プロローグ
バイト先の店に向かっている絵梨花は、道中で知らない女が肩をぶつけてきたので舌打ちした。
店に着くと、絵梨花は新人のバイトなので、仕事にもそこまで慣れておらず落ち着かない。シフトを火曜日と金曜日の放課後に入れたのは、所属するテニス部の日程と重ならないようにするためだった。
次の日。土曜日だから学校は休み。父母弟と共に家族4人揃って遊びに出掛けた。絵梨花はもう高校二年だが、年頃の中学の時でもこういう家族とのコミュニケーションは厭わず続けていた。ただ絵梨花は最近、自分だけ家族の輪に入って行けていないと感じることが多くなっていた。それは5個下の弟がまだ小学生だからというのもあるのだけれど。
学校がある日の絵梨花は、昔から真面目な性格なので授業は真面目に受けるし、それ以外の時間は、何人もいる友人たちと話すことが楽しい。
テニス部ではそこそこ上手いのだが、部活の雰囲気に馴染めないので、やめてしまおうかと考えていた頃だった。
そして火曜日はいつも通りバイトがあるが、初心者なのもあって異常者の客に間違えたものを提供し怒鳴られた後、深く謝罪したもののバイトリーダーらにもきつく注意された。勿論傷ついたが、こんなことで折れていてはやっていけないので早く立ち直ることにした。
バイト帰り、もう日は暮れて暗かった。駅の近くの駄菓子屋に寄り道した。何も買わずに帰った。