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十九話 ここはどこ?

読んで下さりありがとうございます!

 体が渦に飲み込まれていくような、息苦しい感覚の中、ココレットは自分をぎゅっと抱きしめてくれる存在にしがみつき、一人ではない事に安堵していた。


 そして、気分の悪さは消えた物の、怖さから目を開けないでいると、優しく自分を呼ぶ声が聞こえた。


「ココレット?大丈夫?」


「え?」


 目を開け見上げると、そこには自分を抱きかかえるローワンの姿があった。


 抱きしめられているという現実に、ココレットは目を点にする。


「え?え?あわわわあ!」


「え?ココレット、大丈夫だよ。お暴れないで。」


 突然の事に手足をバタバタすると、さらにぎゅっと抱きしめられ、ココレットは動きを止めた。そして、ローワンが自分を抱きしめている理由を知る。


 二人は、断崖絶壁の崖にいた。


 ココレットは顔を青ざめさせるとコクリコクリと人形のように首を縦に振った。


 ローワンはそれにほっとしたような表情を浮かべると、ココレットを抱きしめる力を少し緩めて言った。


「ココレット。せっかく王宮に遊びに来てくれたのに、こんな事になってごめんね。」


「え?」


「連絡は受け取ったんだけれど、ちょっとタイミングが悪くてね。」


「あ、いえ。私ちょっと王宮を探検してみようとか、軽い気持ちで・・その・・すみません。」


 その言葉に、ローワンはココレットの唇を指でちょんと押すと言った。


「口調。それに、母上も私もココレットにはいつでも来ていいと言っていたんだから、それはいいんだよ。ただねぇ・・タイミングが。実は第一王子の毒の一件で、ドラゴニアから使者として第十三王子が子竜を連れてきたんだよ。それがいなくなって大騒ぎでさ、魔法使いを総動員して探している時に、ココレットが来たっていうわけ。そして、子竜の発動した魔法陣によって、今ここに飛ばされてきたっていうわけだ。大変大変。」


 少しおどけた口調でローワンが話すものだから、ココレットはくすりと笑った。それにローワンは微笑むと、ココレットの頭を優しく撫でた。


「本当に、君が一人で飛ばされなくて良かった。」


「ローワン様・・迷惑かけてごめんなさい。」


「いやいや、悪いのは王子と子竜だから、ココレットは悪くないよ。さぁ、じゃあ頑張って、まずはここがどこなのか調べなくちゃね。ココレット歩けるかい?」


「ええ。歩けるわ。」


 散策用にと歩きやすい靴を選んでいてよかったとココレットは内心ほっとしながら、ローワンから離れて立ち上がった。


 人一人が歩ける程度の断崖絶壁の岩壁であり、ローワンとココレットはゆっくりとどうにか歩いていくと、どうにか平地へと移動することが出来た。


 岩ばかりだった場所を抜けたのか、平地ではあるが木々が生い茂っており、深い森が今度は目の前に現れた。


「崖に、今度は森か・・・下手をしたらここはヴェールガ王国じゃない・・な。」


 ローワンの言葉に、ココレットは不安になり、ローワンの服の裾をぎゅっと握った。


 その可愛らしい仕草にローワンは温かな視線をココレットに向けると、ココレットの手をそっと握った。


「はぐれるといけないから、手を繋いでいこうか?」


 その言葉にココレットは素直に頷いた。


 手を繋いでいるだけで、不安が少し和らぐ。


 森の中に入ると、木々の匂いが広がった。豊かな森なのだろう。土に積もった枯葉は腐葉土となり、地面をダンゴ虫が歩いている。


 ココレットは木々の合間から見える空を見上げた。


「私・・こうやって森の中を歩くの初めてです。」


「え?」


「屋敷から出ることもめったになかったので・・だから、不謹慎だけれどローワン様とこうして森の中を一緒に歩けて、幸せです。」


 思った事を素直に口にされ、ローワンは少し恥ずかしくなり、視線を逸らした。


「・・ココレットには、初めての事がいっぱいだね。」


「え?」


 照れ隠しのようにローワンは口調が早くなる。


「だから、私も、ココレットが初めて体験することを一つ一つ大切にしたいと思う。それなのに、初めての森散策がこんなに突然何て・・あ、でも、こうしてゆっくりできる時間はあまりないから、案外ドラゴニアの子竜には感謝なのかもね。」


 その言葉に、ココレットはきょとんとしたが、確かにそうかもしれないと頷いた。ローワンは常に忙しいのでこうしてゆっくりできる時間は貴重だ。


「なら、楽しんだ方が勝ちね。」


「そうだね。」


 二人はくすくすと笑いあうと森の中を手を繋いで歩いていく。その、森の中の先になにがあるのかも知らずに。


 人の気配などない森だったが、進んで行けばそれは変わっていく。


 森の中に、道らしきものが現れ、そしてローワンとココレットはそれに沿って歩いていく。そして、その先に見つけた小さな村を、森の影から見つめて目を丸くする。


 小さな村の周りを囲むように至る所に魔法陣が描かれており、出入り口と言う所には数人の騎士が立っている。


「これは・・・」


 ローワンは眉を顰め、ココレットも眉間にしわを寄せる。


「村を魔法で封じているみたい・・・。」


 地面に描かれた巨大な魔法陣を、ローワンは王宮にある書物にて見た事がある。


 あれは。


『封じの魔法陣・・・』


 ローワンとココレットの声が重なった。









少しでも楽しいと思っていただけるような小説だったらいいなぁと思います。

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