3-4.こんなにここからの旅路が長いはずがない!
__(え、そんな方法でですか!?)
ああ、危険なのは分かってる。
だがそれしか方法がない。
奴を倒すには自らを犠牲にしないとでも勝てない。
そう自分の勘が言っている。
「行くよ!ヒイロくん!抜刀術-閃-ッッ。」
そう掛け声をしたかと思うと、既に彼の姿は無かった。
そう目にも止まらぬ速さで現在進行形で動いてるのだ。
だがこのぐらい計算できている。
目標は自分に攻撃が当たる寸前だ。
「その首、貰ったぁ!!!!」
その時肉の塊がが勢い良く上へと飛び散り落下した。
「フフフハハハ.....!!!頭が吹っ飛べば回復すらできんだろう。なぁ!!!」
そう高らかに笑いながら歓喜する。
「ふん。レヴナントでもやっぱ大したことはないか。さてとっとと片付け....」
そう言い掛けた時だった。
「よそ見するんじゃねぇ。」
そう後ろから声がすると即座に大鎌が自分の首もとにあてられた。
「ヒイロくん...!?なんだと...確かに感触はあったはず...」
いや本当にあった。実際に首を斬ったんだ。
じゃああの時吹っ飛んだ肉の塊は...
「あんたが斬ったのは俺の右腕だ。斬撃が来る寸前、一か八かだけど首をおろし右腕を挙げ致命傷を避けた。タイミング勝負なら前の世界で慣れてる。」
そう言いながら俺は大鎌を肩に担ぐ。
「なぜだ。僕をなぜそのまま殺さない....!」
「俺は人間なんかを殺したりしたくない。」
「...!?レヴナントのくせになぜ...?」
「俺は人間とレヴナントが共存できる世界をつくりたい。」
「なんだしょうもない戯れ言か。でもさっき仲間を殺したよね。そいつはどうなんだ。」
「なんとでも言え。あいつとは...分かりあえることができなかった。自分みたいに平凡に暮らしたいと思ってるレヴナントが自由に生きれる世界をつくる、それが理想だ。」
「どうやら嘘はついていないようだね。でもさ、分かりあえなかったから殺した。じゃあ人間の僕も分かりあえないから殺すのが普通なんだろ...?」
...何も言い返せなかった。
俺のやってることは確かにエゴの押し付け、ただ都合の良いことを言ってるだけだ。
「...君は人間なんだね。自分が良ければそれでいいという破綻した理想を持って生きる生き物。実に愚かだ。」
「でも愚かでいいんじゃない?僕も自分が強ければ、レヴナントから人を守れればそれでいいと思ってる。」
...
「君の言葉には嘘は一つもない。分かった。君達を解放させてあげるよ。」
彼はそういって門まで案内した。
腕の出血はわずかに回復した魔力で傷口を塞ぎ凌いだ。
とは言っても腕はないままだが。
(見えました。あれが街の外へ出れる門ですね。)
門へとたどり着く。
ヴィーバントの連中は剣を引き抜き構える。
その時彼が口を開く。
「私はこの度トルバータへと派遣されたヴィッカース・エルヴィン・クネーチャ少尉。そして命令だ。彼を解放してほしい。」
「どうする...?」
「理由もなく解放するのか?」
「だがヴィッカース少尉の言葉だぞ。」
「ただ脅されてるだけかもしれん。」
「諸君早くしてくれたまえ。門を開けてくれないか。」
「ヴィッカース少尉殿。その言葉は信用できません。彼はレヴナントです。」
「そうかい。なら力ずくで突破するまでだ。」
「いいでしょう。まずは私からですかな。」
「いや、相手をするのは全員だ。かかってこい。」
驚きつつも一人、また一人と声をあげていく。
「く、少尉のくせにイキりやがって...俺の能力は''全部回避''全ての攻撃をかわしてやれる最強の能力だ。」
「俺は''倍反撃''、攻撃を2倍の威力で返してやる。」
「まだまだ能力持ちは居るんだぜ。聞いた噂では使いどころのない外れ能力持ち、さらに同じ技しか使えない人と聞いた。そんなもんだと屁でもない。」
「私の能力は2回攻撃、さあどうします、ヴィッカース少尉殿...!」
こいつら全員半端ない能力持ちかよ。
これはもう無理なんじゃないか....
それでも彼は構える。
「そうかい。そうかい。誉めてくれてありがとう。」
「じゃあさようなら。抜刀術-閃-ッッ。」
「な、消えたぞあいつ」
「やつはどこにいっ...うわぁぁぁ。」
「見えないところから攻撃が...ぐぉっ」
バッタバッタと倒れていく光景はまさに地獄だった。
残りの連中も恐怖に震えながら倒されていく。
そして最後の一人が倒されると姿を現す。
「みんな...嘘つきだね...」
「ヴィッカースさん...大丈夫なんですか彼らは...」
「ああ、大丈夫だよ。全部峰打ちだから。」
「あーあ。全部本当だって信じて僕の嘘化かしを使わなかったのに結局全部脅しのデマか...」
こ、この人ただの戦闘狂か...?
まぐれかもしれないがよく勝てたな自分...
「聞こえてないと思うけど諸君らに言っておくよ。外れ能力でも同じ技しか使えなくても自分を活かし努力さえすれば誰でも強くなれる。諸君らが無能力者なのは知ってる。だけれども嘘なんてつかずに精進し続けるべきだ。」
しばらくして門が開かれる。
そしてヴィッカースは別れ際にこう言った。
「周りの奴ら、人間は、君が正しくないと言うだろうね。でも君が正しいかどうかは君自身が決めることだ。」
「...はい。」
「最後に質問だ。君は、ヒイロくんは、優しいレヴナントなんだね。」
「いいえ。そんなことはありません。」
「そっか。嘘は良くないよ。自分に正直に生きな。」
俺は何も言わなかった。
そして門は音を立ててゆっくりと閉じる
それを見かねてヴァイスは元に戻る。
「ヴィッカース・エルヴィン・クネーチャ。彼ももしかして心のどこかではレヴナントに対して何か抱いていたかもしれませんね。」
「ああ、そうだな。俺もレヴナントに対して色々と考えさせられたよ。」
こうして俺達の新たな旅路が始まるのだった。