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元カノと2000万ドルの為。ウェットワーカーは異世界で汚れ仕事をする  作者: 幽霊@ファベーラ


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3/10

仮説。提案。立案


 翌日の夕方頃。

 ジェーンから指定された期限が残り24時間に迫りつつある頃。

 日本からマイアミへ戻ると、ラリーは帰路に着いていた。

 オンボロのカマロを走らせて帰路に付くラリーは思考を巡らせていく。


 こうして冷静になると、見えて来る事がある。

 先ずは依頼人であるジェーン。

 彼女からは焦りを感じた。

 だが、同時に冷静に考えられる程度には頭が煮えてないのも感じ取れた。

 そうじゃなかったら、俺に72時間の猶予を与えるなんて真似は絶対しない。


 僅かな遣り取りからジェーンから焦りを感じ取ったラリーはそう考えると、依頼に関する事を仮説という形で考え始める。


 次に依頼内容だ。

 大概の場合、皆殺しを求めてる奴がスンナリと依頼を投げた相手の身内だけは除外して良いなんて言わない。

 それなのに彼女の娘だけは除外して良いと明言した。

 この奇妙な点から考えられる事は1つ。

 つまり、34名の内の1人。

 または複数人がジェーンにとって本命の標的であって、それ以外は無関係と見るのが妥当か?


 ジェーンから告げられた依頼内容と自分へ告げられた言葉から察すると共に仮説を立てると、ラリーは更に続けて思考を巡らせて自分の立てた仮説の矛盾点を自ら挙げた。


 だが、俺の仮説が合っていた場合。

 その本命の標的を伝えなかった事が矛盾するし、大きな疑問として残る。


 自分の仮説に対する大きな矛盾点を自ら挙げると共に疑問を覚えると、ラリーはオンボロのカマロを走らせながら更に思案していく。


 ファーストコンタクトの際に与えられた資料にはそう言う事は一切触れられていなかった。

 だが、代わりに召喚された34名勇者達が行った非人道的な行いが記されていた。

 しかし、その資料には彼女の娘……エレナを初めとした数人がダーイシュやアルカイダ共みてぇな事をしてる記載が何故か無かった。

 勿論、本命に関する記載も無かった。


 最初の出会いで提供された資料の内容を振り返り、其処に娘であるエレナの事や本命であろう人物に関する記載が無かった事を思い出すと、ラリーは益々困惑してしまう。

 だが、同時に1つの仮説が浮かび上がりもした。


 ジェーンが本命の標的が解っていないとしたら、どうだ?

 そうだとするなら、召喚された34名全員を殺害して貰いたい点とソフィアの娘だけは除外して良い。

 その2つが矛盾無く成立する。


 閃きと共にシックリ来る仮説が浮かび上がると共に自宅を取り囲むトタン壁が見えて来た。

 ラリーはカマロを中に入れて停めると、階段を登って家に入った。

 中に入ると、テーブルの上に置かれた分厚い封筒とソファーに座るジェーンの姿があった。

 ジェーンに気付きながらも尻目に荷物を置くと、ラリーに語り掛けられる。


 「お望みの資料よ」


 「そりゃどうも」


 素っ気無く返したラリーはキッチンに赴くと、お湯を沸かし始めた。

 数分後。お湯が沸くと、ラリーは2人分のコーヒーを淹れてジェーンに振る舞う。


 「どうぞ」


 「ありがとう」


 感謝の言葉と共にコーヒーを受け取ったジェーンが一口飲むと、ラリーは向かいに座り、資料の収まった分厚い封筒を手に取りながら言葉を連ねていく。


 「俺みたいな奴に汚れ仕事を外注する(押し付ける)のはよくある話で、珍しくも何とも無い。世の中は愛と平和と言った綺麗事と、美味い飯だけで回る訳じゃないから当然だな……」


 嫌味を交えた言葉にジェーンがコーヒーを飲む手を止めると、ラリーは更に言葉を続けて自分の立てた仮説に対する答え合わせをする様に告げる。


 「だが、俺の知り合い(ソフィア)身内(実の娘)が標的の中に居る事を教えたり、ソイツは標的から外しても構わない。此等の点は奇妙としか思えない」


 疑問を呈する形で真意を問うラリーに対し、ジェーンが答える事は無かった。


 「貴方の娘を除いた標的達を殺せば良いだけ。ソレで済む話よ」


 「そりゃそうだ。さて、俺は幸いにも時間があったから仮説を立てる事が出来たんだが……興味は?」


 ラリーの問いにジェーンはコーヒーをまた一口飲むと、沈黙を以て続きを促して来た。

 そんな意思を察すると、ラリーは仮説を述べる。


 「アンタが始末して欲しい標的は34人の内の"誰か"。だが、アンタは何故か肝心要の"誰か"を知らない……調べる術が無いのか?それとも術を持っていても調べる為のリソースを割けないのか?何れにしろ、アンタは最も始末したい標的が誰なのか?分からずに居る」


 ラリーがつらつらと仮説を述べれば、ジェーンはコーヒーをテーブルに置いて尋ねる。


 「そう思った根拠は?」


 「最初に言ったろ?俺の知り合いの娘は標的から外しても良いと言った事が奇妙に感じたって……俺が言うのも何だが、皆殺しを望んでる依頼人がソレを言うのを初めて聞いて驚いてるくらいにな」


 仮説を立てる切っ掛けとなった根拠を答えれば、ジェーンは尋ねる。

 ラリーの仮定を事実として仮定する。そんな形で肯定した上で……


 「では、ソレが事実だと仮定しましょう。その場合、貴方はどうするのですか?」


 「アンタの目の前に居るクソ野郎は、この世界に於いて顔が広い。まぁ、あのブルーと比べたら狭いだろうがな……」


 其処で言葉を一旦切ると、ラリーは自分のコーヒーを一口飲んで一息入れてから更に続けた。


 「で、アンタは幸いにも俺とブルーと言うこの世界に於いて人捜しを初めとした分野に長けた存在を使える状況にある」


 ソレは提案と言えた。

 異世界へ行かせる前に殺害したい本当の標的の名前と顔を割り出すべきではないか?そんな提案であった。

 その提案にジェーンはどうするべきか?思考を巡らせると、ラリーは追い討ちを掛ける様に問う。


 「ソイツはお宅か()()()()()にとって頭痛や胃痛の種なんだろうな……そんな野郎だけが逃げおおせちまったら、俺に皆殺しにさせても徒労に終わるだけかもな。まぁ、俺にはアンタの都合は関係無いんだがな……」


 ラリーの意見にジェーンは心の底から残念かつ、焦りと歯痒い気持ちを込めて答えた。


 「貴方の仰る事は合理的で無駄が無い。しかし、残念ながら其処まで悠長に出来る時間も無いのです」


 そんなジェーンの言葉を予測していたのだろう。

 ラリーはさも当然の様に提案する。


 「なら、こうしよう……俺はアンタの望み通りかつ予定通りに異世界へ赴き、依頼を進める。で、それと同時並行でブルーには標的を見つけ出させる……そうすれば、無駄無く時間を有効活用出来る」


 「良いでしょう。しかし、ソレで本当に私が最も始末したい標的を始末出来るのですか?」


 訝しむ様に尋ねるジェーンに対し、ラリーは自信タップリに答えた。


 「アイツ以上に地球上に存在する人間を捜し出し、ソイツの事を隠し事含めて全て暴き出せる(権力)を持った奴を俺は知らない」


 ラリーの専門家としての言葉を信用したのだろう。

 ジェーンは承諾する事を選んだ。


 「では、それでお願いします」


 そんな承諾の言葉が返ってくると、ラリーは確認の為に改めて問う。


 「アンタの依頼は34名……俺の知り合いの娘を除けば、33人。その全員を殺害しても良いんだな?」


 「それで構いません」


 ジェーンが肯定すると、ラリーは次の確認をした。


 「知っての通り、俺は正義の味方じゃない。だから、現地の住民が酷い目に遭っていても俺は仕事の一助になると判断した時以外では一切助けないし、必要と判断したら巻き添え被害(コラテラルダメージ)も出す……それでも問題無いな?」


 「構いません。任務最優先でお願いします」


 コラテラルダメージが出ても良い。と、ジェーンから言質を取れば、ラリーはニンマリと嗤った。


 「それは良かった。お陰で仕事が少しは捗りやすくなる……」


 「私としましては依頼が遂行されるならば、核兵器の使用も許容する方針です」


 ジェーンの告げた事にラリーは意外そうにしながらも、直ぐに納得する。

 だが、同時に疑問も覚えた。


 「成る程。お宅にとって、標的が始末される事が焦るほどに何よりも最優先事項って言う訳か……そうなると、お宅が形振り(なりふり)構わずに標的が死んで貰いたい理由ってのも大いに気になるな?」


 その疑問にジェーンが答える事はやはり無かった。

 しかし、ラリーはそれでも構わなかった。


 「俺はアンタの事情や都合には興味は無い。まぁ、好奇心が沸かないと言ったら嘘になるが……アンタが支援をケチらないのであれば、その好奇心は瞬く間に失せる。それだけは確約しよう」


 支援さえすれば、何も聞かない。

 そう告げれると、ジェーンはハッキリと確約した。


 「貴方が望む支援は可能な限りする事は確約致します」


 ジェーンからの支援を確約させると、ラリーは改めて依頼を引き受ける事を告げると共に報酬に触れた。


 「なら、改めて……この依頼を引き受けさせて貰う。アンタから貰う報酬だが……」


 報酬として何を要求するのか?

 ジェーンが耳を傾けると、ラリーは何故か言葉を留めた。


 「報酬として何を望むのですか?」


 言葉を留めたラリーに当然の様にジェーンが問うと、ラリーは答えた。


 「終わってから請求する。安心してくれ……アンタが顔を青褪める様なモノは請求する気は無い」


 ラリーが請求する報酬が何か?

 ジェーンは大凡の見当が着いていたのだろう。

 その要求を快諾した。


 「仕事が完了次第、支払う事を確約致します」


 ジェーンから快諾の言葉が告げられると、ラリーは話は終わった。

 そう言わんばかりに資料に目を通し始める。

 すると、ジェーンは立ち上がるなり言う。


 「其処には貴方が知りたいであろう情報が全て記載されている筈です」


 「その様だな」


 ラリーが資料に目を落としたまま素っ気無く返すと、ジェーンは「コーヒーをありがとう」そう言い残して消えた。

 その後。

 ラリーはぬるくなったコーヒーを啜りながら静かに資料を読んでいく。

 暫くしてマグカップが空になると共に一通り目を通し終えると、ラリーは資料を手に立ち上がって壁に赴いた。

 壁から掛けられたボードに資料を1枚ずつ貼り付け終えると、要点を見易い様にしたラリーは改めて資料を眺めながら整理していく。


 召喚を実行した国は勇者(34名の日本人)達に反旗を翻されて実権を奪われ、その国の王を介した傀儡政権となった。

 その後。勇者達は自分達に付与された強大な力を用いて一部の周辺国へ軍事的な侵攻をした。

 そして、侵攻した国々に傀儡政権を樹立する事を成功させ、傀儡政権を通して各地の資源等を吸い上げてる。と……


 「マジでダーイシュみてぇな連中だな……俺の知る日本人とはえらい違いだ」


 資料にある召喚された勇者達である日本の少年少女達が、10年ほど前に権勢を誇ったテロリスト集団の様な振る舞いをしてる事に呆れながらもラリーはある事に引っ掛かっていた。


 強大な力を獲たからと言って、ダーイシュのクズみてぇな振る舞いを率先してするもんか?

 俺の知る限り、日本人ってのは嘗められたら殺すって具合に仕掛けられない限りは穏やかに振る舞う。

 トヨタ社がヨーロッパの二枚舌共を殴り返した件が良い例と言っても良い。

 まぁ、国家を奪い取ったのが何かしらの理由で正当防衛した結果と好意的に捉えたとしてもだ。


 「その後があり得ねぇ……まるでタガが外れちまったかの様だ」


 国家を奪い取った件を差し引いても、その後の勇者達の振る舞いはラリーから見ても実に奇妙と言えた。

 だが、提供された資料にはその理由が一切記されていない。

 しかし、ダーイシュの如き振る舞いはフィルム式の写真と言う形で事実として告げられる。

 それ故にラリーは首を傾げてしまう。が、

直ぐにその疑問を仕事には無関係と判断し、考えるのを辞めた。


 どうでも良いな……

 どんな理由であれ、俺は俺の仕事をするだけなんだからよ。

 それに真っ当で善良な人間がモラルを投げ棄てるなんざ、ありふれてるし、珍しくも何とも無い。


 自分の仕事とは関係無い。

 そうして切り捨てたラリーは次の事を考えていく。


 資料の内容が確かなら、連中の大半が掌握した国。厳密に言うなら、その国の王城。

 其処に纏まってる。

 極一部……もとい、5人の少年少女は帰還の手段を捜し出す為に王城から去り、冒険者と言う形で探索しており、現在は不在。


 「彼女(ソフィア)の娘を巻き込まずに済むから助かる」


 実の娘に対し、他人行儀に好都合であると漏らしたラリーはどうすべきか?考えていく。


 標的の大半が王城に纏まって居る。

 その前提で計画を練るとしよう……

 王城は警戒厳重。

 標的達は日本のアニメよろしく強大な力を有してもいる。


 資料に記された内容が事実であるならば、標的達は警戒厳重な王城に居る。

 その上、標的達自身も日本の作品よろしく強大な異能を有しており、未知数でもある。

 それ故にラリーは正面から仕掛ける事を選ばなかった。


 正面から堂々と仕掛ける?

 リスクが大き過ぎるし、俺は其処まで自信家じゃない。

 つーか、仕掛けて大半殺れたとしても生き残りが出たら面倒臭い。


 汚れ仕事(ウェットワーク)の専門家としての観点から、正面から仕掛けるのは愚の骨頂。

 そう判断すると、ラリーはボヤく様に方法を口にする。


 「そうなると、ゲリラみたいにする方が良さそうだな……最初は流石に攻撃仕掛けて気を引かざる得ないのと時間が掛かるのが難点だけど」


 自分がやろうとする方法と、その方法の欠点を自ら口にしたラリーはその為に必要なモノをピックアップしていく。


 先ずは前哨基地と聖域の確保。

 後、連中の動向を知りたいから現地協力者も欲しいが……コレは高望みしない方が良さそうだ。

 それ以外なら武器と食糧、移動用の足に偵察用にドローンも幾つかあると良い。


 最低限必要なモノを脳内でピックアップすると、ラリーは作業台に赴いて置かれた図板とルーズリーフ。それにペンを取り、必要な品物を書き記していく。

 そうして必要な品物をリストアップすると、スマートフォンでリストを撮影してブルーへと送った。

 その後。

 ラリーが再び掲示した資料を相手に睨み合いをしていると、ブルーから返事が来た。


 「3時間以内に全て手配する。か……流石だな」


 ブルーと言う大物が自分のリストアップした品物をたったの3時間と言う短時間で容易く用意出来る事に対し、ラリーが流石と独り言ると、再びブルーからメッセージが届いた。

 その内容に目を通すと、流石に呆れるしか出来なかった。


 「本命であろう1名の絞り込みに成功。同時に関係していると思われる人物を4名、割り出しにも成功。それ以外は(無関係)。3時間後にフィルの店ね……あの野郎、ヤケに速く結果出しやがったけど、日本の行政にも手下仕込んでるのか?」


 昨晩別れてから24時間もしない内に見事な調査結果を出されれば、誰だって呆れてしまうだろう。

 それ程までにブルーと言う男の持つ力とコネクションは強大であった。

 だが、その御蔭で仕事が幾分かはマシになった。

 それ故にラリーは……


 「4人殺れば終わりなら、直ぐに終わりそうだな……」


 ブラックホーク・ダウン前の米兵達の様に呑気な様子で呟くと、夕食を取る為に出掛けるのであった。




本命の標的をブルーはどうやって割り出したのか?

コレを疑問に感じる人が居ると思う


方法は実に単純

召喚された生徒達の戸籍を調べ、更には件の学校に保管されてるクラスの面々に関する書類を精査

更には書類に記された卒業した各小、中学校から該当する生徒の情報を卒アルも含めてピックアップして照らし合わせていく

で、照らし合わせる中で書類の内容と合わない者をリストアップすれば本命と思わしき者達が自然と割り出す事が出来るっていうだけの話


言うのは簡単だけど、実際に短時間でやるのは難しいからな?

それこそ日本国内に相応の権力やら人手が無ければ、不可能だろ?ってくらいに

だけど、ブルーには日本国内に相応の権力を持つ取引先とも言えるコネがあった

だから利用し、短時間で割り出す事に成功したってだけの話


ラリーに関しては、邪悪な者達が跋扈する穢れに満ちた世界で長年生き続けている

だからこそ、ジェーンやジェーンの上司の真の狙いを言い当てる事が出来たってだけの話

この手の勘働きは積み重ね続けて得た膨大なデータによって裏打ちされてるからこそ出来る

じゃなきゃ、長生きは出来ない

ただ、それだけの事でしかないのよね

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