十一話 魔法使い達は大興奮
感想をたくさんいただけて嬉しいです。お返事したいのですが、とりあえず小説を書く方に専念してお返事書くのを我慢します。すみません。でも、すごくすごくうれしいので、ありがたく全て読ませていただいてます!!!
ココレットは庭へと着くと、おずおずとした様子で言った。
「えっと、ここが私の庭です。その・・珍しいものなどない庭ですけれど。」
そこまで広い庭ではない。人一人で手入れが行き届くことが出来る、小さな庭だ。しかし、そこに生えている物を見た瞬間、魔法使いらは目を丸くて言葉を失った。
ローワンはルートに尋ねる。
「どうだ?私はあまり薬草に詳しくないが、ルート魔法使い長はわかるのだろう?」
ルートは今までに見た事が無いほどに瞳を輝かせると、ココレットの両手をがばりと取り、両手をぎゅっと力いっぱいに握るときらきらとした瞳で言った。
「素晴らしい庭です!これほの宝の山が、男爵家の庭にあるとは!どういう仕組みなのかは知りませんが、なんということだ!」
ローワンは眉間にしわを寄せるとルートの手を叩き落とし、ココレットと引き離した。
ココレットはルートの変わりように驚いたのと、ローワンが自分とルートを引き離す行動に出た事に、少しだけ胸が高鳴った。何となく、こう嫉妬とか独占欲とかそうしたものを感じるような仕草に感じたのだ。
-もしやローワン様は私の事を?っきゃー!ふふふ!婚約者だものねー。
なんて事をココレットは頭の中で考えるが、実際の所はルートの性癖を未だ疑っている故の行動である。
「それで、ルート魔法使い長。目的の植物は?」
「あ、少しお待ちください。確認してまいります。」
ルートや他の魔法使いらは庭を隅から隅まで調べ始めており、ココレットはそれを心配げな様子で見つめた。
ローワンはきょろきょろと魔法使い達の様子を見つめるココレットに、静かな口調で言った。
「婚約者になってもらった直後に、すまないな。・・ちゃんと婚約者らしいことが出来ずに申し訳ない。」
「え?あ・・いえ。」
「そうだ。まだ受け取ってはいないんだが、匂い袋のプレゼントを作ってくれたのだな?ありがとう。」
ローワンが笑顔をココレットに向けて礼を伝えると、ココレットは頬を赤らめて頷いた。
「はい。初めて人にプレゼントするので・・気に入ってもらえるといいのですが。」
「初めて・・か。嬉しいものだな。王宮に帰った後必ず受け取る。・・・ありがとう。」
爽やかな笑みを浮かべるローワンを見上げ、ココレットは王子様とは本当にこうキラキラと輝いて見えるのだなと惚けている。
「そう言えば、ココレット嬢は何故庭で植物を育てるようになったのだい?令嬢の趣味にしては珍しいね。」
普通令嬢は日に焼けることを嫌う。だがココレットにはそうした様子は見られないし、庭に生える美しく咲く花々を見れば、しっかりと手入れをしているのだろうと分かる。まぁ、実際の所そこまで手入れは行っていないのだが。
ローワンの問いかけは、ココレットにはどう返したらよいものか悩むものだった。
前世のココレットは、一人の時間が長かった。話し相手もおらず、ただ時間がゆっくりと流れていく。そんな時間を紛らわしてくれるのが植物の世話だったのだ。
世話をする時間はココレットにとっては楽しみであり、だからこそ、今世も続けていた。
「私は、植物の世話が好きなんです。その・・令嬢らしくはないのですが。もしかして、ろ・・ローワン様はそうした令嬢はお嫌いでしょうか?」
手をもじもじとさせながら頬を赤らめるココレットに尋ねられ、ローワンは初めて名前を呼ばれたともあって、照れ臭くなり言葉がぎこちなくなる。
「え・・いや、嫌いとかはない。むしろ、育てられて凄いなと・・」
「本当にですか?・・良かった。」
何とも言い難い、ピンク色の雰囲気である。甘い。そして、恋愛に不慣れな二人だからこそ一歩も進む気配がない。
庭を大体調べ終えたのか、ルートが難しい表情でローワンの元へと小走りで戻ってきた。
ローワンは表情を引き締めるとルートの言葉を待つ。
「第二王子殿下。目的の植物、全てありました。これは、奇跡としか言いようがありません。」
ローワンはその言葉に、大きく安堵の息を吐いた。しかし、ルートの次の言葉に緊張を走らせる。
「ただ、これからその植物を乾燥させるなどの手間が必要となります。一つでも間違えば、治療薬は完成できないので、まだ安心するには早いかと。」
その言葉にココレットは説明なくともレオナルドの治療薬を作ろうとしているのだなと悟る。
-なるほどね。確かに私の庭になら、薬草はそろっているわ。あぁ、それなら小屋の乾燥させている物を使った方が早いんじゃないかしら。
「ローワン様。ルート様。私、庭の植物を乾燥させたり、煎じたりして保存もしているんです。ご覧になりますか?」
ローワンが答えるよりも先にルートが勢いよく返事をする。
「見せて下さい!」
あまりにも勢いがいいものだから、ココレットは若干引きながら、庭の先にある小屋へと二人を案内した。
「結構匂いがきついので、あまり長時間はいられませんが、どうぞ。」
白い扉を開き、中に入ると植物の匂いが一瞬にして鼻先を抜けていく。甘い匂いや少し刺激のある匂い、様々な匂いが混ざっており、ローワンは鼻をハンカチで覆った。ルートは天井や壁にぶら下げて干してある植物や、瓶に詰められている煎じられている薬草を見て言葉を失った。
「ルート魔法使い長、どうだ?」
「・・・・・完璧です。これと・・あと、これと・・・あぁ、これも使えます!すごい。これは・・本当に凄い。」
ココレットは今まで誰にも話したことのない趣味が認められているような気がして、少し照れくさそうに頬を掻く。
「お力になれそうなら、良かったです。でも、ここにある植物全て、そんなに珍しいものではないと思うんですが・・・」
おずおずとした様子でココレットがそう言うと、ルートはその言葉に眉を吊り上げた。
「ご令嬢。一体全体、そんな出鱈目を誰に言われたのです?」
「え?」
頭の中をよぎっていくのは、赤髪を後ろで一つにくくり、そばかすのある顔に糸目の瞳をした少年である。神殿に務めている神官であろうヴィアンという少年は、前世のココレットを馬鹿にするように笑って言ったのだ。
『そんな価値のないものを育ててどうするの?まぁ、仕方ないから僕が買い取ってあげる。』
ココレットを見かける度にヴィアンは顔を歪めて意地悪く言った。
『珍しくもなんともないんだよ。こにある植物。僕が買い取ってあげるんだから、感謝してよね。』
自分に対して口が悪い人と言うのは珍しく、ココレットは嫌いではなかった。いつも笑顔ばかり張り付けて心の中で自分を馬鹿にする者達よりも好感が持てた。
前世のココレットにとってお金を稼ぐという事は興味がある事ではなかった。だから別に金額はいくらでも良かったのだが。ルートの言葉に、自分が嘘をつかれていたのだということには少しばかり落ち込む。
「ここにある植物は、本当に珍しいものばかりです。ここにある植物全てを売れば、城下町の一等地も買えますよ。」
前世はお金に興味のなかったココレットだが、今世は違う。貧乏男爵家にはお金が必要だ。出来れば馬車をふかふかのクッションのある、お尻に優しいものに買い替えたい。そして、王宮にあったようなふかふかのソファを買ってみたい。実に小さな野望である。
ココレットは瞳の色を変えた。それを見て、ルートはにっこりと笑うと言った。
「しっかりと見合った金額を支払います。ですので、王宮と独占契約を結んでいただきたい。」
王宮ならばぼった来るようなことはしないだろう。ココレットは満面の笑顔で頷いた。
ルートはその様子に安堵すると、ローワンの方へと視線を移して言った。
「必要な物は手に入りました。私はそれらを持って一度王宮へと帰り、治療薬作りに取り掛かります。ご令嬢。私の部下はここに残していってもかまいませんか?使った薬草などの支払いは後程まとめていたしますので。」
「はい。かまいません。」
「ありがとうございます。では第二王子殿下一度失礼いたします。」
「あぁ。よろしく頼む。」
ルートは先に王宮へと戻り、ローワンはココレットに向き直ると、ココレットの両手を取り嬉しそうに笑顔を向けて言った。
「ココレット嬢。ありがとう!君のおかげで兄上は・・・兄上は助かるかもしれない!」
きらきらと輝くような笑みを向けられて、ココレットは顔を赤らめ、胸がきゅんと高鳴るのを感じた。王子様はこんなにも輝いて見えるのだなと惚けた顔をしながらココレットは思った。
ココレットの庭は大活躍です。私だったら庭に大量の果物植えますね。いつでも食べ放題。
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