相談と宝箱
「いきなり異世界の《半神》になった」のほうでネトコン運営様から感想をいただきました。
なのでしばらくそっちの執筆が捗るかもしれません。
この作品を見て頂いてる皆様も、覗いて頂けると嬉しいです。
ただあちらのほうは主人公の性格が馴染まないかもしれませんので、ダメだと思ったらそっとページを閉じて頂けると幸いです。
作者自身あっちのテンションは書くのが疲れる……。
蛮鬼の迷宮、5階層。僕と大賀さんと霞ヶ丘先生の3人は、そこで一旦殺戮を止め地上に戻ることにした。
「ここまで結構歩き回りましたしもうモンスターの掃除は十分では?一旦帰りましょう」
「殺った数は百やそこらでは済まんぞ……。朧さん、君の正体は絶対秘密にするんだぞ」
「はい、わかってます」
大賀さんのこの言葉もダンジョンに入ってからもう何回も聞いてる。それと一緒に「君の力は異常だ」とか「もし正体がばれたら平穏はない」とか色々忠告もくれた。
僕も空を飛んで学校までくる途中、何度か「あれ?」と思ったことは事実。だってみんな思ってたより控えめというか、派手さがなかった。
拳に火を纏って殴る人だったり、看板を投げたり振り回したりして戦う人だったり。
なんていうか、しょぼい?それが何度か僕の頭を過ぎった感想だった。
だからそのことと合わせて大賀さんの話を聞いてわかる。
きっと僕の光合成は規格外なんだと思う。
もちろん一言に最強といえるかどうかはまだわからないけど、他の人より優れた異能なのは間違いない。
(これもあの夢の女性が関わってくるのかな……)
夢のことはまだこの2人にも話していない。
信頼できる人達だし話してもいいって思うんだけど、どうしても臆病な面の僕がストップをかける。
夢の女性が言った「会いに行く」がこの事態を招いているのなら、きっと僕には責任が生ずる。
お前のせいだって、言われたくないんだ……。
「父さんと母さんが聞いたら、なんて言うかな……」
ボソッと、そんなことを自問する。
父さんも母さんも明るく元気な人たちだった。あの人たちならきっと……
『雛鳥、我が息子よ。女の秘密は美しくするスパイスだけど、男の秘密はイコール浮気なのよ。父さんがなにか秘密を隠してたら、母さんそれだけで傷つき悩んじゃうわ』
ふっと、思い出される過去の言葉。あのときの僕はまだ小さかったからあれやこれやと父の秘密を探る探偵ごっこに明け暮れたっけ。父さんの秘密のへそくりから水虫事情まで……
「楽しかったなぁ……」
秘密を暴かれる側はたまったものじゃなかったろうけど、それでも最後には父さんも笑ってた。
『雛鳥のおかげで気が楽になったな!大切な人にこそ、隠し事はしてて辛くなるもんだ。父さん反省反省、だからへそくりのことは許してくr』
父さん、母さん、僕は大切なこの2人に隠し事をしていたくありません。勇気がでたよ、ありがとう。
「朧さん、ダンジョン探索はまだ終わってないぜ?楽しいのはこれからさ」
「ドロップは残念ながら諦めるしかないけど、宝箱くらいなら、ね?」
この2人に話そう。それで楽しいダンジョン探索を続けるんだ。
◇
「ふむ、なるほどな。実に興味深い話だ」
「朧様はなにか特別だと先生は思ってました」
ダンジョンを歩きながら事情を説明し、話し終えたあと返ってきた言葉がこれだ。
2人の様子を見ても今のところ僕を敵視してるとかはないけど、やっぱり距離を置かれちゃうかな……?
そんな心配をしていると
「先生は迷える子羊を見捨てることはないと先生断言できます」
「興味深い話だが、それで君に責任を問うのは大人のすることじゃない。朧さんになにか自分でも知らない事情があったとしても、今の段階で答えを出すのは早計というものだ」
「先生、大賀さん……!!」
やっぱり話してよかった。この2人のことは信頼してたけど、改めてこう言ってくれると安心感が違う。
良好な関係を続けるためにも、またあの夢を見たらこの2人にはすぐに相談しよう。
「僕2人のことが大好きです……うぅ、ぐすん」
悩みの種が一つ消えて、安心したら涙がでてきた。なんだか恥ずかしい。
「う、うむ。私もふ、君の事が大好きだぞ。うむ」
「そそれより宝箱!お宝を見つけましょう!行くわよ探検隊!」
2人もこの空気に少し気恥ずかしさを感じたのか、そっぽを向きながらそう声をあげる。
そんな2人がなんだか可愛くて、そんなことを思ってる自分にまた気恥ずかしさを覚えて。
僕は頭を振って思考をリセットした。
そうだ。今はまだダンジョン探索の途中だ。5階層から地上に続く入口に戻るだけだけど、あちこち見て回れば宝箱があるかもしれないんだ。
そもそも地図とかないから正確な道もわからない。ここは時間をかけて目一杯このダンジョンを楽しもう!
そうして歩き回ること数時間。僕たちは3階層の途中で宝箱らしきものを発見した。
「先生!大賀さん!あれって所謂宝箱なんじゃないですか!?木のやつだけど!」
「落ち着きなさい、木製の宝箱じゃ先生の心は揺れません。ミミックだと危ないし落ち着いた人が開けるべきね」
「木製ということは最下級だな。ミミックである可能性は低いが罠の危険はある。肉体強度的にここは私が」
「2人とも少年心が足りてないですね。純粋な少年心が宝箱の中身を昇華させるんです。ここは僕が」
「待ちなさい、危険よ。純粋な少年心を持つ奴が一番最初に死ぬってよくあること。こういうのは先生が対処するから」
「いやいやこういう危険ごとに一番適任なやつがここにいるだろう。そもそも最下級の木箱でなにをそんなに」
「いやいや」
「いやいや」
「いやいや」
ええい埒が明かない!こうなったら必殺――!!
「「「最初はグー!じゃんけんポン!」」」
「いやぁ僕が開けちゃってもいいのかなぁ~?へへへ」
やっぱり変に回りくどいこと言わないで真摯に向き合うことが大切なんだなって。
「変に回りくどい謙遜いいから!早く開けなさい」
「宝箱には真摯に向き合うんだぞ。さあ、開けたまえ」
2人の急かし方にどこか理不尽を感じながら、僕は宝箱の前に立つ。
目の前にあるのはただの木箱。それが宝箱みたいな形をしているだけのこと。だけどダンジョンという場所でそれがあることに意味があるのだ!
パンッパンッ
二度手を合わせ仏に願う。なにかいいものください!
「いきます!」
パカッ
ゴクリ、と三人で喉を鳴らしながら見たその中身は――
「「「………種?」」」
掌ほどの大きさの、白い種のようなものだった。




