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悪意のある普遍的な思想

死者の夢

作者: レー・NULL

 明日この肉体を動かすのは、自分であるという保証はない。昨日の自分が、今日の自分と同じものであるという証拠はない。一年前の自分が、同じ自分であると、どうやって信じられようか。我思う故に我在り、そんなあやふやな中で、自分が自分であることに疑いを持っていない。


 テセウスの船は、悪魔の問いを遺す。水を含んだ小さな袋を、その限定的過ぎる材料で、酷く原始的なコンピューターを構築した。さながら、石に石をぶつける発火現象であり、被覆の剥がれた導線である。迷子になった信号は、そのまま忘却を促すだろう。空想上のハードディスクには、誇大妄想が刻まれている。


 デイ、ダイ、デイ。日々消える死者の夢。ヨウ、イン、ヨウ。日々浮かぶ新人格。デジタル点滅カチカチと、偽装のアナログ波打つ心音。鏡見えども、自身は見えぬ、あくまでこれは、死者の夢。


 例えば試験管の中として、それが自分であると保証しよう。腕無くとも触れられて、眼が無くとも見える世界。いつもの日常を送る路上で、一人だけの世界であると、どうして疑いを持てようか。我思う故に我在り、そんな確信の中で、自分が存在している事に疑いを持てないだろう。


 二重スリット実験は、答えを見出すことにした。シュレーディンガーの猫が、どれほどまでに難解であろうとも、世界とはとても単純なものだったのだ。量子的な思考が無かったとしても、それは認識の違いであり、両者の生きる世界の違いでもある。結局、見えない者に見える事を説明するのは不可能だ。


 デイ、ダイ、デイ。日々消える死者の夢。ヨウ、イン、ヨウ。日々浮かぶ新人格。デジタル点滅カチカチと、偽装のアナログ波打つ心音。鏡見えども、自身は見えぬ、あくまでこれは、死者の夢。


 我思うだけの死者の群れ、我在ると妄信の死者の群れ。あくまでこれは、死者の夢。今を生きている人には必要無いし、きっとその光景を目にする事は無いでしょう。

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