013 『やりたく無いリスト始めました』 春の一月、四の日
■春の一月、四の日 其の一■
馬場和子です。
今日で姫さまにお会いしてから四日目がたちます。
あたしは人生で二回目の生まれ代わりによりサポーターになりました。
その後、立派な土地付きの一軒家を姫さまに頂きましたので命がけのご奉仕をする所存です!
大事件です!
何という事でしょうか。
見捨てられた村が存在するのだそうです。
こうしてはいられません! スペさん・アイさん、参りますよ!!
そう意気込んだあたしでしたが、色々と準備があるようなので一晩過ごすことになりました。
そして、あたしはお話がしたいと、まんまと姫さまのお布団にもぐり込むことに成功!
一夜を共に過ごす事が出来ました。
マイホームなにそれ? おいしいの? 姫さまと寝るほうが断然おいしいですよね? 正義のなのもとに役得です!
夜が明けて、準備&いくつかの装備を整えて。改めて出発です。
あたしの準備はスキル習得と装備の完備ですね。
スキルは個人向きからパーティ向きっぽいのまでありました。
[筋力アップ] 筋力を追加上昇させる
[運搬] 運搬力が増加する
[説得] 説得が上手になる
[ハンド オーバー] 仲間にアイテムを手渡すのが上手くなる
[収納拡張] 収納スペースが増加
[パーテーション格納] アイテムごとに格納収納可能
[スタック格納] 同じアイテムを重ねて収納できる
[偽装] マジックポーチを偽装できる
なんだかいっぱいです。
ちょっとマジックポーチを拡張させ、出来る限りの肉を……。
もとい。
肉多めの食料と水を収納。
装備はスペインさんに動きやすい革製品を見繕って頂きました。
なめし革の一式【鎧・ガーター・小手・靴】
武器にダガーナイフ(短剣)これは良さそうな一品です。
衣服もスカートから動きやすいショートパンツに変更していただきました。
足の露出範囲が広いので対策も必要ですね。
「何とかなりますか? スペインさん」
姫さまのガーターをお借りしました。もらっていいですか?
「いいけど~」履かずに宝箱に収納したい気持ちもありますが。姫さま感を味わいたいので履いてみました。
「わ~ぉ!」これニーソックスだー!
ババカズコは姫のニーソを手に入れた! パカパカ、パパッパン♪
「あの~申し訳ないですけど。観賞用と保存用も用意していただいていいですか?」
結局、色違いを頂きました。白、青、黒の三色です。
尚、黒は装備中です。
宝箱が欲しくなってきました。
「ひとまずマイホームに奉納してきますね!」
あらためまして。
サイカ姐は革製品一式とコンポジットボウ(複合弓)
矢筒には普通の矢とは別で命中力を高めた矢が数本入っているそうです。
ちょっとズルイと思いました。
姫さまも白のワンピースドレスから黒のなめし革の衣装にチェンジです。
あたしとペア感が出て嬉しいです。
アイスさんとスペインさんは代わり映えしなかったので割愛です。
さて。
見捨てられたと言われる村の所在地を確認します。
正確な場所は分からないが(よく覚えていない)都市から魔界の間らしいです。
都市から街への道中にはありませんでしたよね?
都市との行き来もなく道が繋がっていないそうです。
そんなところに人が?
まぁ始まりの街も大概ですけど
こんなところに人が!!
都市の人からしたらあたしたちの方がびっくりかもしれません。
きっとそうなのでしょうねー。
そうそう。
今回は全員総出です。
そして歩きです。
道が無いので馬車が使えないのだそうです。
そして馬車が無いので危険が一杯なのだそうです。
なんでも馬車には魔物避けのアイテムが組み込まれているようで魔物に襲われないのだそうです。
えっとー、威圧石とかいうのだそうです。
それ外れません? 取り付けてあるので外せました。ですよねー。
それは何よりです持っていきましょう。
しかしながら、ちょっとあたし思うのですけどー。
この5人パーティは前衛職がいませんね。
有事の際に非常に危険な気がします。
大丈夫ですか? 姫さま?
「大丈夫任せて!」
ど~んと胸に手を当てた後にアイスさんを指さしました。
「アイスに~」イヤ、前衛職……。
流石は他力本願です! そこまで人任せとは恐れ入ります。
任せます! 祈ります!
姫さまには疎外スキルもあるそうです。
更に良かったです。
でも、魔物自体は居るんですよね?
弱いのばかりであまりレベルアップもできない?
何故なのでしょうか?
サイカさんもあたしも超弱小なんですが。
「アイスが強すぎるからなの~」
高レベルプレイヤーが居るとパーティレベルが高くなりすぎて経験値蓄積が得られないそうです。
□パーティレベルの試算□
(最大レベル者+パーティ平均レベル)÷2<切り上げ>
現在パーティレベル17
具体的には12~22レベルぐらいの敵を倒さないとなのだそうです。
ちょっと残念な気もしますね。
でも安全が第一です。
冒険者の人たちはどこで魔物狩ってくるんですか?
「ダンジョンとかダンジョン?」
やっぱりあるんですね。ダンジョン。
え? うちの街にもある??
どういう事???
知らなければよかったかも知れません。
安心して寝られる気がしません。
いっそ金色のゴーレムさんを起こして守ってもらう方がいい気がしてきました。
もしくは地下シェルター的な構造物の中で寝るとか。
村には入ってこない?
余程のことがない限り領地には入ってこないそうです。
ちょっとは安心なのかな?
よくわからないですねー。
帰宅したら調べねば。
いえ、調べさせねば!
それはさておき。
こんな所に本当に村があるんですかねー?
人が通った気配がありません。
獣道のような所を進んでいます。
姫さま一行は村を立ち上げる際に周辺調査を行い、いくつかの村に遭遇したのだそうです。
村3つで細々と独立した農村。
そんな所は魔獣がフラリと訪れただけでアウトなんじゃないんですかね?
ええ、アウトでした。あたしたちが……。
森の中を進んでいたあたし達でしたが地響きが鳴り始めました。
「地震ですかね? 姫さま」まだ呑気なあたしがいます。
「地震ってなぁ~に?」エッとー。どう説明すればいいのやら?
「この地響きの事~?」ええ、そうです。地面が揺れる現象の事を総称で地震と呼びます。
地響きがドンドン大きくなり、地面の縦揺れもドンドン大きくなってきます。
「アースクエイクという魔法がありますな」スペインさんがそう言います。
魔法攻撃でも食らっていると? なんだか『ズドーン! ズドーン!』と鳴っています。
そのたびに地面が揺れ振動がやってきます。強い縦揺れが起こるのでその度に両足で踏ん張ります。
段々と近づいてませんか? この地響きと揺れ?
ミシミシと木々がなぎ倒される音も聞こえてきます。近づいてきてますね。
ん?
「姫!」スペインさんが叫びます。一同が姫さまに振り向きます。
大きな影がやってきて『ズガーン!』と音と共に辺りを踏み抜きました。
「姫さまー!」姫さまが居た場所に壁が落ちてきました。一面壁です。土と岩の壁です。
思わずどこからと見上げます。
「全員離れるのです!」スペインさんが叫びます。あたしも我に返り走り出します!
スペインさんが姫さまを押しのけていたようで二人も走り始めています。
反対方向です。こちら側にはアイスさんとサイカ姐がいます。
影がゆらりと動きました。木々がなぎ倒されていて日光が差し込んできます。
まずいです! 影は姫様の方に動いています。
もう一度、上を見上げてみました。
山があります。
山が居ます。
山が揺れています。
山が動いています。甲羅の様な山、足は象。それも特大の丸いビルほどの足。
「アイスさん! アレ何!? 何とかしてー」
「ん!」アイスさんは思いの丈を受け止めてくれたのか、体の周りにオーラの様なものを展開し始めました。
「カズコなんで山が動くんだ!?」知りません!!
「ん!」アイスさんの周りのオーラが冷気の嵐となって具現化していきます。
「ちょっと向こうには姫さまが居るんですよ!?」ほとばしるアイスさんの魔法によって岩土の壁の表面がちょっぴり凍り付きました。
「姫様ー!!」
「カズコ~逃げて~!」なんでそんなにゆったりなんですかー!
逃げてる場合じゃないような気がします。
「姫さまが死ぬときはあたしも死にます!」言ってみたかった台詞を吐きながら姫さまが居るであろう方向に走り始めます。
少し凍り付いた壁が持ち上がります。「姫さまー! 踏み抜かれます!」どう考えても姫さまを狙っています! アイスさんの攻撃でダメージがあるようにも見えませんし全く気も引けていません。姫さまを狙うのはあたしだけでいいんです!
きっと姫さまを狙う原因があります。考えるんだあたし! ヘアバンドをあげなおし前髪を上にあげます。
デカイ山の何かが踏み荒らしている。狙われているのは姫さま。二手に分かれて人数も2対3でこちらが多く、アイスさんの攻撃にも反応しない。スペインさんも一緒にいるが初手が姫さまであったのは間違いない。姫さまの魅力に気が付いているのはあたしだけのはず? 姫さまに引き付けられる理由!
「姫様! 威圧石です! 威圧石が狙われています!!」
「わかった~」緊張感をお願いします!
姫さまが見えてきました。姫さまは走りながら腰のベルトを外しました。
この切羽詰まったこのタイミングで脱ぎ始めるのですか?
違いました。ベルトをグルグルと回し始めました。何をやっているんでしょうか?
「え~い!」姫さまが回していたベルトを大きく投げるように振り回しました。
何かが明後日の方向に飛んでいきます。おそらく威圧石でしょう!
姫さまが回れ右して反対方向に走っていきます。あたしもそちらへ向かいます。
『ズドーン!』ビルの様な足が明後日の方向を踏み抜きます。
「姫さまー」「カズコ~ありがと~」まだです離れましょう!
一目散に離れるあたし達をスペインさんが追ってきています。アイスさんも見つけてくださったようで近づいてきます。おまけにサイカ姐も。
「あぶなかったですね。随分離れましたか?」
「とはいえ2、3歩も歩かれればここもどうかと思いますが」
「動きはゆっくりですが大きすぎて一歩の範囲がわけわかめです!」
「わけわかめは美味しいの~?」姫さまあたしみたいな台詞は吐かないでください。
「美味しいのはカズコだけです。お召し上がりください!」
「アハハ」ようやく一同に笑顔が浮かびます。
もう少し離れていきましょうね念のために。
間違いなく威圧石狙われていましたねー。
「あぶなかったの~」全然危なそうに聞こえませんが、紙一重とはこの事をいうのだと思います。正直実体験したくないものです。
「で? あれは何ですか? 山ですか? 別世界は山が動くんですか? 山ってなんですか?」山の定義がわからなくなってきました。
「別世界の方は~よくわからないけど~山は動かないとおもうの~よ?」動いてますやん! ましたやん! 関西人の本性が騒ぎ始めています。
「あれはベヒモスですなぁ~山の様な甲羅を持つカバの様なサイの様な象と言われております」
よく見えなかったので確かではありませんけど部分部分がそんな感じだった気がします。あれを見て生きてる方が不思議だと思います。魔界不思議ですかね? おっとこちら側、魔界じゃないですね。そして、カバなのかサイなのかゾウなのかハッキリしてください。そして、あたしはババで姐さんはサイです! 痛ッ蹴られました。
「ゾウですなぁ~」スペインさんに落ちをかっさらわれました。錬金術師と書いてシーフと読みますよ? 錬金術師。
「ベヒモスはそこら中にいるもんなのですか?」
「ベヒモスは大精霊ですので見ることなどはまずありえないのですが」
「でも、居ましたよね?」精霊ってなんやねん! っていうのがあたしの正直な気持ちですね。
「精霊は本来~かわいいのよ~?」イヤあれ可愛くないですよね? デカイだけ!
「うちの街の精霊はフォーセリアよ?」またなんのこっちゃ案件が浮かび上がりましたね。
はい。姫さまの~精霊講座ー!
・火の精霊 サラマンダー → 炎の精霊 イフリート → 核の精霊 フェニックス
以下、精霊略
・土 ノーム → 山 タイタン → 大地 ベヒモス
・水 ウンディーネ → 湖 ネッシー → 海 リバイアサン
・風 シルフ → 竜巻 ジン → 大気 ガルーダ
・草 スプライト → 木 ドライヤード → 大樹 エント
・雪 フラウ → 氷 フォーセリア → 氷河 フェンリル
で、なんで大地の精霊がこんな所に居るのよー!!
こちらの世界にきて初めて死ぬかも!? 体験をしました。これは[やりたくないリスト]を作って加えます!
死ぬかと思いました。
神一重と言いますが姫さまは二重です!
□カズコの後書き□
そういえばアイスさんあんな魔法をあたしに浴びせようとしていたのですか?
ベヒモスにとっては氷のつぶてかもしれませんが、あたしには氷のひつぎになりますのでご勘弁ください。
正直に言います!
ここでベヒモスでてくるのはあたしのせいではありません!……カズコです。




