、君に此処までの物を用意したりしない」


 ブルーが雄弁に語れば、ラリーは一応は納得する事を選んだ。


 「良いだろう。一応は信用する事にしよう」


 「そう言ってくれて助かるよ。さて、今度は私も聞いて良いかな?」


 ブルーが自分の番。そう告げる様に聞きたい事があると言えば、ラリーは沈黙と共に続きを促した。


 「君は大量の155ミリ榴弾なんて用意させて何に使うつもりだね?」


 「あぁ、ソレは向こうで大軍相手にする時に使うんだ。場合によっては正規軍が足並み揃えて俺を殺しに来るかも知れねぇから……」


 相手は仮にも1つの国家を我が物にした連中。

 相手が正規軍を差し向けて来た際、迎え撃つ必要も迫られるだろう。

 それ故に自分独りと言う兵力の不足を補う為にも大火力は欠かせなかった。

 そんな答えを聞くと、ブルーは納得しながらも呆れてしまう。


 「成る程。若い頃の真面目な兵士だった君がイラクやアフガニスタンで味わったIEDの恐怖を相手に叩き込む訳か……」


 若き日の真面目な米軍兵士だった頃のラリーにとって、テロリスト達の常套手段とも言えるIEDと呼ばれる即席の爆弾による攻撃はトラウマと言えた。

 そのIEDによって戦友が消し飛び、時には自分も負傷した。

 だが、そんなトラウマも敢えて利用する出来る程度には回復していたが故に、ラリーは当時の敵が多用している攻撃方法を使う事を選んだ。


 「実際、IED仕掛ける方が手っ取り早いからな……榴弾って謂わば、爆薬の塊なんだしよ?まぁ、こっちと違ってケータイ(携帯電話)でコールして起爆って訳にも行かんから、有線で起爆するしか無いんだけど」


 「成る程。合理的だな」


 「とは言っても、補給の当てが無いなら一回こっきりなんだけどな……」


 今回の仕事では補給の当てがあるのか?

 正直言って、解らなかった。

 あるならば、多用は出来る。

 しかし、そうでないならば……


 「補給が出来るなら良い。だが、そうじゃない可能性の方が濃厚に思えるんでな……一回こっきりの切り札として使う方が良さそうだ」


 「標的を4人殺せば良いだけの話ならば、大丈夫と思えるんだが?」


 ブルーが当然の様に問えば、ラリーは少しだけ不安そうな様子で答えた。


 「多分、お宅が調べ上げた4人だけで済まなさそうなんだよ。ほら、大半の連中はダーイシュとかボゴハラム滲みた事してるだろ?それに対して、依頼人が不愉快だからソイツ等も殺せってリクエストされたら俺としては答えるしかない。雇われの辛い所だろ?」


 「成る程。ソレを言われたらそうだな」


 「まぁ、俺としては殺しても罪悪感が沸かない相手だから助かるんだけど……」


 ラリーの発言にブルーは意外そうにする。


 「君が人を殺して罪悪感を持つ事があるとは意外だな」


 「俺だって人間よ?罪のないガキを殺すのは流石に心が痛むし、後でヤケ酒したくなる程度には気分が悪くなるぞ?」


 「なら、今回はヤケ酒をせずに済みそうで良かったじゃないか」


 「複雑な気分ではあるけどな」


 ゲンナリとしながら返すと、背後から気配がした。

 その気配に気付くと、2人は振り向いて気配の主を見た。


 「準備は済んだ様ですね」


 気配の主。もとい、ジェーンが尋ねると、ラリーは嫌な予感を覚えながら返す。


 「アンタの決めた期限まで未だ20時間以上はある筈だと思うんだが?」


 その問いに対し、ジェーンは残念そうに答えた。


 「申し訳無いのですが、私の上司から急ぐ様に厳命されました」


 さっさと現地へ行かせろ。

 そう命じられた事を告げると、ラリーは依頼を受けた者として要求する。


 「今行ったとして、現地は夜か?」


 「残念ながら夜です」


 「具体的には何時だ?こっちで言う深夜の2時頃なら良いが、そうじゃないなら少し時間を置かせてくれ。で、その間に荷造りをしたり、資料を読み返しをさせてくれ」


 ラリーの当然とも言える要求に対し、ジェーンは斬り捨てる様に告げる。


 「荷造りでしたら心配は要りません。此処にある物は全て、私が現地へ運び込ますので……」


 「マジかよ……」


 「それと先程まで話してた事と関係するのですが、最優先は其処の彼(ブルー)が調べてくれた4人ではあります。ですが、同時に上司は貴方風に言うならば、ダーイシュの同類な面々も処理して欲しいそうです」


 嫌な予感ほど的中する。

 ソレを証明する様に告げられると、ラリーは諦観に満ちた様子で折れた。


 「解ったよ。解りましたよ……行けば良いんだろ。行けば……」


 「御理解して戴き、ありがとう御座います。因みにですが、私も貴方に同行致します」


 「あー……俺の見張り役として?」


 ラリーの穿った見方を認めた上でジェーンは理由を答える。


 「それもあります。ですが、最大の理由は私もこの件は成功という形で終わって欲しい側だからです」


 「まぁ、現地に詳しい通訳も兼ねたガイドが居てくれるなら仕事は捗りやすいから助かる」


 ラリーがジェーンを伴うメリットを口にすると、ジェーンは真剣な眼差しと共に要求する。


 「今この場で貴方に確約して戴きたい事があります」


 「俺に出来る事なら」


 「もし、私が依頼遂行半ばで死して、私の同僚や上司と名乗る者が依頼中止を命じても依頼を継続して必ずやり遂げて下さい」


 ジェーンが確約を求めた内容に対し、ラリーは肩透かしを食らった気分で尋ねる。


 「そんな事で良いのか?」


 「はい」


 「だったら、心配する必要は無いぞ」


 意外とも言える答えにジェーンは間抜けな声を上げてしまう。


 「え?」


 「アンタは何があろうと依頼を必ずやり遂げろ。そう要求し、確約も求めた以上は俺は依頼を必ずやり遂げる。まぁ、それ以前に俺はコイツ(ブルー)から前金を受け取っちまってるから完了させる以外に選択肢が無いんだけどな……」


 ラリーの言う通りであった。

 依頼人であるジェーンは何があろうとも依頼を遂行する事を求め、ラリーは依頼を受ける前金としてブルーに作った借りを全て帳消しにする事を求めた。

 ブルーが前金を支払った以上、ラリーは依頼を必ず完了させるしかない。

 それ故にラリーから見れば、ジェーンの要求は要求にすらならない。

 そんなラリーにジェーンは思わず、尋ねてしまう。


 「それだけ高潔でありながら何故、貴方は今の様な……」


 其処で何故か言い淀み、言葉をどう選ぶべきか?迷ってるジェーンに対してラリーは助け舟を出すように答えた。


 「そんなのは簡単な話だ。俺は救いようのないロクデナシのクズで要領の悪いバカだったから……ただそれだけの事だ」


 自嘲を交えてシニカルに答えると、ブルーが補足する様に言葉を続けた。


 「君の見立て通り、彼はこの世界では珍しくも高潔で善良な人間だ。その証拠に彼が昔勤めて居た所では、周りが麻薬を弄る事を初めとした秘密の小遣い稼ぎをしてる中で彼だけはソレをせずにルールを守り、任務に忠実であり続けた。しかし、それ故に彼は……」


 ブルーが更に言葉を続けようとすると、ラリーは不愉快極まりない。そう言わんばかりの様子で遮る。


 「辞めろ。そんなくだらねぇ戯言は……思い出すだけで胸糞悪くなる」


 ラリーにすれば、昔勤めていた職場に対して愛想を尽かすには十分過ぎる。

 否、その言葉では言い表せない程の裏切りを受けた。

 それ故にその時の事を思い出させる様な事を言うブルーに対し、殺意すら覚えた。

 そんなラリーにブルーは「すまない」と、短く謝罪すれば、ラリーはソレを認めた上で話を戻した。


 「気にするな。さて、話を戻すんだが……夜間、街の外に人が居る事は無い。その理由は何だ?危険だからって感じか?」


 現代の地球でも夜に出歩くのは危険なのだ。

 寧ろ、夜中に出歩いてコンビニに行って無事に帰れる日本の方がどうかしてるすらある。

 そんな夜の危険性を問えば、ジェーンは肯定で返すと共に理由も答えてくれた。


 「概ね、その認識で構いません。街の外では俗に言うモンスター(魔獣)と、盗賊達が蔓延っています。それ故、人々は夜になると村や街と言ったコミュニティからは絶対に出ませんし、燃料の節約の観点から言っても夜は早めに眠りもします」


 燃料の節約。そんな補足も足した上でジェーンが肯定すれば、ラリーは納得と共に肝心な事を尋ねる。


 「成る程。健康的な生活を送ってる訳ね。そうなると、そこら辺は此方の過去の時代と変わりがない訳か……現地の連中には暗視、夜闇や闇そのものを見通す手段を有してるか?」


 「魔法を用いれば暗視ゴーグルの様な効果も出来ます。ですが、基本的には火を用いたりします」


 ジェーンが詳しく答えると、ラリーは少し考え始めた。

 程なくして考え終えると、ラリーは依頼を遂行する者として要求する。


 「地図を見せてくれ。降下地点を選定したい」


 自分の依頼を完遂する為に大まかながらも計画したラリーは、その計画に適したポイントを地図から捜して選定したかった。

 そんなラリーに応える様にジェーンは紙の地図を手にすると、それを空いてる作業台の上に広げる。


 「どうぞ」


 「ありがと」


 感謝の言葉と共に地図が広げられた作業台に赴くと、ラリーは真剣な眼差しと共に見つめていく。

 資料にあった王城のある首都とも言える大きな街の周囲を見廻し、その中で村の数が比較的少ない地域を見付けると、ラリーは地図の縮尺を確認する。

 縮尺の確認が終われば、暫定的に決めた地点から目的地である首都までの距離を大まかに計算した。

 程なくして距離の概算を完了すると、ラリーはもう1枚の地図を要求する。


 「この世界の世界地図をくれ」


 ジェーンが虚空から地図を召喚して差し出すと、ラリーは世界地図を見つめ始める。

 そんなラリーの姿に何を考えているのか?解らなかったからだろう。

 ジェーンはブルーに尋ねる。


 「彼は何を考えてるのですか?」


 問われたブルーは「恐らく」そう前置きしてから答えた。


 「彼は国外脱出するルートを考えてるのだろう」


 「国外脱出ですか?」


 首を傾げるジェーンに対し、ブルーはラリーに代わって解説していく。


 「標的は33名。その内の4名が最優先目標であるが、その4名を一度の攻撃で纏めて片付けられるほど世の中は甘くない。まぁ、彼の性格や遣り口を考えるなら……ゲリラ戦をしようと考えてる筈だ。その為に必要なモノを捜しても居ると見ても良いだろう」


 「ゲリラ戦ですか?そのゲリラ戦とやらに必要なモノとは?」


 再び首を傾げたジェーンが問えば、ブルーは答えた。


 「聖域だよ。厳密に言うならば、其処に逃げ込まれたら敵がほぼ絶対に手出しが出来ない地域……そう言うべきかな?」


 「成る程。そう言う事でしたら、教国が最適かもしれません」


 ジェーンの言葉が聞こえたのだろう。

 ラリーは直ぐに教国の位置を世界地図で確認すると、ルートを模索しながら尋ねる。


 「理由を聞いても良いか?」


 「先ずは軍事力が上位にあります。更にこの世界で言う当時のローマ・カトリックの様な強い影響力も発揮出来ます。それと、私や私の上司の意向に対して唯々諾々と従ってくれもします」


 ジェーンから理由を聞けば、ラリーは即決した。


 「なら、最終的に逃げ込む聖域とベースは其処で良いな……」


 それと同時に、ある事にも気付いたラリーは確認の為に問う。


 「教国はアンタの意向に従う。そう言ったな?」


 「えぇ、言いました」


 ジェーンが肯定すれば、ラリーは「仕事が捗りやすくなったか?」そんな淡い期待を込めた呟きを漏らすと、再び尋ねる。


 「教国の連中は何処まで出来る?」


 「無理の無い範囲でしたら如何様にも」


 それを聞くと、ラリーは次の事を聞いた。


 「標的達が掌握してる国内では?」


 その問いに対し、ジェーンは残念そうな様子で答える。


 「現在は本国である教国との連絡が途絶えており、協力は見込める可能性は低いと言わざる得ません」


 ジェーンから返ってきた答えは想定の範囲内だったのだろう。

 ラリーは顔色1つ変えなかった。


 「だと思った。まぁ、其処まで有利に運んでくれねぇわな……」


 そう漏らすと、ラリーは告げる。


 「準備が完了次第。そちらの望み通りに現地へ移動する」


 「解りました。それで降下地点は?」


 ジェーンが聞けば、ラリーは地図上を指し示しながら答える。


 「此処だ。首都からは距離にして約120キロ離れているが、村や街は少ないので発見される心配は薄い」


 ラリーの答えを聞くと、ジェーンは質問して来た。


 「直接、首都に向かうのですか?」


 「先ずは偵察だ。首都の地形を下水道を含めて確認したいし、場合によっては王城への潜入方法も見付けたいんでな」


 「攻撃は?」


 「攻撃に関してはゲリラ戦を考えてはいるが、それよりも先ずは偵察を優先したい」


 攻撃するにしても、何処をどう攻撃すれば最も効果的にダメージを与えられるか?

 ソレを把握する為にも、先ずは偵察をする必要があった。

 そんなラリーの考えにジェーンが一応は納得したのを察すると、ラリーは更に続けて言う。


 「まぁ、チャンスと思ったら攻撃を仕掛けはするさ……」


 「そう言う事でしたら、貴方に全てお任せします」


 「俺を信頼してくれて助かるよ」


 そう返すと、ラリーは本格的に準備を始めるのであった。




日本に居たブルーがマイアミに居るのは彼がプライベートジェットを所有しており、ラリーとの遣り取りの後に日本の食事や酒を愉しんだその日の夜の内に羽田からプライベートジェットでマイアミに飛んだからってだけの話である


後、準備に関しても多数の155ミリ榴弾等を除けば概ね彼が言った通りに前もって進めていただけの話


何だかんだでブルーはラリーとの付き合いが長いので、彼の性格もそれなりに熟知している。

それ故、元カノの名前を出した上で元カノの娘が絡んだら絶対に断らないと踏んでた

ブルーにすれば賭けにすらならない事でしかないと言うね…


ソレでも断ってたら?

他の腕が良い奴に依頼するだけの話でしかない

受けるって奴が出るまで…だけの話

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