1-3.こんなに初めての戦闘が苦戦するはずがない!
馬車に乗るとすぐに動き出した。
しばらくして茶色のフードを被った御者(馬車を操縦する人)が話しかけてきた。
「君のその武器かっこいいね、普通の店では取り扱ってないものかな。」
若い男性の声だ。
「あー...ありがとうございます、まあ骨董屋の掘り出し物ってやつです。」
「それはロマンがあるね、ちなみにいくらぐらいだった?」
立て続けに聞いてくる。
「なんか値段が決められなかったらしくてタダで譲ってもらいました。」
「そうだね...確かに値段は決められないな。」
この男は何か知ってるのか...?
「...何かご存知なのでしょうか?」
「ああごめん、僕はこう見えて鑑定士の仕事もしているんだ。そういう武器は今まで見たことがなくてだね」
「ところで話変わるけど君はレヴナントの王を倒すつもりかい?」
レヴナントの王...か。
「いえ、俺は気楽に過ごしたいのでそういうのは他の人に任せます。」
あっちでもこっちの世界でも俺のめんどくさがりな性格は変わらない。
「そっかぁ、あ、そうそう知ってる?実はレヴナントにも人間の味方をするいい奴がいるんだよ。」
「へ?そ、そうですか...初耳です。」
レヴナントの情報はまだ乏しい。
「けど、そういうレヴナントは王の命令を背いてるからって理由で上級レヴナントによって抹殺されるんだ。」
「...それは悲しい話ですね。」
「仕方がない、本来レヴナントは人間と対立しなければならない存在なんだからさ。」
そうこうしてるうちに目的地についた。
どうやら城の廃墟を拠点にしているそうだ。
「迎えの人はまた別だからね、ここでさよならだ。」
「はい、ここまで乗せてくれてありがとうございました。」
馬車がギルドに引き換えそうとしたとき彼はこう言った。
「...君はいつかレヴナントの王を倒さなければならない。」
その時御者の顔が少し見えた。
彼の目は赤く髪は緑色で、
どこか人間離れした顔立ちだった。
俺は準備体操を入念に行い門を通る。
それと同時に茂みからゴブリン達が襲いかかってきた。
「このゴブリンはクエスト記載されて通り全員レベル3...同等の相手だな。」
肩に担いでいた大鎌を装備しひと振りする。
音もなく綺麗にゴブリンの革鎧を切り裂き血と胴体が飛び散る。
それを見て怯んでいたゴブリンに余韻に浸ることなくさらに一撃を入れる。
茂みと道には血が塗りたくられ城壁には無惨にも肉片が飛び散った。
「...ざっと5体ってとこか。意外といけるもんだな。」
頬にへばりついた血を拭う。
こういうグロゲーはやったことあったがまるで感覚が違う。
「というかこの大鎌まるで自分の手のように軽々使えるけど...まあ、いいか。それよりお金は...まあそうゲームみたいに落ちるわけでもないか。」
この世界ではモンスターからお金は拾えないそうだ。
大人しくクエストの報酬金で稼ぐしかない。
そのまま俺は大広間まで足を運んだ。
ボスみたいな奴がいると思ったが...どうやら見当たらない。
それどころか他のゴブリンもいない。
と思っていたが、
......殺気!?
気配のある方向に大鎌をとっさに突き出す。
音はしなかったが感覚はあった。
ウォーサイズにはゴブリンが脳天から入っていた
あと少し遅かったらゴブリンによってこっちが脳天をやられていたところだ。
こいつはミュータントゴブリン、レベル10。
腕をナイフに形状を変化できる特性を持ち、並みの剣を弾くほど皮膚が硬い。
「目隠し音ゲーやってて大正解...かな...?」
だが余裕もここで終わった。
だろうと思っていたがミュータントゴブリンが四方八方から現れたのだ。
攻撃力があっても素早さや守りがなければ数で圧倒される。
1体目が襲いかかる。
すかさず薙ぎ払い襲いかかってきた2体目も同時に切り裂いた。
だが隙ができたところを3体目の攻撃が的中。
素早い速度でナイフ状の腕で突き刺しそのまま俺の左腕の肘から下を全部持っていった。
痛みを感じる前に
後ろから来る4体目を上から大鎌を下ろし一撃を入れた。
しかし
「....っ」
言葉にならない激痛が走る。
その隙を5体目が俺の腹部を貫く。
ナイフ状の緑かかった腕が俺の腹に突き刺し背中に先端が出ている。
痛みで自分の思考が支配していく。
そんな意識の中、後ろから大鎌を刺し込み5体目のゴブリンを絶命させる。
相変わらず返り血が激しい。
腹を裂かれ左腕の肘から下を失った俺は立つので限界だった。
残った4体目と6体目が襲いかかってくる。
ダメだ...もう...動けない...
そんなときどこからともなく声がする。
-まだ意識を保っててください。
あの時と同じ声だ。
「ああ、まだ...死んでない...からな...」
-ありがとうございます。
「...」
その直後大鎌がまるで意識を持っているかのように
俺の腕と同時に動き出し2体のミュータントゴブリンを引き裂く。
俺が動けないと思っていたのかやつらは油断していたためあっさり攻撃が命中した。
広間にはもうミュータントゴブリンの姿はなかった。
俺は大鎌を杖がわりにして小部屋に逃げ込んだ。
「ごめんな...俺みたいな雑魚に使われて...」
そう言ってベッドにあるシーツで返り血に染まった相棒を綺麗にしてやった。
「...くっ...」
持っていた薬草を全て使いきり応急処置をしたが、
痛みが引く気配がない。
...けど不思議のものだ。なぜ俺はあの時手を動かせたんだ?
それよりもまた変な言葉が聞こえたし...
しかし疲れにより眠気がひどく、
そのまま俺は相棒を抱いて深い眠りについてしまった。