STORY1 第1話
「もう帰ろうよ〜」
「弱虫だなぁ〜良いもの見せるって約束したじゃん」
ざざざ…っと転けたのかあたりに砂埃が舞う。中学生ぐらいだろうか。むせかえるふわふわの黒髪の男の子は泣きそうなのを堪えてよろよろと立ち上がった。転んだことにゲラゲラと笑っているのは「トモダチ」と呼ぶ3人の男の子たちに彼は怯えながらも帰ろうと伝えた。
「お〜い、どうしたぁ?チビ!!」
「強くなるんだろ〜?!これじゃあ、俺らのトモダチリストから消すぞ!!」
「まー、いいじゃん?ほらカウントダウン〜」
「「「5〜!!」」」
消すという単語を聞いた瞬間、男の子は体が強張り震え始めた。それを無視した男子たちは、カウントダウンを始める。
逸れないようにと彼と手を繋いだ男子たちは、彼の目隠しを取った。そこには古びたボロボロになった神社が遠くに見えた。ゴミが散乱していて何かが可笑しい。
「ね…ねぇ…これ…」
「そー!見せたいものっていうのはこれこれ!シンコーもない役立たずだってじいちゃん行ってたし〜」
「別にいーじゃん!こんなの壊せば良いのに」
愚痴を吐く男子たちに、何かを決めたのかその男の子は、男子たちの手を払い除けその神社の内側へと走り出した。
それに慌てて追いかけるように男子たちも走り出した。初めは男子たちが先だったがどんどん抜かしていく。男子たちが彼を追いついたとき、彼は境内の中にいて彼らと向かい合わせになる位置にいた。短い信号を渡ろうとした時、目の前の信号は、点滅もせず急に赤に変わった。
「もう来るな、ここに」
先ほどまでは打って変わった威圧に、驚きつつも男子たちは囃し立てる。一向に時間が経っても青にならない信号に、段々と違和感を感じたのか少々焦り出すも茶化していた。
「な、なんだよそれ、弱虫のくせに!!」
「こんなのただの古びた建物だよ〜そんなムキになるなって〜」
「つーか渡ろうぜ?車も止まってることだし。ほら、別になんてことな」
どこからも無く大きな無人トラックが、渡ろうとした男子を轢いた。ぐしゃりと体が潰れる音が耳にこびりつくほど響く。当たりが真っ暗になったかとおもうと、何事もなかったかのように跡形も無く消えていた。
はっと空白の時間の後、信号を渡らなかった2人の男子たちの目の前には、顔を黒く禍々しい紙で隠した癖っ毛の黒髪の着物の男性が立っていて、こう告げたそうだ。
「……帰れ。轢かれたいのか?」