4-2.こんなにレアな果実が見つかるはずがない!
あれからどれくらい経っただろうか。
とりあえず錬成を使わないと。
「錬成。」
みるみるうちに傷を負った部分が回復していく。
「ここはどこなんだ。」
立ち上がって様子を見る。
薄暗いと思っていたがどうやら洞窟の中だった。
洞窟は外からの光で照らされている。
そして足元を見て判明したことだが、ここはあの熊の住処らしい。
原型を留めないほど引き裂かれた動物らしき生き物の死骸やら骨やらが散乱していた。
なるべく下を見ずに出口を向かおうとすると。
ガルルルルル...
!?奥か?
奥は暗かったため何も見えなかったが唸り声しながら何かが近づいてくる。
「2回戦ってことになるのか。」
そのまま出口めがけて一直線に逃げる手はあったが
熊は時速40km、そんなものに追いかけられてはすぐに餌食になってしまうだろう。
「そういや前は弱点である眉間を最初に狙ったが、受け止められたんだったな。」
この熊は通常の個体より知能が高いと伺える。
それで結局心臓部分を貫こうとしたのだが血で湿った体毛のせいで奥まで入らなかった。
あと使える愚者の刃の本数はわずかに回復した魔力でうてるのはあと1本ってとこだ。
だとすると正攻法はただ一つ、あれを使うしかない。
「「何を考えている。人間。」」
うなり声まじりに人間の言葉がはっきりと聞こえた。
「喋っただと!?」
「「人は我を聖なる森の主と呼ぶ。」」
...待てよ。こいつ口から何か黒いものが漏れている。まさか。
「あんた、もしかしてレヴナントか。」
「「如何にも。我はとある黒い騎士によって使徒化された者なり。」」
黒騎士め、まさかこんなやつにも手を出していたなんて。
「「そして命令をされた。汝を殺せと。」」
「やはり狙いは俺だったか。」
「「汝よ。言い残すことはないか。」」
「あるさ。勝負は一瞬で片付くってな。」
そう言うとやつはこちらめがけて飛びかかってきた。
まだその時じゃない。
俺はギリギリのタイミングで避ける。
その後たて続けに突進をしてくる。
まさに猛攻だった。
まるで狩りとしての命への執着心。それが愚かにもその姿に表されていた。
「「逃げてばかりでどうするつもりだ。」」
「いや教えないよ。」
あの状態にならないとうまく決まらない。
そうして攻撃を避けるうち数十分。
ついに俺は回避が失敗し押し倒された状態になってしまう。
「「汝よ。勝負は一瞬などとほざいていたようだな。」」
「なんの。まだまだこれからよ。」
「「そうか。では死ぬがよい。安心しろひと噛みで頭を砕くから痛みはせん。」」
「かかったな。」
俺はやつの胸部へと左手を密着させる。
そして
「愚者の刃、内部から展開っっ!!」
「「なに!?」」
愚者の刃によって心臓部分を内部から貫かれる。
勝ったのだ、やつに。
聖なる森の主は静かに倒れる。
覆いかぶさった巨体から抜け出して出口を向かおうとした時、声がした。
「「我は使徒化には反対した。だが目の前で子供が黒い騎士によって殺された。我は従うしかなかったのだ。ありがとう。汝よ。我を解放してくれて。ああ、これで息子たちに...ぐふっ。」」
俺は振り返ることなく外へと向かった。
洞窟は滝の裏側にあった。
どんなところにつくられてるのだか。
まずヴァイスを探さないと。
空はもう朝というより昼に近かった。
熊が歩いたと思われる獣道をずんずんと進んでいく。
かなりの長さからみると俺はずいぶん長く引きずられているようだ。
よくあの状態で意識を取り戻したな。
普通だったら出血多量で死んでいてもおかしくない。
これもレヴナントの力によるものなのか。
歩いてる途中いい色をした果実を見つけた。
バッグは置いていたため服のポケットにしまう。
ヴァイスは今頃どうしているだろうか。
そう心配に思うと歩く足が早くなる。
そうして歩いてると広いところへ出た。
見覚えのある場所だ。そう俺たちが昨日キャンプしたところだ。
火は消えている。
「ご主人さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
どこからか声がしたと思うと、茂みからバッグを背負ったヴァイスが抱きついてきた。
「どこに行ってたんですか。ずっと私心配で心配で!」
ヴァイスの泣きじゃくる声が聞こえる。
「ごめんごめん、ちょっと物音がしたから様子見に行ってたら道に迷っちゃって。」
「の割には遅いじゃにゃいですかーーー!!!」
「本当にごめん心配させちゃって。」
そういってヴァイスを強く抱きしめ返す。
「いいんです。ご主人さまが無事ならば。」
ヴァイスが泣き止むまで俺は抱き締め続けた。
「そうだ。見てよこの果実。きれいだと思わない?」
そういってポケットから2つ色とりどりの果実を取り出す。
「これは、虹色の果実!ランクSSSの幻の果物ですよ!」
なんだか異世界要素が強いものを手にいれたようだ...
「おいしいのか?」
「食べれば最大体力があが...あ、」
「残念だけど俺上がらないんだよね...」
「じゃあ売りましょうか、一個金貨100枚ですし。」
ええ...高過ぎだろ...
「じゃあ早くこの森から出て山を越え新しい村や街へいきましょうか」
「そうだな。」
こうして俺達は山を目指し歩くのだった。
「ところでご主人様その...獣臭いです...」
「あ、いやこれ加齢臭。」
「....」