1-7.こんなに強いチート勇者がいるはずがない!
...ヴァイスが落ち着いてきたことだし、そろそろ本題に入るか。
「あのさ、いきなりだけど、俺の右腕について何か知っているか?」
「...ご主人様の右腕?普通の腕なのですがいかがなさいましたか?」
「え?だってほら...」
右腕を見てみるとさっきと違う元の俺の右腕だった。
「きっとご主人様はお疲れなのですね。早く街に帰って休むことにしませんか?」
「え、あ、そうか。そうだな。俺、やっぱ疲れてるかもな。」
あの時俺が疲れてたからあんな幻覚が見えたのか...?
とりあえずクエストが終わったんだ。帰って報酬を貰おう。
ヴァイスのことがバレないように大鎌に姿を変えさせ、
待機してある馬車に乗り込んだ。
流石にシーツ1枚はアウトよりのアウトだからな。
「おや、Sランクのクエストだって言うから熟練者かと思えばただのひよっこじゃのぉ。」
俺が乗り込むと年老いた御者がそう言って笑った。
「は、はぁ...」
「そんな丸腰で行くってのは度胸だけは一丁前じゃの。最近の若い者は防具より武器を優先するのが多いわい。ワシは今までそういう者がクエストから帰ってこなくてずっと待たされてきたのが多かったじゃな。よくギルドの人から苦笑いされたものじゃよ。」
つまり死んだってことか...
「ところでおじいさん、一つ思ったのですがこの世界に死者を生き返らせる魔法とかそういうものはあるのですか?」
回復魔法があるのは知ったが蘇生魔法があればもしかして本当に俺は最強になれるかもしれない。
「ふむ...若造、面白いことを言うな。」
「え?」
「そういうものはこの世界に存在せぬ。まあ一つだけあるんじゃがな。」
いやあるんかい。
「それは一体...?」
「...使徒化じゃ。」
そういやヴァイスも言ってたな。あれも一応蘇生と言えば蘇生だ。
「ところでお主、ワシは何歳に見えるじゃろうか?」
「え?いきなりですね。80あたりかと。」
「ほっほっほ。残念じゃ。それに3倍じゃよ。」
「ってことは大体240!?凄いですね。」
やべーおじいさんに会ってしまった。
だが...
「おや、お主は教養が足りないのか?人間はそこまで生きるのは不可能、だがレヴナントは永遠に生きることができるのじゃよ。」
「え...?」
この世界って200年以上も生きられるスゲーではないのか。
「馬車はいいのう。誰にも見られずに人間を狩れるわい。」
そう言うと年老いた御者は左手を先端が尖った触手に変えて俺の首もとに伸ばしてきた。
くそ...油断していた...
相棒を手にしてるとはいえこの状態だと微動だにできない。
「フハハハハ、やはり貴様がレヴナントだったんだな。」
声がする。上か?
「死ねぇっっっ!」
年老いた御者の真上から一本の剣が突き刺さる。
容赦ねえ...
「君、怪我はないかい?」
白銀の鎧を身にまとった戦士だった。
「あっはい大丈夫です。この度は助けて下さりあr...」
「いやー良かった。あ、僕の名前はスルギ。この世界の最強のイケメン勇者様とはそう、この僕のことだよ。」
は?初対面の人に向かってなにいってんだコイツ...
「やっぱ僕の''能力''『補正』のおかげさ。それにしてもやはりこのジジイはレヴナントだったか...」
話をしながら息絶えている年老いた御者を馬車から蹴落とし馬を走らせる。
これが勇者のすることかよ。
「...勇者様お尋ねしますが、その『補正』ってものはどういうものなのでしょうか。」
他の''能力''も知っておきたいところだ。
「うーん、そうだな...少し長くなるけど大丈夫かい?」
俺はうなずく。
スルギは大きく息を吸う。
「攻撃のクリティカル率100%、回避率50%、状態異常無効、貰える経験値2倍、常に幸運、一度につき1回戦闘でHP1で耐える、全ステータス上昇、ダメージ貫通、10秒につき1回HP10%回復、第六感解放───」
うん。チート。''能力''だけ主人公してるわ。
性格は魔王とかそれ以上に非道すぎる。
というかこの内容だけでもう街に着いたよ。''能力''1つでここまであるのはヤバイって。
「じゃあね。僕は経験値稼ぎで忙しいんで。」
ギルドに着くとスルギはそのステータス上昇した足でさっそうに駆けて行った。
ああいう人がこの世界の主人公なんだろうな。世も末なもんだ。
とりあえず俺はクエストの報酬を貰いに受付に行く。