休みつつ分析を…
昼の戦闘で気付いた事から分析し、仮定したりしてるから大体サブタイ通り
ドローンとも言える使い魔を撃墜してから数時間以上が経過し、日が完全に沈んで夜が訪れてから暫く経った。
ラナウス王国と、シェルドンのあるレギウラム共和国。その両国を隔てる国境の双方に聳えるスパニスト山脈。
その夜の闇に埋め尽くされた中腹では、休憩の為に一時的ながらも夜営するラリー達は遅めの夕食に昼と同様にMREレーションを食べ終えていた。
食べ終えた後、夜の寒さに震える2人の為にラリーは温かいコーヒーを振る舞う事にした。
手始めに携帯シャベルで小さな穴を掘り、その中に隠すようにしてガソリン式のバーナーをセット。
それからバーナーの上に小さくも深いフライパンを置くと、その中に水をタップリと注いでバーナーを点火して温めていく。
そんなラリーの行動にロダンとビアーヌは当初は怪訝な表情を浮かべてしまうが、直ぐに理解すると共に納得する。
「成る程のう……地面の上で火を焚いたら目立っちまうから、周りからは見えん様に穴掘って煮炊きするんか。逃亡中の御尋ね者には良い方法じゃの」
「コレなら周りからは直ぐには見付からなさそうですね」
そう。ラリーがバーナーを掘った穴にセットした理由はロダンが言った通りであった。
現代の戦場ではサーマルとナイトヴィジョン。即ち、熱探知と暗視……その2つの技術の向上と言う観点から熱源を地面で発生させると、即座に敵に位置がバレてしまうと言う問題があった。
そうした問題対策の一環として穴を掘り、その中にバーナーの様な熱源をセットする。まぁ、効果はしないよりかは幾分かはマシ。
その程度でしかないが、裸眼による目視対策としてならば未だ充分過ぎる程に効果がある。
それ故に逃亡者でもあるラリーは穴を掘り、その中にバーナーをセットしたのであった。
そんな2人の感心を他所にお湯が沸けば、ラリーはその中にインスタントコーヒーを振りかけ、砂糖とミルクを加えていく。
程なくして温かいカフェオレが出来上がれば、ラリーは2人に振る舞う。
「温まるから飲んどけ」
素っ気ない言葉と共にカフェオレが差し出されると、受け取った2人は口を付けた。
「こりゃ美味い。しかも、甘いの」
「ホント、美味い」
温かいカフェインと糖分が齎してくれた効果は覿面と言えた。
そんな2人を他所にラリーはカフェオレを啜ると、最近慣れたばかりの気配が直ぐ側でした。
「私にも戴けますか?」
其処にはジェーンの姿があった。
そんなジェーンにラリーはカフェオレを振る舞うと、彼女は一口啜る。
そうして一息付くと、ジェーンはラリーが聞くよりも速く報告する様に告げた。
「例の裏切り者の処理は成功しました」
厄介な懸念事項が解消されると、ラリーは素っ気ない態度で返す。
「そりゃ良かった」
「貴方の戦果は此方でも確認しました。到着してから直ぐに9名も処理してくれて、ありがとう御座います」
ジェーンは感謝の言葉を述べると、更に続けて言う。
「さて、私は暫くの間は向こうで事後処理をしなければならなくなりました。申し訳無いとは思うのですが、当面は彼女……ビアーヌを私の代わりとして御使い下さい」
謝罪と共に一緒に行動しない事を事情を交えて告げれば、ラリーは興味なさそうに返す。
「別に構わないぜ」
「現段階に於ける詳しい情報は彼女から聴いて下さい。では、コレで」
ジェーンはそう告げると、カフェオレを飲み干してから闇の中へと消えた。
残されたラリーはビアーヌの方を見ると、改めて告げる。
「改めて、今後もよろしくな」
そう告げると、ラリーは済し崩し的に破綻した当初の計画を思考から放棄。それから直ぐに最新の情報を持つビアーヌに尋ねた。
「さて、ビアーヌ……君はジェーンの言う通りなら、現段階における最新の情報を持っている。合ってるかな?」
「はい」
肯定の意味を込めた返事が返って来れば、ラリーは早速と言わんばかりに情報の確認を始めた。
ビアーヌから齎された情報は宝の山と言えた。
だが、同時にラリーの仕事が非常に面倒臭くもなってしまった。
「城に残ってた勇者の一部が生活に飽きて外に出たのは面倒臭い展開だな」
そう。城に残っていた勇者の一部が城を出ていたのだ。
その為、纏めて片付ける事が出来ない状況となり、城にカチコミを掛けて皆殺しにすると言う手っ取り早い方法は水泡に帰してしまった。
しかし、幸いと言うべきか?王城には本命である標的……草薙と他数名が残っており、更には。
「私の伝手を使い、王城から出奔した勇者達の動きは確認して貰っています」
ビアーヌは自身が持つ伝手を利用し、王城から去った標的達である他の勇者達の居場所を掴んでいた。
その為、出奔した勇者達を捜す為の手掛かりが最初からある状態で狩りをスタート出来る。
そんな有用過ぎる報告をしたビアーヌに対し、ラリーは感謝してもしきれなかった。
「マジでありがとう。君のお陰で仕事が凄く捗る」
「コレが私の仕事ですから」
さも当然の如く当たり前の事をしてるだけ。
そう返したビアーヌは実に有能過ぎるスパイと言えた。
そんなビアーヌにラリーは指揮官として告げる。
「城を出た連中は後回しにする。先ずは王城内に残る本命を含めた連中から片付ける」
「ソレは構いませんが、宜しいのですか?」
現時点では、王城とその周りは厳戒態勢を敷いてるも同然。そう言える状況下であった。
そんな中で王城内に残る標的達を始末するのは些か無謀なのではないか?そう遠回しにビアーヌから問われると、ラリーはさも当然の様に告げる。
「寧ろ、こう言う時の方が都合良いんだ。人間、永遠に警戒し続ける事が出来るほど心がタフって訳じゃないし、集中力が持続出来ない」
「それは解ります。しかし、今は厳戒態勢で警戒してる期間と言わざる得ないと思うのですが?」
キチンと自分の意見を進言し、今は早計である。そう告げるビアーヌにラリーは答える。
「敵は壮大な計画を立案する技術は高い。だが、同時に戦略や戦術に関しては素人と言わざる得ない面もある」
ラリーが敵を素人と断じると、今まで静かに耳を傾けて居たロダンが尋ねた。
「どう言う事じゃ?」
「幾ら想定の範囲外とは言えだ。敵は地の果てまで俺達を追跡しようとする気配が無かった」
ラリーの答えにロダンは呆れてしまう。
「そりゃ、お前さんの機動力がデタラメ過ぎるからじゃろ?」
若い時代に於いて時速数十キロオーバーで駆け回る事が可能な自動車は、ロダンの言う通りデタラメ過ぎる代物だ。
特に悪路を想定して造られたハンヴィーの様な軍用車ならば、尚更デタラメ過ぎる。
何せ、燃料があって完璧に整備されていて、道さえあれば、極論として運転手の体力と集中力次第で時速数十キロで何処でも走り回れるのだ。
馬や徒歩等が基本的な移動手段である世界ならば、デタラメ極まりないチートと言っても良い。
そんなチートとも言える機動力を用いて逃げられたのだから、追跡は無理。そう返したロダンに対し、ラリーはさも当然の如く言う。
「勇者共は本来なら、昼の徒歩の段階でありったけの戦力を差し向け、被害を度外視して逃げる俺達を地の果てまで追い回すべきだった。ソレが対ゲリラの鉄則なんだからな……」
「ゲリラ?なんじゃそりゃ?」と、漏らして首を傾げてしまうロダンと同じ様に聞き慣れぬ言葉を聞いて首を傾げるビアーヌに対し、ラリーは質問を投げた。
「例えばだ。君達が兵を率いる指揮官で盗賊達を討伐する事になったとしよう……盗賊達が攻撃を仕掛けてきて、攻撃の後に逃げたらどうする?」
そんな質問に今度はビアーヌが答える。
「そうですね。私の知る勇猛な指揮官ならば、状況が許す限り追い回します」
「つまり、そう言う事だ」
ビアーヌの答えが正解と言わんばかりに返すと、門外漢のロダンが理由を尋ねる。
「どう言う事じゃ?」
問われると、ラリーは説明する為に敢えて問い返した。
「盗賊達をその場で逃がしたら、暫くは見付からないだろ?」
その問いにロダンは肯定する。
「そりゃ見付からんじゃろうし、河岸を変えてヤマを踏みもするじゃろうな……」
「つまり、その時点で逃がしたらその後に見付けるのは困難と言う訳だ」
「成る程。つまり、盗賊達の様に逃げおおせる前に儂等を追い回すべきだった。そう言う事かの?」
「そうだ。だが、それだけじゃない」
ラリーが他にも理由がある。そう返すと、今度はビアーヌが尋ねる。
「と、言いますと?」
「裏切者から俺と君達と、少数なのを聞かされ、敵は既に知ってる状態だ。つまりは、被害覚悟で数の暴力で踏み潰せば俺達を殺せる可能性が高かったのに、何故かソレをしなかった」
聖域へ未だ逃げていないゲリラとも言えるラリー達を始末するならば、数の暴力に任せて休む暇を一切与えずに追い回して攻撃をすれば良いだけの話であった。
自分達が国家を1つ丸々掌握し、軍隊も利用出来る状態ならば、兵士達を全て捨て駒として差し向ければ良い。
しかし、敵はソレをしなかった。
ラリーがそう語ると、ビアーヌは疑問を呈する。
「貴方の魔法を用いない強大な攻撃ならば、軍が差し向けられても殺し尽くす事が出来るのではないのですか?」
ビアーヌが尤もな疑問を呈すると、ラリーは意外にも無理。そう返した。
「流石に無理だ」
「どうしてじゃ?」
ロダンが訳を問えば、ラリーはアッケラカンに返した。
「詳しい説明は省くが、俺の武器には使用回数に制限がある。そんな使用回数に比べて敵の数が多かったら、1人1回として計算しても足りないだろ?それに君の言う強大な攻撃は準備に時間が掛かるんだ」
銃はラリーの様な高度な訓練された者が扱えば、脅威的なのは事実だ。
勿論、膨大な数のゾンビ達を跡形も無く消し飛ばしたIEDの様な爆弾も強力過ぎる程に脅威なのも事実。
だが、其れ等はフィクションと違って無限ではないし、ボタン一つで仕掛けられる訳でもない。
例え、幸運にも残る全てのIEDとクレイモア地雷をセットする準備時間があり、迎え撃ったとしても、何れは弾が切れる。
そんな詳しい説明を省いた簡略的な答えを2人は理解し、納得してくれた。
「成る程のう。弾が尽きれば、戦えんと言う訳なんじゃな?」
「そう言う事だ。まぁ、他にも俺は普通の人間だから疲れもするし、腹も減るし、喉も渇くってのも大きな理由だけどな……」
補足する様に疲労と言う当たり前過ぎて気付かない点も挙げれば、2人は敵が戦略や戦術の素人である点の根拠としても納得してくれた。
「つまり、標的は貴方を殺れた唯一のチャンスを逃した。と、言う事ですか?」
「そう言う事だ。とは言っても、俺の方もどう仕掛けるべきか?頭を悩ませる羽目になってるから、敵の事は言えんけどな……」
標的達を複数始末する事に成功した。
しかし、必要だったとは言え、標的達の居る王城から果てしなく遠くへ逃げる羽目になったのも事実。
ラリーの立てた当初の計画は破綻してしまったと言えるだろう。
それ故にラリーは計画を練り直す必要に迫られていた。
だが、ラリーは未だ幸運の女神に見限られた訳じゃない。
「さて、話を戻そう。敵は戦術や戦略の素人なのが救いだと俺は言ったな?」
「えぇ、言いました」
「しかし、流石にバカじゃない。敵は恐らくだが、カネにあかせて俺達に殺し屋を差し向けるのが目に見えてる。下手をすれば、教国にも仲間が居て、俺が神の遣いを名乗る背徳の異端者と言うレッテルを貼って、俺を殺させる様にもする可能性が高い」
ラリーが突拍子もなくスケールの大きな事を言えば、ビアーヌとロダンは流石にあり得ないと思ってしまう。
「殺し屋は解りますが、異端認定させると言うのは流石にあり得ないと思います」
「そうじゃ。流石にそりゃありえんわ」
そんな2人にラリーは「だと良いんだけどな」そう返すと、話は一旦終わり。そう言わんばかりに沈黙すると、思考を巡らせていく。
フィクションだと、大概はランダムに召喚される。まぁ、都合の良く条件を満たした者達を召喚というのもあるんだろうが……
兎に角だ。標的達は自分達が召喚される様に何らかの工作をして、まんまと成功させた。
そんな壮大な計画を成功させられる連中が地元の有力者を仲間にしていない?
俺に言わせれば、あり得ない。
恐らく。否、間違いなく発言力の最も強い教国内にモグラとも言える仲間を仕込んでる。
その仲間が今、教皇をしていても俺は驚かんね。
歴戦のスパイとして、悪辣な謀略を数え切れない程に見て、更には実行して来た。
そんなラリーだからこそ、本命の標的である草薙なる人物は教皇内にもモグラを仕込んでる。
そう確信していた。
確信しているからこそ、ラリーは立ち上がると、空に向かって語り掛ける。
「ジェーン。聞こえてるんだろ?教国内に草薙の手下が居る可能性がある。アンタの都合が良い時で良いが、出来れば早急にソイツを見つけ出して処理してくれ……じゃなきゃ、俺は世界中から指名手配されながら仕事する羽目になっちまう」
この場には居らぬ。
だが、聞いてるだろう事を確信しながら要求すれば、長時間の運転で疲労した身体を癒す為にカフェオレを飲み干していく。
そうして休息が済めば、ゴミを掘った穴に埋めて隠してから荷物を纏める。
程なくして支度が済むと、ラリーは暗視ゴーグルを嵌めて夕食前に整備したMk18を手に歩き出せば、2人を連れて闇の中へと消えるのであった。
敵が有能な司令官や参謀居るんなら、昼の時点で軍を総動員してありったけの兵で森を包囲して被害度外視で数の暴力を以てラリーに休む暇を一切与えずに延々と追い回すと共に攻撃し続けてた
だが、ソレを何故かしなかった
だからこそ、ラリーは敵が戦略や戦術に関しては素人じゃね?と、仮定した
因みに対ゲリラで見付けたら地の果てまで追い回すに関しては、
韓国の軍神にして守護神でもあるホワイティこと白善燁将軍も損害度外視で追い回し続けろと仰られてる
更に付け加えて言うならば、ラリーが大戦力で踏み潰すべきと言った根拠として…
「例え相手が少数のゲリラであっても、圧倒的な大部隊で攻撃して、ぐうの音も出ないぐらいに徹底的に撃滅する必要がある。そこまでやらないと、ゲリラはまたいつかは息を吹き返す」と言うのもある




