四十話 羞恥心
遅くなりました。すみません。
ココレットは花瓶を置くと、二人に自分に何があったのかを話をした。
攫われた事、見た目が好みではなかったのか影によって見た目を変えれた事、そして、花瓶と聖女の力、聖なる光によって影を撃退した事。
それらを話し終えた後、ココレットはローワンに視線を移すと、静かに言った。
「・・・ローワン様・・私、言わなきゃいけないことがあるの。」
ココレットは不安げな瞳でローワンを見つめる。
「何?」
あくまでもせかすのではなく、笑顔でココレットの言葉を待つ。
じっと二人は見つめあい、そしてココレットは大きく深呼吸をしてから口を開いた。
「私には・・前世の記憶があるの。」
「前世?」
思いがけなかった言葉にローワンは首を傾げたくなるが、ココレットの言葉の続きを待つ。
「ええ。私は・・・前世でヴェールガ王国の聖女をし、皆には聖女様と呼ばれていたの。」
「え?」
ローワンは驚いたように目を見開き、そして、視線を泳がせた後に納得るように頷いた。
「なる・・・ほど。そうか。うん。あーなるほど。だから、噴水を簡単に聖水に変えられたのか・・なるほど。」
「え?あの、噴水の件・・・分かっていたの?」
「ん?・・・あぁ。そうだね。ココレットが聖女なのではないかとは分かっていた。けれど、まさか歴代最強の聖女様だなんてね。」
はははっと笑うローワンの姿に、ココレットはほっと胸をなでおろす。そして、もう一つ、はっきりと言っておかなければならないと、呼吸を整える。
その様子に、ローワンはまだ驚かせることがあるのかと身構えた。
ココレットは、声を大にして言いたかった。
自分は成人していると。
そして、言わなければならない。
自分は今の見た目のような姿形には成長しないのだと。これを未来の姿だと思われたら、がっかりされたら、もう自分は泣いてしまう。
「この姿は・・ドラゴニアの王の力によるもので、本来の姿ではないです。」
「ん?・・うん。それは知っているけれど。」
「わ・・私は、この姿にはなりません。」
「ん?えーっと・・うん。それで?え?何を心配しているの?」
ローワンは首を傾げると、ココレットは大きく息を吸ってから大きな声で言った。
「私、十六歳の成人している女なので、元の姿が最終形態です!!!!!」
「ん?」
ローワンは固まると、静かに視線をヴィシアンドルへと向けた。
ヴィシアンドルはにっこりとほほ笑むと言った。
「ココレット様は、十六歳の女性であり、今の姿を見られて期待されては困ると、言っているのではないかと推察します。」
その言葉に、ローワンは、ゆっくりと、静かに、息を飲んだ。
今まで、ココレットがまだ幼いからと、結構大胆に、膝の上に乗せたりしていた。
-成人している?誰が?ココレットが?あんなに小さいのに?え・・あんなに可愛いのに?え?そのまま?え。ずっと、あの可愛らしい姿のまま。
ローワンは顔を真っ赤に染め上げると両手で顔を覆った。
よくよく考えてみれば、ココレットの年齢をしっかりと確認した事が無い。
自分の落ち度である。
ローワンは羞恥によって今ならば死ねると、恥ずかしくて呻き声を上げた。
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