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作者: テーム
掲載日:2022/03/15

目覚めてすぐに家を出ようと思った。

特に思い当たる理由はない。同じような毎日にうんざりしたのか。一週間近く家から出ていないからか。勉強に詰まったと感じたからなのか。どれだけそれらしい理由を立てていったところで首を立てに振らせるまでに至らない。首を捻りながら服を着替える。

 そうだ、どうせならば遠くまで行こうと決めた。お金のない苦学生もたまにの息抜きは許されるだろう。日々の鬱憤を晴すのはアルコールと愚痴ばかり。そうなると心に違和感が生まれるもので、それは孤独だった。一人で遠くまで行けば、孤独とちゃんと向き合うことができると思った。家にいても孤独とちゃんと向き合うことはできない。どうしても過去を振り返る事が多くなりがちだからだ。あいつと次に会ったときにはこんな話をしよう。あの日は楽しい日だったな、皆と久しぶりに会えて良かった。と頭の中で誰かと会ってしまう。誰かと会話してしまうし、誰かを思う自分と対話している気になる。そうすると自然と孤独との距離は離れ、大きな声で会話をしなくちゃいけなくなるのだけれど、そうすると孤独は嫌がって耳を塞いでしまう。それがつまらない。一番近くにいるのに、一番わかり合えないでいるのは、もう恋人と倦怠期のそれよりもずっと重い。もはや兄弟のように感じつつある。いつでも会えるからと会わない。もしくは親友と言い換えることもできるのかもしれない。

 身支度を終えて、今日の服装はイマイチだと気を少し落としながら踵を叩く。玄関をくぐったところで足を止めた。「人身事故のお知らせ」。ああ孤独が死んだんだと実感した。その先一歩も踏み出すことなく踵を返した。

 もうそうなってしまうと、やることとはほとんど消された。布団を肩にかけ寒さをしのぐ。その上に毛布をかぶせ、掛け布団をかぶせ、気付いたときにはダウンジャケットをその上に乗せていた。あまりの恐怖にカーテンを閉めた。もちろん涙は一滴も流れることなく、全身を駆け巡り、私を生かしている。いっそのこと、全部涙となって、体中の血が枯渇するまで泣いてしまいたかった。それを考えるほどに病み、弱り、心は悲鳴をあげていた。

 何よりも辛かったのは、私のせいで孤独が死んだのだということだった。目覚めた自分がおろかだった。あの時に目覚めなければ、あるいは変な気を起こさなければまだ行きいたはずなのだ。もしくは今日の服装はイマイチ決まっていないなと全裸にでもなればよかった、そうすればこんな悲劇は避けられたのに。

 目が覚めた。気が付けば、あろうことか寝てしまっていた。孤独が死んだのだというのに、なんと悠長な自分を痛めつけたくなって、痛めつけた。何度も何度も、お前はなんて卑劣なのだ。この期に及んでまだ理解出来ていないのかと。罵り、掻きむしった。

けれど、そんな次の日私は元気だった。ものすごく元気だった。晴天の日にはしゃぐ鳩のように。

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