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この見合いなんとしてでも阻止します  作者: hayama_25


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第4話

「わたし」


私もあなたと同じ。そう言いかけた言葉が、彼の声にかき消された。


「でも、今は貴方に会えて良かったと思います」


彼の表情が、ふっと優しくなった気がする。


「え、」


声にならない声が漏れる。

言葉が出ない。頭が真っ白になる。


計画が崩れていく音が、心の中で響いている。


私は嫌われるためにここに来た。


なのに、彼の反応はあまりにも穏やかで、まっすぐで、


私の演技が空回りしているような気がした。


「出会った日にこんな事を言うのはおかしいかもしれませんが…」


彼の声が、静かに空気を震わせた。


低くて落ち着いたトーン。


まるで、何か大切なことを伝えようとしているような、そんな響き。


私は息を飲んだ。

指先が冷たくなる。


嫌な予感がする。


彼の目がまっすぐで、逃げ場がない。


「っ…」


彼の言葉が続くのが怖い。

何を言われるのか、予想できない。


けれど、逃げることもできない。


「結婚しましょう」


その言葉が、まるで爆弾のように落ちてきた。


静かなレストランの空気が、一瞬で凍りついたように感じた。


耳が熱くなり、心臓が跳ねる。


「け、結婚!?」


声が裏返った。

彼の表情は変わらない。


まるで、当然のことを言ったかのように、静かに私を見つめている。


婚約でもなく、付き合おうでもなく、いきなり結婚!?


そんなの、いっちばん駄目!


こんな女嫌だって思わせるために、


わざと遅刻して、わざと失礼な態度を取って、わざと変なことばかり言ってきたのに。


「はい」


彼は静かに、でも確かに頷いた。

その目は揺れていない。


冗談だと笑ってくれればよかったのに。

なのに、彼は本気だった。


どうしてそんなふうに言えるの?

私なんかに。こんな女に。


まるで、すべてを見透かした上で、それでも私を選ぶと言っているようだった。


もっと引かれないとだめなのか。

もっと酷いことを言わなきゃいけないのか。


もっと、もっと、嫌われなきゃ。

「私は、別にそんなつもりでここに来たわけじゃないわ。…ただ貴方がイケメンだったから、興味本位で会いに来ただけ。わ、私、イケメン好きで男好きだから」


言いながら、自分でもイタすぎて泣きそうになる。


自分で男好きなんて言う人、聞いたことない。しかも初対面で。


メンタルが崩壊寸前。


でも、ここで引き下がるわけにはいかない。


彼の反応を探るように、ちらりと視線を向ける。


もし眉が動けば、作戦成功。

けれど、彼はただ静かに微笑んでいた。


「ははっ。自分の事を一度もイケメンと思ったことは無いけど、今、生まれて初めてイケメンで良かったと思います」


くっ、なんだその眩しい笑顔は。反則だ。


そんな風に笑われたら、こっちが恥ずかしくなるじゃない。


しかも、まるで私の言葉を肯定してくるなんて。どうしてそんなに余裕なの。


「私、まだ結婚する気はないわ。いや、結婚自体するつもりもない」


言いながら、胸の奥がじくりと痛んだ。


こんな風に冷たくあしらわなくても…。

いや、そう言わなければならなかった。


彼のまっすぐな言葉に、心が揺れてしまったから。


このまま流されてしまえば、嘘をついている自分が許せなくなる。


だから、強く言い切った。

目を逸らさずに、彼の瞳を見つめながら。


けれど、手のひらにはじんわりと汗が滲んでいた。


自分の言葉に、自分が傷ついているのが分かった。


「どうして?」


彼の問いは、静かだった。

責めるでもなく、詰め寄るでもなく。


ただ、知りたいという純粋な気持ちが込められていた。


言い訳でも、嘘でもいいから、何かを言わなければ。


「男を一人に縛るなんて出来ないから。だからっ、」


言葉が震えた。


そんなこと、本当は思っていない。


むしろ、誰か一人に大切にされたいと願っている。


でも、それを認めてしまえば、今までの自分が崩れてしまう。


私より素敵な人なんて、いっぱいいる。

社長の横を堂々と歩ける人がきっといる。


私なんかにこだわらなくたって、選び放題なんだから。


だから、お願いだから、潔く諦めてよ。



「心配しないで。俺しか見えないように夢中にさせてあげますから」

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