18年ぶりに
プロが確認を怠る訳は無い←
依頼が持ち込まれた翌日。
日本時間18時12分頃。
朝早くの便に乗り、20時間近いフライトを経て日本に降り立ったラリーは東京都内某所にある病院に来ていた。
中に入ったラリーは受付へ赴くと、パスポートを手に流暢な日本語で担当の者へ用件を告げる。
「私はサム・フィンリーと申します。此方に入院しているオルガ・パブロヴァナ氏に面会させて戴けますでしょうか?」
息をする様に偽名を名乗り、目的の人物とも言える彼女……ソフィア・ロストヴァが使っている今の名前を告げると、担当者は書類を差し出して来た。
その書類に自分の偽名と架空の住所を書き記して提出すると、面会許可は直ぐに下りた。
そうして面会の手続きを済ませ、目的の人物……ソフィア・ロストヴァの居る病室を知ると、ラリーは悠然と歩みを進め始めた。
数分後。
病室の前に立ったラリーは18年ぶりに会う彼女に対し、僅かな緊張感を抱きながら扉をノックする。
「どうぞ」
流暢な日本語で入室の許しが下りると、ラリーは静かに扉を開けて中に入った。
病室の奥にあるベッドで横たわる彼女……ソフィア・ロストヴァはラリーの顔を一目見るなり、驚きを顕にしてしまう。
だが、直ぐに優しい笑みをラリーに向けて浮かべた彼女は英語で尋ねた。
「18年ぶりかしら?」
「多分そんくらいだな」
素っ気無くロシア語で肯定したラリーが横たわるベッドの脇に椅子を置いて座ると、彼女は少し嬉しそうにしながら言う。
「死ぬ前に貴方と再会出来るとは思わなかったわ」
「奇遇だな。俺も同じ事を思った」
そう答えると、ラリーは早速と言わんばかりに本題を切り出した。
「君に娘が居ると聞いた」
「えぇ、居るわ」
警戒心と共に彼女が肯定すると、ラリーは更に続けて問う。
「なら、その娘が厄介な状況に陥ってるのも知ってるのか?」
「えぇ……娘が通ってる学校で集団失踪事件が起きた件ね」
ラリーの問いに沈痛な面持ちで肯定すると、彼女は心の底から乞い願った。
「お願い。あの娘を助けられるなら助けて頂戴……あの娘を救い出してくれるなら、私は私の生命も含めて対価を絶対に払っても良い」
彼女の必死な懇願に対し、ラリーは淡々と告げる。
「なら、俺が君に作った全ての借りを帳消しにしてくれ」
「え?」
ラリーの言葉に彼女は呆気に取られてしまった。
そんな彼女を気にする事無く。ラリーは本心から対価を要求する。
「君に対して大きな借りが幾つもある。だから、その借りを帳消しにしてくれれば俺はソレで良い」
ラリーの言葉に彼女は安堵すると、心から感謝した。
「ありがとう」
「感謝は要らない。俺は俺の都合で動くだけだ」
素っ気無い態度で告げると、ラリーは立ち上がって用が済んだ。
そう言わんばかりに部屋を後にしようとする。
そんな彼の背に向け、彼女は語り掛ける。
「貴方は、あの娘……エレナが自分の娘なのか?聞かないのね」
ラリーは振り向くと、真剣な面持ちと共に答えた。
「俺の娘か否か?そんなのは問題にすらならない。俺は君への借りを返す為に、君と君の娘であるエレナを再会させるだけだ」
そう答えたラリーは其処で言葉を一旦切ると、更に続けて言う。
「それにだ。例え、本当に君の娘が俺の娘であったとしても、俺は父親だって名乗る気は無い」
冷血。
または非情。
それとも両方か?
そんな答えが返って来ても、彼女……ソフィア・ロストヴァがラリーを責める事は無かった。
寧ろ……
「貴方の言う通りね。あの娘が貴方の娘だと知れれば、あの娘に災いが確実に振り注ぐ」
ソフィアも当時は自分も其処に居たからこそ、ラリーが未だに居続ける血腥く、悍ましい邪悪な者達が跋扈する世界を知っている。
だからこそ、ラリーが父親として名乗り出ようとしない事を理解し、納得もしていた。
そんな彼女にラリーは告げる。
「俺は俺の生命を引き換えにしても、君の娘を必ず助け出す。それまでに君はさっさと退院してくれ……それと、君は今も綺麗だ」
そう告げると、ラリーは別れの挨拶をする事無く病室を後にした。
独り残されたソフィアはラリーの言葉に安堵すると、同時。
少しだけ申し訳無い気持ちにもなってしまうのであった。
病室を後にして敷地の外へ出ると、ブルーの姿があった。
「18年ぶりに別れた恋人と再会し、自分に血の繋がった娘が居る事を知った気分はどうだね?」
「何も無いな」
ブルーの問いに素っ気無く返すと、ラリーはそのまま歩みを進めていく。
そんなラリーと並んで歩き始めると、ブルーは呆れ混じりに言う。
「ずっとそうかと思っていたが、君は人を心から愛した事が無いな?」
問う様にして言われると、意外にもラリーは否定した。
「他の女とも付き合ったりはした事はあった。だが、どれも上手くいかなかった」
ソフィアだけは特別だった。
そう取れる答えが返ってくると、ブルーは当時からずっと気になっていた疑問を尋ねる。
「それならば何故、君は18年前に君の前から姿を消した彼女を捜そうと思わなかった?」
ブルーが18年前からずっと、心から疑問に思っていた事を問えば、ラリーは正直に答える。
「あの時はどうするべきか?解らなかったし、俺の前から何も言わずに姿を消したって事は俺に愛想を尽かしたからと思った。だから、今までずっと捜そうと思わなかった」
ラリーが当時の事を思い出しながら正直に答えれば、ブルーは納得と共に次の問いを投げた。
「成る程。君なりの愛と言う訳か……さて、答えを聞くまでも無いのだろう。だが、敢えて聞かせて貰いたい。依頼を引き受けてくれるかね?」
ブルーの問いにラリーは肯定した。
「引き受ける。柄にもなく約束しちまったからな……」
「私は君のそう言う所が好きなんだ。冷血かつ非情でありながら、義理堅い面を持ち合わせてる所がね」
ブルーが好ましいと言えば、ラリーは抜け目無く要求する。
「そう言うんなら、手始めに俺への前金としてアンタへの借りを全て帳消しにしてくれ」
「喜んで支払おう」
「後、成功報酬は米ドルで2000万。俺独りでワンオペしなきゃならん以上、こんぐらい貰わなきゃ割に合わないんでな……」
ラリーがチャッカリと多額の成功報酬も請求すれば、ブルーは喜んで快諾した。
「良いだろう。君が完璧に成功させたら喜んで支払う事を確約しよう」
ブルーが報酬を快諾すると、ラリーは早速仕事の話を切り出した。
「俺は明日の11時過ぎに成田からの便でマイアミへ帰る。で、帰った翌日に打ち合わせをしたい」
依頼を引き受ける事を決めた以上、確実に成功させる為にも打ち合わせは欠かせない。
特に自分にとって未知の地域で作戦を進めるならば、尚更だ。
だからこそ、ラリーは依頼人であるジェーンとの打ち合わせを求めた。
「必ず伝えよう」
ブルーが受諾すると、ラリーは更に続ける。
「地球上なら何処が任地であろうとも何とか出来る自信はある。だが、そうじゃないなら現地に関するあらゆる資料が欲しいし、向こうの言語を学ぶ必要もある」
自分にとっての任地である異世界に関する資料を寄越せ。
そう告げれば、ブルーは当然の様に告げる。
「君が帰るまでに届ける様に必ず伝える」
「それと現地協力者も必要だ」
依頼を遂行する為に欠かせない要素とも言える現地協力者を要求すると、ブルーは難色を示しながら答えた。
「ソレも手配するように伝えるが、流石に地球上でないから私ではどうにも出来ん」
「後、現地の装いも用意させといてくれ……流石に地球のありふれた格好じゃ目立ってしょうがない」
「それも必ず伝えよう。他に必要な物はあるかな?」
ブルーの問いにラリーは告げる。
「其処は偵察してからじゃないと何も言えん。だが、軍隊を1つ賄えるだけの武器弾薬。それに爆薬を用意しといてくれ」
「完璧な状態で用意する」
さも当然の様にラリーの要求する品を用意する。
そう告げるブルーにラリーは「流石は大物様だな」そう返すと、その場でブルーと別れて最寄りの駅へと歩みを進める。
暫くして最寄り駅に到着すると、ラリーは慣れた様子で切符を買って改札を潜って駅のホームへと向かった。
その後は電車を乗り、JR上野駅で降りたラリーは駅を後にして直ぐ近くにある京成上野駅へと赴いた。
そして、快速特急の成田空港行きの電車に乗って空いている椅子に座ると、静かに出発を待つのであった。
本文にもあった様に血腥くて悍ましい邪悪な者達が跋扈する裏の世界の住人の娘と知れてしまったら、その娘に大きな災いが振り注ぐのが目に見えている
だからこそ、ラリーは娘を助けたとしても父親として名乗り出る気は無いし、認知する気も毛頭無い
つーか、実の娘にすれば産まれてからずっと姿を見せなかったオッサンが現れて父親面したら何様よ?なのと、
知り合いの居ない刑務所は無い様な人種のオッサンが父親って他所様に知れたらマイナス1145141919点やねん…
なので、互いの為にも親子関係ではない事にしとくほうが良いのである(世知辛い




