【1分小説】トイレの犯罪者
ガチャガチャガチャ
「ふぅ〜今日も疲れた〜」
扉を閉め、鍵を閉める。
ガタガタ
「ん?」
トイレから大きな音がした。
恐る恐る扉を開けると。
「あ、こ、こんにちは……」
女が顔をヒクつかせて立っていた。
「誰ですかあなた……?」
僕は逃げる準備をしながら聞く。
「すみません!! 通報しないで下さい!!」
女は必死に何度も頭を下げる。
「……何しに部屋に入ったんですか」
「ごめんなさい泥棒ですごめんなさい!!」
「大きい声を出さないでください」
「ごべんなざぁいぃ……」
遂には泣き出してしまった。仕方なく、涙が零れないように顔を拭いてやる。
「ほら、もう泣かないで下さい。通報しないので早く出て行ってください」
「本当ですかぁ!!」
女は泣きながら手を掴んでくる。
「だから、大きな声を出さない、泣かない」
キツく言う。
「ずびまぜん……」
僕はトイレを出て、部屋に入る。
「……あのぉ……」
「今度はなんですか」
振り返る。今更ながらに気づき、女に詰め寄る。
「この服……!!」
「ずびばぜん……女性物の服、お借りしまじだ……着るものがなくでぇ……」
「はぁ……僕の上着あげるので脱いで下さい」
「ずびばぜん……」
僕はある音に急いで振り返り、女の手を掴んでトイレに駆け込む。
「あ、あの……」
話そうとした女の口を掴む。
ガチャ
「ふぅ〜疲れた〜あの人今日もめっちゃ見て来て怖かったなぁ〜」
家主が、帰ってきた。
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