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変わった世界の確認

活動報告、始めました。小説に関する雑談や裏話を書いていけたらな、と思ってます。

Twitterも一緒に始めました。あっちはそんなに活用しないかもしれません。気になった方は活動報告のほうも見て頂けると嬉しいです。

ここまで読んでくださっている皆様、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

「では管理者になるにあたって、必要なことを教えなければな。ますは、そうだな……」


 大賀さんの提案で僕の家の庭にあるダンジョンの管理者になれそうだ。でもよくよく考えてみたらただの16歳の高校生がそんな大役を任されてもいいものなのだろうか?

 ダンジョンはきっと国が管理することになるだろう。モンスターという人に害をなす危険な生命体が出現する以上、そこを民間に委ねることはできないはず。

 

 もしダンジョンで得られる資源が国に活気をくれるようなら、そのうち冒険者みたいな職業ができるかもしれない。けれどただの人の力で倒せるモンスターなどそもそもが脅威度が低い。本当に脅威になりうる強さのモンスターはきっと、僕や大賀さんのような異能を持つ人が相手をしなければならない。

 

 そもそも異能の発現条件もまだはっきりとはしていない。僕は勝手にモンスターを一度でも倒したら、と考えてるけど、それ以外にもあるかもしれない。けれど目に見えて人を殺せる銃火器と、手ぶらでも簡単に人を殺せる異能力。政府が問題視しないはずもない。きっと今頃会議に会議を重ねていることだろう。


 まずはそこから聞いてみようと思う。


「大賀さん、異能の発現条件ってもう判明してるんですか?」

「そうだな、それから話すか。現段階で判明している発現条件は3つだ。

 一つはダンジョン内部に侵入すること。これは入った瞬間に異能力に目覚める。双葉くんも聞いただろうが、我々が「天の声」と呼ぶあの無機質な声と共にな。

 二つ目はモンスターを倒したときに発現するパターン。双葉くんがこれだな。これは既に異能に目覚めている者は対象外だから、純粋に人の力で打倒する必要があるな。双葉くんは誇っていい。

 三つ目がモンスターに攻撃された場合。攻撃といっても避けたりしたらダメらしい。モンスターの攻撃によって傷を負って初めて、異能に目覚める。もちろん死んでたら異能もなにもない。生きていてこそだ。

 他の条件はまだ判明していないが、これら3つの条件から、どんな形であれ異界ナバラとの接触が必要と思われる。「天の声」もそのようなことを言っていたしな。さて」


 一度お茶を飲もうとした大賀さんは、そこでコップの中身がもうないことに気付く。僕は急いで冷蔵庫からお茶をペットボトルごと持ってきて注いだ。

 

 それにしても異能の発現条件が思ったより簡単かもしれないと、内心驚いている。いやもちろん二つ目と三つ目は文字通り命がけだし簡単なのではないのだけど、一つ目のダンジョン内部に入るだけってのがなー。

 この事実が一般にどれだけ知れ渡ってるかだけど、全国各地に前触れもなく出現してネットもある今の社会、隠すことができる段階じゃない気がする。

 政府がこの先ダンジョンをどう扱うのか、国民が納得する方針をだせるのか、難しそうだけど頑張ってもらいたい。


「異能に関しては我々国軍も扱いに困っている。既に一般人で異能に目覚めた者は大勢いるが、それで悪さをする奴らがな。拘束してなんとかなるならいいんだが、そういうのを抜け出す奴もいる。今はダンジョンだモンスターだで手一杯だってのに……はぁ」


 大賀さんが腕を組んで溜息を吐いた。その絵ですらこの人がするとクールに見えるんだから、ちょっと羨ましい。僕が同じ事やっても「寒いのか?」で片付けられる。………悲しい。

 僕が大賀さんの魅力を真似するにはどうすればいいのだろう?こういうのはやっぱり日常からかな?でも大賀さんとは多分もう会う機会なんてないだろうし……そうだっ!


「大賀さん!僕に手伝えることがあったらなんでも言ってください!僕も頑張って大賀さんみたくなりたいんですっ!」

「私を尊敬してくれるのか?ありがとう。ただ軍人の道は決して甘くない。異能があっても、いやむしろあるからこそ、茨の道となるだろう。君はまだ学生だ、ゆっくり考えていきなさい」

「大賀さん……」


 別に軍人になりたいとは思ってないです……。学校で友達0人の僕が悲しくて大賀さんの魅力が欲しいだけです……。

 でもそんなこと言える空気じゃない。ていうかよく考えたら今の僕最低すぎ?流れに乗っとこ……。


「こ、困ったことがあったら、いつでもうちに来てください。待ってます」

「ああ、一般人に頼るような事態にはしたくないが、もしもの時は頼む」


 もしもの時は頼ってくれていい発言は早計だったかもしれないけど、大賀さんとの繋がりが残るなら全然いいやと思う。

 

 話が大分脱線してしまったけど、そろそろ管理者についての説明を受けようかな。この時間は楽しいけど、霞ヶ丘先生と大賀さんは大人だ。子供の僕とじゃスケジュールが違うだろう。

 

 この話が終わったらまた一人か……。


「それで双葉くんに任せる管理者についてだが、やることは一つだけだ。定期的にダンジョン内の魔物を狩る。これさえやってくれれば給料も出る。討伐した証明部位としてモンスターの体内にある石、通称魔石を取り出してもらえればいい。できそうか?」


 定期的ってどれくらいだろう?


「定期的って具体的にはどれくらいですか?」

「毎日だ」


 毎日。まあ庭のダンジョンは僕にとって楽園のようなものだし、場所的にも手間はかからない。強いていうなら魔石?の取り出しだけど、それもミミズを消し飛ばしてみて残るようなら楽なもんだ。

 それになにより給料がでる!これには驚いた。僕は自分の家を守れればそれでいいと思ってたけど、それに加えお金まで貰えるなら万々歳だ。


 ということで


「やります、やらせてください」

「よし、では書類を書いてしまおう。言い忘れていたが管理者はダンジョンに入ることを制限することはできない」


 え?


「だが管理者としてではなく、一人の一般人として自分の家の敷地内に不法に入られることを拒むのは当然だ。政府がやらなければならないことを代わりにやってくれるのだから、しばらく君のこの家は安泰だ」

「よ、よかったぁ……」


 つまり誰かただの一般人が訪ねてきても、それを受け入れるかどうかは僕次第ってことか。国の人がくることもそのうちあるだろうけど、それも管理者の仕事を僕がやるのだからしばらくは平気。少なくとも毎日誰かが来ることはないということだ。


 その事実に安心しつつ、僕は大賀さんが持ってきた書類にサインやら判子やらを押して、無事ダンジョンの管理者となることとなった。


 その話の中で庭のダンジョンの名称も決めることになったのだが、安直に砂漠のダンジョンにした。

 数少ない領界型のダンジョンなのだし、名前からもどんな地形が広がっているかわかるほうがいいと思ったのだ。


 そして別れの時は刻々と近づいている。すべての必要書類を書き終えた今、いつ2人が帰っても別におかしくないのだ。

 2人が帰ったらまた、家でも一人。学校でも一人。ダンジョンでも一人。一人ぼっちの生活がまた続く。

 別にもう慣れっこだけど、こんな時悲しいものは悲しいんだな……。


「さて、私はそろそろ本部に戻らねばならん。名残惜しいが、これも仕事だ。また会おう、双葉くん」

「先生も一度帰ろうかしら。学校でのあれこれとか、やらなきゃいけないこともあるし」


 寂しいけど仕方ない。僕も一人が嫌なら友達でも作る努力をすればいいだけのこと。笑って挨拶しよう。


「はい。霞ヶ丘先生、大賀さん、今日はありがとうございました。また会いましょう」

「ああ、落ち着いたらまた来る」


 大賀さんは最後に頭をポンポン叩いてから去っていった。完全に子ども扱いだけど頭の温もりが嬉しい。

 そして霞ヶ丘先生はというと


「先生はみんなの先生であると同時に、一人一人の先生でありたいと先生は思っています。一人を大切にする先生は、何処に行っても双葉の先生だと先生は先に言っておきます」


 そんなよくわからないことを言って去っていった。


「明日からまた学校かぁ……」


 霞ヶ丘先生に会えると考えれば行ってもいいかもしれない。

 大賀さんともまた何処かで会えたらいいな、とその日僕は今日の幸せを噛みしめて眠った。

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