十話 お家訪問
なかなか、ココレットとローワンさんのいちゃつきがかけないです・・・頑張ります!
ローワンはココレットを馬車まで見送った後、すぐにレオナルドの所へと向かう。
室内には国王であるアーサーや魔法使い長のルート、レオナルドの主治医のガジルの姿があり、ローワンは現状を自身の側近であるシンから聞く。
「現在、レオナルド殿下の部屋は魔法使い達によって調査中です。部屋の中にあったのは一輪の隣国ドラゴニアに生息する毒花ということです。レオナルド殿下は今ガジル様が診察中ですが・・体内にかなりの毒素が貯まってしまっているようです。」
ローワンは頷き、アーサーの横へと向かった。アーサーはローワンの姿に気が付くと、レオナルドの肩に手を置いた。
「原因さえわかれば、どうとでもなる。レオナルド、しっかりな。」
「父上・・すみません。ありがとうございます。」
アーサーは頷き、ルートとローワンに視線を送ると別室へと移動する。
ソファへと腰掛けるアーサーの前にローワンは腰掛け、ルートは机の上へと魔法で映像を浮かべると言った。
「このドラゴニア国の毒花名前をルナ草といいます、ドラゴニアでも簡単に手に入る代物ではありません。しかも・・この王宮内の第一王子殿下の部屋にどうやってあの花がもちこまれたのかは不明です。第一王子殿下の体内に蓄積された毒の量からいって、三ヶ月ほど前からではないかとガジル殿は言っていました。」
三か月前といえば、建国祭が開かれた時期である。つまり、その時期から何者かがレオナルドの部屋にドラゴニアの毒花ルナ草を仕掛けた事になる。
しかし問題は、部屋は何度も魔法使いや騎士らがチェックしていると言うことである。つまり、何者かが国に悟られないようにルナ草を定期的に入れ替え、レオナルドの部屋に置いたという事だ。
「ですが、とにかく第一王子殿下の体調不良の原因が判明したことは良かったと言えるでしょう。ドラゴニアのルナ草が原因だとは中々に考え付かないですから。」
ルートの言葉にアーサーとローワンも頷く。これまで原因が分からなかったからこそ手の打ちようがなかったが、ルナ草が原因と分かれば、治療も出来るはずだ。
「ただ、問題が。」
「なんだ?」
ルートは眉間にしわを寄せて言った。
「十数年前までは、我が国ヴェールガ国にも何故か珍しい薬草がよく出回っていたのですが、現在は少なく、ルナ草の治療薬を作るには、薬草が足りないのです。取り寄せるか、魔法使いを何名か派遣して集めに行くとしても一か月はかかるかと。・・毒素の量からいって、聖水を飲み続けても・・間に合うかぎりぎりかと。」
その言葉にローワンは頭を抱え、アーサーは難しい顔を浮かべる。
「聖女を・・聖女を見つけても難しいか?」
ローワンの言葉に、ルートは首を横に振った。
「普通の病気であれば、聖女の力も効いたでしょう。ですが、毒は別です。聖女の作った聖水によって体力は取り戻せても、毒は消えません。聖女本人が居たとしても、治療薬を作らねば意味がないのです。」
「何か、何か方法はないのか!?」
ローワンの言葉に、ルートは動きを止めると、視線をさまよわせてから腕を組んで唸り声を上げる。
その様子にアーサーは口を開いた。
「何か、可能性があるなら申してみよ。」
ルートはちらりとローワンを見ると、おずおずといった様子で懐から匂い袋を取り出し、それをローワンとアーサーへと見せた。
「これは?」
「第二王子殿下の婚約者のご令嬢が、殿下らへのプレゼントにと作った匂い袋だそうです。」
突然何を言い出すのだとアーサーとローワンがルートへと視線を向けると、頭をぽりぽりと掻きながら、ルートは言った。
「真に、真に信じがたい事なのですが、この匂い袋の中に詰められている薬草は、この国では中々手に入りにくい珍しいものばかりなのです。それをご令嬢は自宅の庭で育てていると・・・嘘か真かは見て見なければわかりませんが、もし本当にこの薬草が自宅に生えていると言うのであれば・・・可能性としては治療薬となる薬草もあるかもしれません。」
「本当か!?」
ローワンは勢いよく立ち上がり、ルートは頷いた。
「はい。ただ、あまり期待はしないほうがいいかと。ご令嬢は気づいていませんでしたが、この匂い袋に入っている薬草は、珍しいものばかり。庭にほいほい生えるわけはありません。」
その言葉にローワンとアーサーは頷く。そしてアーサーは言った。
「では、可能性を信じ、ココレット嬢の元へ調べに行ってくれ。ローワンも一緒に同行するように。」
「分かりました。殿下、陛下、ルナ草の治療薬の作り方を確認するために一日いただきます。ですので、ご令嬢宅には明後日に向かう手筈にしてもよろしいですか?」
「分かった。」
そんなやり取りがあったとはつゆ知らず、ステフ家はローワンが自宅へとやってくるという手紙が届いた直後から大騒動である。
王族など招いたことのない貧乏男爵家である。
一日しか猶予がないということに、大騒ぎとなり、いつもはおっとりと動いているシシリーが高速で掃除をしていく。ココレットは俊敏に動くシシリーを見て、そんなに動けたのかと驚いた。
父と母はそれぞれ王子に出すお茶やお菓子の準備を整え、警備体制については城へと連絡を取ってどのようにするのか手筈を整える。
ココレットはローワンが庭を見たいと手紙に書いてあったことで、庭の手入れに力を入れる。
ステフ家は一丸となって家を出来るだけ見栄えがいいように整え、庭を整え、お持て成しをする準備を整えた。これ以上は一日では無理だと言う所まで頑張ったからこそ、出迎えの時にはどうにか笑顔を浮かべていたのだが到着した一行を見て、皆がその笑顔を一瞬で消した。
ローワンを先頭に、後ろから魔法使いが大勢着いて来る。
護衛の騎士ならばまだ分かる。だが、着いて来ているのは魔法使いでありステフ家一同内心パニックである。何か魔法使いが出てくるようなことがあっただろうかと考えるが、貧乏男爵家にはそんなことあるわけもない。
そんな動揺するステフ家一同に、ローワンは挨拶を簡単に済ませると、ココレットに言った。
「ココレット嬢。今日は突然すまなかったね。手紙にも書いたが庭を見せてもらえるだろうか。事情を詳しく話せなくて申し訳ないが、全て解決すれば、きちんと話すので。」
ココレットはその言葉に慌てて頷いた。
「も、もちろんです。あの、こちらです。」
何のための魔法使いたちなのだろう。そう皆思っていたが、ココレットを先頭にしてローワン、魔法使い達は移動していく。
ココレットの両親はその様子を見守りながら、顔を引きつらせた。
「大丈夫かしら。ココレットのお庭・・変なものばかり生えているから・・怒られるのかしら?」
「う・・・うむ。趣味だからいいかと思っていたが・・変わった植物ばかりだったしな・・・。」
娘が何かしらの罪に問われるのではないかと、ココレットの両親は顔を青くするのであった。
そして今一番顔を青くしているのは、ココレットである。
-どうしましょう。・・私、やらかしたのかしら。育てちゃいけない植物でもあったのかしら?あぁ分からない。とにかく、とにかくローワン様に嫌われないようにしなくちゃいけないわ。婚約破棄だけは、婚約破棄だけは阻止しなくちゃ!
第一王子の命を救うため、一行がわずかな可能性にかけてこの庭を訪れているとは露程思わないココレットである。
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