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アンゴルモア  作者: 保坂星耀
鏡は胸に花を抱く
3/11

 バス停へ向かうりりの背中が小さくなるまで見送ってから、志朗はすぐ側の路肩に停まっていた青いクロスカントリーSUVの車内を覗きこんだ。運転席には二十代後半と見える男が一人座っている。志朗が軽く窓を叩くと彼は手元のパネルを操作して助手席の鍵を開けた。遠慮なくドアを開けた志朗が助手席によじ登る。扉が閉まるのを待ってから、男は心もち頭を下げて言った。

「お疲れ様でした、(ひな)(ぎみ)。いかがでしたか?」

「うん? いい子だった」

 携帯端末を操作して画像ファイルを立ち上げながら志朗が答えると、男は微苦笑のようなものを唇に浮かべた。

「雛君のいい子は信用できません。目的は聞き出せましたか」

「人捜し。相葉瑠々の鏡像をやってたのが、彼女がいなくなったもんだから探しに出てきたんだそうだ。消えかけてたから()()をやってきた。()()はしてないから安心しろよ」

「どうだか」まったく信用ならないと肩をすくめて表してから、男はシフトレバーを操作した。足の長さを持て余すようにしながらアクセルを踏む。いまだ赤く燃えている西の空からの光が男の丸みを帯びた顔を柔らかく撫でた。

「あなたときたら怪異皆兄弟が信条ですから。中学の頃を覚えていますか。すっかり人気が下火になってやけっぱちになって子供を襲いまくっていた口裂け女を連れてきて、あなたなんて仰せになりましたっけ。私は一言一句覚えていますよ。『ちょっと困ってたから泊めてやることにした。大丈夫、いい奴だから』なんて仰って、結果どうなりましたっけ?」

 男の笑いを含んだ問いかけに、志朗はむっと唇をとがらせた。うるさいという言葉の代わりのように男へ携帯端末の画面を突きつける。

「これが相葉瑠々の顔。今度、一緒に探すことになったから」

「もちろん、承知していますとも」と、男はさっと画面へ横目を走らせながら言った。

「なに、その言い方」

「困っている怪異となにも約束しておいでにならなかったら、むしろ正気を疑います」

「あっそう!」志朗はますますむくれて後頭部を背もたれにぶつけた。ヘッドレストまでは身長があまりにも足りないので届かないのだ。「じゃあ、弓ちゃんは来なくていいよ。これまで迷惑かけて悪かったな! 俺一人で行くから、どうぞ悠々自適の土曜日をご存分にお過ごしください!」

「それはそれで困ります。雛君は目を離すとどこでどんな輩とつるむかわからないんですから。あと、その弓ちゃんというのはいい加減よしてください」

 言われた途端「弓ちゃん、弓ちゃん」と唱え始めた助手席の少年に、男――弓月(ゆづき)真臣(まさおみ)は困ったような嬉しいような笑みを目元に浮かべた。

「けれども、どうでしょう。見つかるとお思いですか」

「一応、いろいろ聞いてまわるつもりだけど。難しいと思うか?」

 携帯端末に映るりりの笑顔を引き延ばしたり、逆に小さくしてみたりしながら志朗が言った。そうしているとまったく拗ねた幼子である。

「怪異が消えかかっているということは」弓月は答えた。「おわかりでしょうが、人間がその怪異を想像しなくなったということです。忘れたのか、ほかに興味を寄せたのか、理由は様々あるでしょうが一度消えかかったものがもとに戻る可能性は共通して極めて低い」

「人間が怪異を認識した場合を除いて、だろ」

「そうです。一度認識したものを忘れることは困難ですから。ともかく、理由は様々だとしてもです。人間側がとても幼い場合を除いては、答えはひとつかと」

「相葉瑠々がいなくなったのは今年の四月だ。それからこの七月までけっこうな日にちが経ってる。そして、りり――鏡の怪異につけてやった仮名なんだけど、あいつがいたのは相葉瑠々の家の洗面所だ。それ以外の場所には行ったことがなかったそうだ。例えば、相葉瑠々が家から長いこと離れたせいで、もう一人の自分に関する想像を忘れてしまった可能性は? ゼロとは言えないよな?」

「それはそうですが。十七歳では自我が定まりすぎています。相葉瑠々がまだ生きているのだとしたら、むしろ彼女が今暮らしている場所に怪異が移動するほうがよほどあり得ることかと。ちなみに、りりでしたか、その怪異にこのことは?」

 志朗は「誤魔化した」と呟くように言った。弓月が頷いた。

「それで良かったと思います。怪異相手に下手なことは言うべきではありません」

「そう言うと思った。あの子はそんなタイプじゃないと思ったけどさ」

 くすっとどうしようもない子を慈しむように笑みこぼして弓月はハンドルを切った。

「ですから、あなたのそれは信用ならないんですって」




 翌日の木曜日も、りりはきちんと登校していた。八千原志朗と話してから気が逸るような気分にはなっているが、下手に動いては肝心の土曜に差し障るだけである。もちろん、結果次第では考えなければならないだろう。しかし、とりあえずあと二日は相葉瑠々として完璧に振る舞っておくつもりだった。といっても、特段の用事でもないかぎり話しかけてくる人間はいない。八千原志朗とも朝の挨拶をしたきりで、それを除けばいつも通り、変化らしきものはなにもなかった。

 少しの変化があったのは昼休みのことである。弁当を食べ終わり――もちろん一人でだ、次の授業まですることもないのでなんとなく黒板を眺めていたら後ろから声をかけられた。それも通常の呼び声ではない。なんとなく周囲をはばかる響きのある、それでいて今にも弾けてしまいそうな活力に満ちた声だった。上半身だけで振り返ると、たしか加藤と宮下、田茂といっただろうか、いつも三人でひとかたまりになっている女生徒たちが小走り気味に近寄ってくるのが見えた。彼女たちはそのままりりが座る席の三方を取り囲み、

「ねえ、昨日どうなったの?」

 と、顔中に笑顔を浮かべて囁いてきた。この口火を切った少女が田茂だったか、ともかく三人組のリーダー格である。少女たちが全員、意味ありげな顔で笑っているのを確かめてからりりは首を傾げた。

「昨日? なんのことだかわからないわ」

「またまたぁ」と、りりの左肩を叩いたのが加藤だったはずだ。

「八千原よ、八千原。どうなったの?」

 加藤のあとを引き取った田茂が身を乗り出してきた。どうなったと言われても、まさか人間だ人間じゃないとか、本物の瑠々がどうとかいう話をするわけにはいかない。少なくとも今は、りりは瑠々でなければ困るのだ。言葉に詰まっていると、残る宮下がしたり顔で腕組みをしていった。

「まさかだったよね。だって、あの八千原でしょう?」

 表情の意味も言われている内容も理解しかねる。あの八千原とはどの八千原だろう。昨日話した彼以外の八千原がいるのだろうか、と困惑しながら渦中の人物を伺ってみたところ、教室前方の窓際にある自分の机に突っ伏して――たぶん昼寝をしているのであろう、こちらの話に気づいた様子は微塵もなかった。

「いっつも一人だし、話しかけても乗ってこないし、喋ったと思ったら塩対応だし。それがさあ、びっくりしちゃったよね」

「で、どうだったのよ」加藤がりりを肘でつついてきた。

「どうって……」

 りりは必死に考えた。こういうとき、どう言えば瑠々っぽいのだろう。そもそも彼女たちの話には要点が欠けているように思えるのだが、普通の人間なら今の内容だけで正しい受け答えができるのだろうか。迷いに迷った末「別に普通よ」と答えた途端、その言葉尻に噛みつくように田茂が言った。

「普通って?」

「ええと、だから……普通にお話ししただけよ」

「八千原と? 普通に?」

「ええ。普通に、その、優しかったと思うわ」

「優しいってなにー!?」

 きゃあと悲鳴をあげた加藤がくねくねと妙な具合に体をひねる。それを見た宮下がニヤリと笑った。

「なにってナニでしょうよ」

「ナニってなんなのー! あたしわかんなーい!」

 ひゃああと加藤がさらに叫ぶ。わからないのはこちらのほうだとりりは思ったが、余計な口はきくまいと黙っておいた。代わりのように田茂がふうんと言った。

「あいつがねえ。で、相葉さんはどうなのよ」

「どうって?」

「相葉さんさえよければー、あたしらいい方法知ってんだー」

 加藤はにたにたとりりの様子を伺っている。田茂がさらに身を乗り出してきて、片手を口の横に立てた。瞬間、なにか油のような悪臭がしてりりは思わず身を引いた。構わず田茂は距離を詰めてくる。

「けっこう効くらしいからさ。必要だったら言ってね」

「効く?」

「そう、おまじない。相葉さんだから教えるんだからね。男子には絶対秘密。叶わなくなっちゃうんだってさ。いい?」

 なにがなんだかわからないながら頷いたりりを確認すると、三人は来た時と同じように小走りで行ってしまった。いったい、なんの話をされていたのだろう。しばらく会話を覚えているかぎり頭の中で捏ねまわしてみたが、五時限目の鐘が鳴っても答えらしいものは見つからなかった。まあ、瑠々じゃないと見抜かれたわけじゃない。とりあえずいいということにして、りりは教科書とノートを揃えて机に置いた。




 土曜日の駅前は平日以上に混んでいると思う。駅を出てすぐの道はバス通りになっているので車を横付けというわけにもいかず、適当な駐車場に弓月を残して一人で歩いてきたのだが、志朗は早くも後悔し始めていた。綺麗な服をまとった人間が駅やらその隣のモールやら連絡通路やらから絶え間なく出入りしていて、しかもその間を塗って生暖かいガスをまとったバスがやってくるとあっては、肌にまとわりつく暑さは並ではない。風はさっぱり凪いでいる。出がけのニュースで最高気温更新だとか言っていたか、実際にじりじりと太陽に焦がされてフライパンの中の炒り豆になったような気分だった。これだったら学校前集合にして車移動としたほうがよほど優雅に過ごせただろう。小さい背をいっぱいに伸ばして人混みを見渡す必要もなかったと思えば、つくづく後悔が湧いてくる。

 りりが来るまで二十分は待っただろうか。盛大に遅刻をかまされたわけだが、そこに関して怒るつもりは志朗にはなかった。むしろ慣れない人間暮らしと締めつけのきつくなったという家庭環境を気の毒に思っていたくらいである。

「ごめんなさい!」

 改札から走ってきたのだろう、りりはワンピースの背中を早くも汗で塗らしながら深々と頭を下げた。肩からは細い紐で吊られた、一体全体ポケットティッシュとハンカチ以外のなにが入るんだか永遠に謎の小さなポシェットがぶら下がっている。足下はミュールというのかサンダルというのか、これまた志朗にはさっぱり違いがわからない、ヒールのついた靴だった。真面目に人を探して歩きまわる気があるのか謎な出で立ちだったが――踵はすでに皮が剥けて真っ赤になっていた――これもまた志朗は良いように解釈した。頑張って普通の女の子らしい格好を心がけてるんだな、大変だろうなあ、という具合である。

「大丈夫。それより、そっちこそ大丈夫か?」

 そう言って志朗が皮の剥けた踵を指さすと、りりはちょっと顔をゆがめて頷いた。その拍子に額に浮かんだ汗が一筋、目の横を伝って落ちていく。

「大丈夫よ。ありがとう」

「そう。じゃあ、駐車場まで行こうか」

 先導して歩きだした志朗に並ぼうとしたりりだったが、人混みに圧されてよろめいた。通行人は右も左もなく、好きなところを好きな方へ歩いている。「大丈夫?」とまた志朗が言ったので、りりは頷いて強引に人並みを割った。

「今日はどうするの?」

「まずは聞き込みだな」

「そう」と呟くように答えたりりを振り返って志朗は笑った。

「がっかりした?」

「え? そんなことは……」

「いいって。もっと画期的な方法を使うんじゃないかって期待してたんだろ。そりゃ、俺だって映画の陰陽師みたいに紙を飛ばしてそれを追うだけ、みたいな方法が使えたら格好いいと思うけど。残念ながら、基本は足なんだ。まあ、お前にとっては意外な足になりそうだけど」

 そう言ってぐるりと周囲を指さした志朗をりりは怪訝そうに見た。まあまあといなして志朗はビルの横っ腹に空いた細い通路を通ってバス通りをあとにする。周囲を見渡しつつりりが後に続いた。なにか肉の焼ける香ばしい匂い、『占』の文字が赤く染め抜かれた白布、錆だらけの郵便受けが一個の塊になって口を連ねている。十歩も行けば通路は終わって、そこは再びの日なただった。うんざりした顔で志朗が頬を拭い、後ろでりりも額を拭った。

 真っ白に光ってさえ見える道路に従って五分ほど歩いた先で志朗は足を止めた。車を一台停めればそれで満車になってしまう小さな駐車場があり、そこには青いクロスカントリーSUVが停められている。その後部座席を開けてりりを乗せると、志朗は助手席に乗り込んだ。

「こいつが応援」と、志朗は運転席に座った弓月を示して言った。「心配しなくてもご同類だから。お前の事情も話してある」

「ご同類? 八千原君の?」

「いいや、お前と同じ」

 言われたりりは目を丸くして弓月を見つめた。弓月は腰から体をひねってりりに向き直ると丁寧に頭を下げる。慌ててりりも頭を下げた。

「はじめまして。弓月といいます。志朗様から話は伺っています」

「は、はじめまして。相葉瑠々……じゃなかった、りりといいます。あの、あなたも鏡から出てきたの?」

「いえ、私は忘れ犬です」弓月は笑って答えた。「と言ってもお若い方には伝わりませんか。猫又だとか鵺だとか、そういった種類のひとつだと思って頂ければ」

「犬?」ぽかんとしてりりは言った。まじまじと弓月を見つめる顔には、どこからどう見ても人間の男にしか見えないと大書してある。頭の中ではこれまでに見た四つ足が飛び交っているに違いなかった。

「若作りしてるけど、これでけっこう歳が行ってるんだ。おかげで人間のふりが上手いってわけ。ええとつまり」りりがなおも目を瞠っているのを見て志朗は付け足した。「お前みたいに最初から人間の姿をしてたんじゃなくて、本当の姿は想像通り犬なんだよ。今は人間に化けてる。こう言えばわかるか?」

 なんだかまだ納得できない顔をしながらもりりは頷いた。穴が空くほど見つめられている弓月は苦笑いしている。志朗がその横顔に「まあいいや、出して」と言った。

 車の通りが多い道に苦労しながらSUVはバックして、そこからはなめらかに走り始めた。りりはどこか不安そうに行く手を眺めている。

「それ、相葉瑠々の服?」

 前を見つめたまま志朗が言った。りりはハッとしたような顔になり、パチパチと瞬きをしてから答えた。

「そう。前に瑠々が着ていたのを真似してみたの。変じゃない?」

「別に普通だと思う。家でもそうしてる? つまり、相葉瑠々の真似をずっとしてる?」

「ええ、いろいろ考えたけどそのほうがいいかと思って。瑠々が戻ってきた時、簡単に入れ替われるでしょう? 八千原君みたいな人がいるって知ってたら違ったと思うけど」

「例えば?」後部座席をちょっと見て志朗が首を傾げた。

「最初に会ったのがそういう人だったら打ち明けてたと思うわ。私、最初から行き当たりばったりだったから。ねえ、どうして私が人間じゃないってわかったか、訊いてもいいかしら」

「どうしてって、うーん、なんとなくだな。ほら、同じアジア人でも顔を見れば日本人かそうじゃないかわかるだろ? そんな感じ」

「……ごめんなさい。言っている意味がわからないわ」

 ええっと言って志朗が唸り始める。くつくつと笑いながら弓月が横から言った。

「男女の区別がつくようなものです。同じズボンを履いていても、顔を見ればなんとはなしに性別がわかるような。あんな感じを想像すればいいでしょう」

「そうそう」と志朗が指を鳴らした。「中にはおっさんぽい女もおばさんぽい男もいる感じでさ、どっちかなって考えることはあるけど。それでも大概は当たる。そうそう外さないかな」

「あなたみたいな人間は多いのかしら? ほら、もしそうだとしたらその人ともちゃんとお話ししておかないといけないでしょう。瑠々が困るのは私も困るもの」

「うちの学校だと俺以外知らないな。場所によってはそういう奴のたまり場みたいになってるとこもあるけど、お前の移動範囲ならほとんど考慮しなくていいんじゃないか」

 と言ってから、志朗は自信なさげに目を泳がせて多分と付け加えた。多分、とりりが繰り返す。

「可能性は低いとは思うんだよ。俺は怪異はわかっても、それ以外はからっきしだからさ。断言してやれないんだ。ごめんな」

「そう、それじゃ当面は気にしないでおくわ。でも、不思議ね。だとすると、どうしてあなただけが見分けられるのかしら。生まれた時からそうだったの? それとも、なにかきっかけがあったの?」

 それはと低い声で言い、志朗は鼻を鳴らした。

「特別運の悪いガキだったからさ」




 車がようやく停まったのは瑠々の家がある住宅街の端だった。似たような形の家が道路に沿って立っており、その道路を渡ってしまえば畑と雑木林と原っぱがあるばかりだ。見通せるかぎりではほかになんの建物もない。

「このカーブ、見た目よりずっときついんだ」

 道路を指差して志朗が言ったが、りりには「そう」と言うほかなかった。どこか遠くで子供の泣き声がしている。自分たちを除けば歩いている人は誰もいなかった。建ち並ぶ家の住人たちはこの暑さを避けて内にこもっているのか、人の気配もまるでない。こんなところに連れてきてなんのつもりだろうかと思ったが、先に立って歩きだす二人をともかくも追いかけた。カーブを過ぎて少ししたところで二人は立ち止まった。ちょうど電柱が立っていて、その足下にはしおれかけた花束を透明な瓶に差し込んだものが置いてあった。

「久しぶり」と志朗が片手を挙げたので、りりはぎょっとした。明らかになにもない場所に、あえて言うなら電柱に向かって親しげに話しかけるとはどうしたことか。とても小さいなにかでもいるのかと思ったが、志朗も弓月も明らかに虚空へ焦点を合わせている。ちょうどりりの頭のてっぺんあたりか少し高いくらいの位置に人間の顔があるというような塩梅だった。

 あのう、と細い声をかけたりりを志朗はにこやかに振り返った。

「良かったな。見たことあるってさ」

 誰がなにを見たことがあるというのだろう。だって、そこにはなにもいないではないか。立ちすくむりりの様子にようやく気づいた様子で弓月が何事か志朗に囁いた。ああ、というように志朗は頷いてりりに手を差し出してきた。それを握れと言っていることはわかる。わかるが怖かった。なにか、知ってはいけないものを知ってしまいそうな、そんな予感がする。

「大丈夫、噛みつきはしないって」

 志朗が笑って手を揺らした。仕方なく、りりはぎゅっと目を瞑ってからそろそろと手を預けた。優しい温かさが手を握り返してくる。それに引かれるまま一歩、二歩、三歩。立ち止まったところで薄目を開けて看板のほうを見てみた。なにも、ない。やはりなにもいない。

「イメージしろ」

 志朗のその声はどこか厳かに聞こえた。

「そこにはなにかがいる。俺でもお前でもない。人間でも動物でも植物でもない。それでも確かに存在してる」

 そのとき、ふっと風向きが変わったように思った。正面から鼻先に吹き付けていたかすかな風がわずかに方向を変えて頬を撫でた感触、まるでそこに誰かが立っていて風を遮っている感触にそっくりだった。同時になにか違和感が鼻先を撫でた。今まで風のうちになかった匂い、嗅いだことのない、けれどもどこか不安になる匂いがしたと思った。

「お前は今、見たいものだけを見てる。そうじゃないものを見ない為、自ら目を塞いでる。怖がらずに手をずらしてみろ。イメージするんだ。それはそこにいる。今、お前を見てる――」

 なにがいるというのか。心臓のある場所がゴトゴトと音を立ててわなないている。薄目を開けた暗がりの端をなにかがかすめたと思った。茶色いなにか、丸く先がすぼまって、側面には紐が垂れている。スニーカーだろうか。人だと思った瞬間、鮮やかな匂いが押し寄せてきた。古い錆の匂い、それから物が焼ける匂い、そうと認識するに従って、スニーカーに黒い布が被さってきた。いや、布ではない。これは足だ。黒いズボンを履いた誰かの足、そう思った途端にりりは目を見開いていた。悲鳴をあげたかもしれないが自分でもよくわからない。弓月の高い位置にある肩、反対に低い位置にある志朗の頭、その向こうに知らない誰かが立っていた。

 その人は頭から血を流していた。血、そう、血だ。夜に家族で見たアクション映画で同じものを見た。だけど、それよりずっとひどい。左の頭からねっとりと垂れたそれは頬を伝って肩先に滴を落とし続け、黄色い長袖シャツの肩から胸元にかけてに大きな鮮紅色の染みを作っていた。シャツの腹当たりは布が破けていて、しかしその下に見えるのは肌の色ではなく透明な粘液をまとった赤色である。

「見えるようになったかな? はじめまして」

 明るい口調でその人は言った。言葉は鮮明で語尾には張りがある。大怪我をした人間が出せる声だとはとても思えなかった。短く刈られた髪にシュッと細い顎、男性のように見えていたがよく見ると胸に膨らみがある。年齢は女性と女の子の中間くらいの、同級生よりは少し大人びているように見えた。

「その、怪我は」

 りりはようやくそれだけ言った。声は完全に震えてしまっていた。「これ?」と言って女は照れたように頭を掻いた。頭を掻くその指は変な方向に曲がってしまっている。

「酔っ払ってノーヘルで走ってたらやっちゃったの。ガシャーンって聞こえた時にはもうお陀仏だったんだろうね。気づいたらここにいて、それからずっと立ちん坊よ。ああ、心配しなくていいのよ。見た目はひどいけど全然痛くないから。生きてる時はいろいろ考えたもんだけど、実際死んでみると気楽なもんよ」

「紗菜さん、引いてる。引いてるから」

 握っていたりりの手を離して志朗が言った。紗菜と呼ばれた女のほうは「ありゃ、ごめんね」とどこまでも軽く笑っている。眩暈がしそうになってりりは額を押さえた。

「この人、死んでいるの?」

 りりは志朗に尋ねたのだったが「そうよー」と答えたのは紗菜だった。

「立派な幽霊ってやつ。なんだっけ、こういうの地縛霊っていうんだっけ。別に未練とか心残りとかあったわけじゃないんだけどね。家族のほうは別だったみたいでさ」

「ほら、花が供えてあるだろ?」電柱の足下を指差して志朗が言った。「紗菜さんが亡くなったのはけっこう前なんだけど、家族の人がずっと供え続けてるんだ。つまり、紗菜さんは紗菜さんの家族が望んだから生まれた怪異ってわけ」

「おかげさまでどこにも行けないのよね。なんか、私がずっとここにいるって想像してるらしくってさ。そうされてるかぎり、私はそれに従わなきゃいけないみたいなの。退屈ったらありゃしないわ。遊園地に行くとか、映画見に行くとか、ちょっとくらい想像してくれてもいいって思わない? だいたいさ――」

 さらに喋ろうとした紗菜を遮るように弓月が咳払いをした。

「話を戻しましょう。この少女を見たことがあるという話でしたが」

「うん、あるよ」と紗菜は弓月が掲げる携帯端末の画面を覗きこみながら言った。「このカーブを越えて少し行くとお寺があるんだけど。お祭りの時とか正月とか、歩いていくのを見たよ。横に女の人がいたけど、あれはお母さんだったのかな」

「それ以外では? 例えば今年の四月頃に彼女の姿を見かけませんでしたか?」

「いや、私ってほら、カレンダーで生きて……っていうのも変か、とにかく日付とかわかんないからさ。一番最近で言うと、そうだなあ」

 紗菜は腕組みをしてうんうんと唸った。逆方向に曲がっている指を根元からひょいひょいと動かして数を数えるようにする。志朗が囁いてきた。

「後ろ、見てみて」

 指を指されるがまま、恐る恐るではあったが振り返ってみる。なにか白い丸い物が道路を横切ろうとしていた。大きさは遠目だから正確なところはわからなかったが、指先から肘ほどもありそうで、ふわふわと微風に揺らされるようにしながら、けれども明確な意思を持っている証に時々風に逆らいながら歩道を目指している。その時一台の車がその白い物めがけて走ってきた。轢かれると思って「あっ」と声を出した時には車はほかに通るものもない道路とあってか、ものすごい勢いでりりの横を通っていた。あの白いのはと見ると、何事もなかったかのように車道から歩道へとよじ登っている。そのままふわふわ揺れながら建ち並ぶ民家のうち一軒の壁に近づいていき、吸い込まれるようにその向こうへ消えて見えなくなった。

「あれはなに?」

「あやし玉。ああやってうろうろして、子供を探すんだ」

「探してどうするの?」

「どうもしない。赤ちゃんくらいの子供のまわりでごろごろして、しばらくするとまた別の子供を探しに行く。弓ちゃんに言わせると、あれは寂しい怪異なんだってさ。寂しいから自分を見てくれる相手を探して旅をする。その子が自分を見なくなると、また見てくれる子供を探す」

 弓ちゃん、とりりが問い返すと志朗は弓月を指差した。

「弓に月と書いて弓月だから、弓ちゃん」

「あの……怪異? あれも誰かが想像したから存在するの?」

「そう。子供が時々、なにもないところを見て笑うだろ? そういうのをなにかがいるんだと思う人間がいるからああいうのが生まれる。だからさ、怪異っていうのは別に怖がるようなものじゃないんだ。誰かが思うから、望むからそこにいる。お前だって、そこの紗菜さんだってそうだよ。誰かがいてくれたらいいと願ったから今ここに存在するんだ。そういうものが悪い奴なわけないだろ?」

 穏やかな顔をして志朗はそう言った。その眼差しはキッサテンでりりの正体を言い当てた時と同じものだ。慈しみと親しみと愛情のこもったそれに見つめられると、温かなお湯にくるまれたようにほうっと息をつきたくなる。ようやく、ぎこちなくだったかもしれないが、微笑んだりりに志朗はにこりと笑い返してくれた。

「――では、三月の終わり頃か四月の頭ということになりますか」

「そう、たしか桜が散りかけてて、もしかしたら完全に葉桜になってたかもしれない。八重桜は咲いてたっけ、どうだっけ」

 後ろから聞こえてきた会話に意識を引き戻された。志朗とあやし玉を見ていた背後では情報を確かめ続けていたらしい、弓月が真面目な顔をして携帯端末の画面を撫でていた。

「でも、どこに行ったかまではわかんないよ」と紗菜が肩をすくめた。「何か行事でもないかぎり、行き先なんて知りようがないんだから。この先っていうとお寺さんと神社と小学校と交番と、あとは空いてるんだか閉まってるんだかわからない商店がひとつあったかな。ああ、あとはお寺の先の坂を下りきったところにコンビニがあったっけ」

 頷きながら弓月はメモを取っているのか、携帯端末の画面を叩いた。

「コンビニ? 家の周りにはないのか?」

 志朗が尋ねてきたのでりりは答えた。

「住宅街だからちょっと歩かないとないわ。でも、ここまで来たのは初めて。お母さんに教えて貰ったコンビニはもっと向こうのはずよ」

 そう言ってりりは家々のほうを指し示した。志朗が首を傾げる。

「これだけじゃなんとも言えないな。関係ないかもしれないし」

「ええ、ほかも当たってみましょう」

 弓月はそう言って携帯端末を胸元にしまい込み、紗菜に一礼した。「ありがとう」と志朗も片手を挙げて言った。紗菜は反対にええっと不満そうに足を踏みならした。

「これだけ? もう行っちゃうの?」

「悪い、予定が詰まってるんだ」志朗が答えた。「また近いうちに来るよ」

「早いうちにしてよね。もう暇で暇で仕方ないんだから。そうだ、次に来る時はなにか持ってきてよ。お酒だと嬉しいな。発泡酒は嫌だからね」

「紗菜さん、懲りないね」

 呆れたように志朗が言うと、紗菜はあるかなしかの胸の前で手を組んでふんぞり返った。

「いいのよ。どうせ酔えもしないんだから。でも、お供えされると気分が違うって言うの? うちの親もそのあたり分かってくれればいいのに、花しか持ってこないんだから」

「ありがとうございました」と、りりも頭を下げた。紗菜は「いいって」と手を振った。

「瑠々ちゃんだっけ? みつかるといいね」

 柔和に笑う様はまるで生きているようなのに、体中についた傷はやはり彼女が死んでいることを示している。それでもここにいることがなんだか尊いように思えて、胸がいっぱいになってりりはなにも言えなくなった。ただ黙って、精一杯体を追って頭を下げる。紗菜は最後まで笑っていて、後部座席に乗りこんだりりが見えなくなるまで手を振っていた。




 車窓から見る風景は一変していた。車はそれから住宅街からすぐのバス停へ行き、駅へ行き、瑠々が通っていたピアノの教室や塾、りりがお母さんやお父さんと行った商店街やショッピングモール、学校の近くの駅、学校と巡った。行く先々で会ったのはもちろんと言うべきか怪異ばかりで、中には尋常のものとは思えない格好をしたものまでいたが、なににも増してそこへたどり着く途中の光景が異様だった。ぬらりとした体表を持つ大きな壁のようなものにおばあさんが自ら歩み込んでいったかと思うと次の瞬間平気な顔をして反対側から出てくる、仲良く遊んでいるとおぼしき子供たちの頭上では半透明の女の顔だけがけたけたと笑いながら漂っている、信号待ちの集団に向かってなにかを叫んでいるとおぼしき小さな人型があれば、その前を通り過ぎる車のボンネットに異様に長い蛸の足みたいなものがくっついていたりする。その有様といったら、悪い夢というものがあればこれではないかと思えるほどだ。

 学校にたどり着く頃にはりりはすっかり酔ったようになってしまって、車から降りるなりその場にしゃがみ込んでしまった。瑠々を見たという情報はあったりなかったりで、確定的といえるものはなにも得られていなかったがもう一歩も動けないと思った。首の裏がじりじりと陽に焦がされる。すっかり皮が剥けてしまった踵が痛い。でも、それ以上に眩暈がする。慌てたような足音がバタバタ周囲でしていたが顔を上げる気にもなれなかった。ややあってひやりとしたものが首の横に当てられた。伏せていた顔を少しだけ上げてみると、弓月がペットボトルを持ってこちらを見下ろしていた。

「どうぞ」と言われたのでペットボトルを受け取る。物も言わずにキャップを捻って中身を煽ってから中身が水だったと気づいた。とても喉が渇いていたようだった。水が体に染み入って行くような感覚に陥る。一息に半分近くを呷ってようやくひと心地がついた。ふと思った。怪異なのに、変なの。例えばあの紗菜は体中についた傷をもう痛くないのだと言っていた。だのに、自分は暑いし、痛いし、お腹だってすけば喉だって渇く。変な話だが、トイレにだって行くのだ。人間みたいなのに、自分は人間ではなかった。瑠々さえ帰ってくれば、きっと鏡の中に戻る。鏡の中では(かつ)えることも乾くこともない。ただぼんやり膝を抱えて、必要がある時にだけ鏡面の前に立って、それだけで一日が終わる。当然、眠ることもない。なのに、今はまるで人間そのもののように生活して、こうして車だか風景だかに酔いさえする。

「弓月さんも水を飲んだりするの?」

 尋ねた声は思いがけず干からびた音をしていた。もう一口水を飲む。

「飲みます。食事もしますし、尾籠な話ですがそういった行為もします」

「さっきの紗菜さんはそういうことはないのよね?」

「そのはずです。幽霊ですから。そうした行為を必要とするかどうか、必要ではないにしろ取れるかどうかは、結局のところ人間に依るんです」

「なんて言ったかしら、あなたはえっと――」

「忘れ犬?」と弓月が言った。

「そう、忘れ犬ってそういう種族っていうのかしら、そういうものなの?」

「さあ、どうでしょう。そもそもが特殊な(さが)にあるものですから」

 そう言って、弓月は車の腹を叩いた。

「乗って話をしませんか? そのままでは暑いでしょう」

 りりは頷いて立ち上がると、熱い車体にそれでもすがるようにしながら後部座席に滑り込んだ。低いエンジン音と共に体が震えて不快だが、クーラーから出てくる涼風は汗の浮いた肌に気持ちよかった。運転席に戻ってきた弓月を眺めていて、今更思い出してりりは尋ねた。

「そういえば、八千原君は?」

「ここはお一人で行かれると。心配は要りません。少しすれば戻っておいでになるでしょう」軽くハンドルを叩いてから、弓月はそういえばと言うように尋ねた。「まだ気分がすぐれませんか? なにか軽くかけましょうか」

「かける?」とりりは眉をひそめて問い返した。

「音楽でもかけましょうかと言ったんです」

「いえ、いいわ。それよりさっきの話を教えて。あなたは特殊ってどういうことかしら」

「私がというより、忘れ犬という種が特殊なんです。例えばですが、人間の子供が子犬を拾います。でも、大人に見つかると怒られてしまう。そこで段ボール箱に入れて秘密裏に潰れたタイヤ置き場なんかで飼うことにする。しばらく子供たちはミルクや餌を家から持ち寄ってきて子犬に与えるのですが、ある日、いつものタイヤ置き場に行ってみると子犬がいないのです。どこを探しても見つからない。子供たちはもしかしたら大人に見つかって連れて行かれたのかもしれないなんて話し合う。一日が経ち、二日が経ち、やがて子供たちは忘れてしまうんです。自分たちが可愛がっていた子犬のことを忘れて、別の遊びや勉強に夢中になる。真実はさておき、そうして忘れられた犬――まあ、犬に限らないのですが、そういう動物が怪異と化したのが忘れ犬です」

「可哀想な話ね」と、りりは心から言った。「あなたも忘れられてしまったの?」

「私は子犬ではありませんでしたが」

「でも、妙な話。人間が想像するから存在するのが怪異なのでしょう? あなたは忘れられたから存在するのね」

「それが忘れ犬の特殊性です。忘れられたからこそ存在できる怪異なんです。もしかすると、そんな犬もいたなあと思い出す人間がいるからこそなのかもしれませんが」

「じゃあ、あなたを作った人間が誰かはわからないのね」

 ふっと音にして笑いこぼし、弓月は助手席を見た。その眼差しはあの志朗のものによく似ている気がした。

「ええ。しかし、今ここにこうして私がいるのは志朗様が契約してくださったからです」

「契約?」とりりが言ったのと同時に助手席の扉が音を立てて開いた。あっちーと叫びながら志朗が頭から飛び込んでくる。

「おかえりなさい」と弓月が出迎えた。

「ただいま。この暑さ、もうアホなんじゃないかと思うわ」

 志朗は忙しく胸元を扇ぎながら、ハンドルの横にあるボタンをバチバチと操作した。途端にうなりを上げて強い風が吹き付けてくる。乾きかけた前髪が目に入ってりりは「ちょっと!」と思わず抗議の声をあげた。

「悪い。とりあえず、報告」額に張り付いた髪をかき上げながら志朗が言った。「相葉瑠々のことはわかんなかった。生徒が多すぎて見分けなんかつかないってさ」

 そう、と答えた声が沈んでしまったが仕方ないだろう。そろそろ帰らないと、お母さんのパートが終わってしまう。収穫と呼べるものは結局ひとつもなかった。人間に尋ねた時と違って、瑠々を見かけたという怪異に会えたのが唯一の救いだろうか。

「そもそもそれどころじゃないって怒られたよ」ちらりとりりを盗み見た志朗が運転席に乗り出した。「人喰いが出てるんだってさ」

「なるほど」と言って、弓月がウインカーを操作した。その声が嫌に平坦だった気がしてりりは小さな鏡に映っている弓月の顔を見たが、そこからはなにも読み取ることができなかった。助手席の志朗がどうなのかは、こちらもシートに引っ込んでしまってはなにも見えない。

「時間、もうマズいんだったよな?」

 そう尋ねてきた志朗の声が、妙に薄っぺらい響きをしていたように思ったのだが、気のせいだっただろうか。自宅近くの駅まで送ってもらいながら、りりは妙に気になったその言葉を頭の中で繰り返した。人喰い。それはもしかして、人間を食べてしまうもの――怪異のことではないだろうか。そうは思ったが何故か志朗も弓月もかたくなに前を向いたまま一言も喋らないので話しかけづらく、疑問は喉元に凝ったまま、最後まで言葉にすることはできなかった。

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