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三十一話 竜神様

いつも読んで下さってありがとうございます。


 白い衣服に身を包み、ドラゴニア王国伝統の化粧を施されたダシャは、少女とも少年ともいえぬ雰囲気を醸し出しており、その美しさにシバも、騎士団の皆も息を飲んだ。


 ただし気になるのは、どこから白い衣装や化粧品が出て来たのかという事と、ダシャの横に、同じように美しく化粧を施されたココレットがいるということである。


 ダシャを引き立てる為か、ココレットに施されているのは最小限ではあるが、それでも美しい。彼女が大きくなったならば、どれほどの男が魅了されるだろうか。まぁ実際には現在すでに大きいはずなのだが。


「ねぇ、この衣装どうしたの?」


「はい。必要になると思い持ってきました。」


 ヴィシアンドルはそう言うとにこりと微笑み、ココレットはこれ以上効くなという事かと頬を引きつらせると、緊張している様子のダシャへと視線を移した。


「大丈夫?」


「あ・・・・あぁ・・」


 不安に思うのも仕方がないとココレットはダシャの手をそっと握った。


「私も一緒だから。」


「え?・・・うん・・・」


「事前に打ち合わせにした通りにすればきっと大丈夫だから。」


「いや、それが一番心配なんだけど。」


「えぇ?大丈夫だよ。ね?」


 顔を覗き込まれ、にこりと微笑まれたダシャがわずかに頬を赤らめるとローワンはココレットの体をひょいと持ち上げて、ダシャから一歩引き離した。


「え?ローワン様?」


「ココレットは、私の婚約者なのだから、異性にあまり近づきすぎてはダメだよ。」


「あ、はい。ごめんなさい。」


「うん。」


 満足げなローワンの、その独占欲全開の行動に周りは若干引きながら、皆で少し広い場所へと移動する。


 ダシャとココレットから皆が離れ、ヴィシアンドルは二人の後ろに控え、何かがあった時の為に動けるようにしている。


 騎士団の皆には簡単に説明はされているが、現状、皆が何が起こるのか分からずにいる。


 ヴィシアンドル曰く、精霊は愛しい子が名を呼び求めれば姿を現すと言う。竜神も同様なのではないかと言う推察によって、ダシャは呼吸を整えると、ゆっくりと天に手を伸ばしながら願い、乞う。


「ドラゴニアを守護する竜神様、どうか、そのお姿をお見せください。」


 心を込めてダシャはそう呼び、そして手を伸ばす。


 天へと高く高く、求めるように。


 ダシャの中には、未だに疑問があった。


 闇を纏うような自分の外見は呪われているのではないのか。竜神に愛されるわけがないのではないか。だからこそいくら手を伸ばしたところで、取られることはないのではないか。


 ダシャの手はただ、空を切る。


 ダメだ。やはり、自分は愛されてなどいないのだと手を降ろしそうになった時だった。


「ダシャ。来るわよ。」


 後ろからココレットの声がしたかと思うと、雷鳴が轟き、稲妻が走る。


 一瞬、眩いばかりの稲妻に皆が視界を奪われた。


 そして次の瞬間、ダシャの体は長い肢体をした竜の尾に抱かれていた。


『呼んだか?ドラゴニアの新たなる王よ。』


 金色の鱗は太陽の光を浴びて虹色に輝き、その瞳は空を映し出したかのような深い青。


 竜神は嬉しそうにダシャの頬へとすり寄り、そして瞳を輝かせた。


『王をいじめようとする奴らは懲らしめられたか?』


 その言葉に、ダシャは困惑しながらも恐らく病の事だろうと察すると慌てて言葉を返そうとしたが、ココレットが小さく咳払いをする。


 ダシャはココレットへと視線を向けると、ココレットは口を動かす。


(おちついて)


 ダシャは頷き返すと、呼吸を繰り返してからゆっくりと言った。


「お会いできて光栄でございます。竜神様、こらしめる、とは?」


『お前はいじめられていただろう。だから、皆に分かるように、病を撒いてやった。お前を王にしなければならないのに、それが分かっていないようだったからな。』


 楽しそうな口調の竜神の言葉に、皆が息を飲む。


 人の理が罷り通らないのが人外である。


 ダシャはゆっくりとしたっ口調で言った。


「心遣いありがとうございます。ですが、病を治してほしいのです。」


 その言葉に、竜神の言葉に苛立ちが混ざる。


『なんだと?まだお前は王になっていないのに・・・病を治せ?』


 竜の苛立ちを現すように、小さな稲妻が空を駆ける。


「ど、どうか怒りを鎮めてください。」


『えぇい!何を言うのだ!我はお前の味方だと言うのに、我の思いが届いておらぬのか!?』


 ココレットはすっと慌てるダシャの横に立つと、竜神に頭を下げて、そしてダシャの方を見て言った。


「ダシャ様。お心を鎮め、どうか練習通りに。」


『何だこの娘は?!』


 ダシャは事前にココレットと打ち合わせ、もしも竜神が怒りを露わにした時にはどうしたらいいのかなど練習をしていた。ただ、その内容には疑問があり、今この時点で使って、大丈夫なのかと心配になる。


 だが、ココレットの真剣な眼差しを受けて、ダシャは羞恥心を押し殺すと、竜神に抱き着いて言った。


「竜神様!助けて下さってありがとうございました。大好きです!」


 ココレットがダシャに教えた戦法。


 大好き作戦決行である。




ローワンが執着心全開になってきました。

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