10月26日-1
「はぁ…………っ……」
「…め、珍しいね、瞬くん。朝からあくびじゃなくて、ため息なんて…」
「まぁ……ね…。ふぅ………」
…いつもの道。いつもの時間。そして顔ぶれもいつも通りの、ごく普通の朝。でも、僕だけはいつも通り、という訳ではなかった。
昨日もさっさと早い時間に寝たおかげで、目覚め自体は悪くはなかった。でも…昨日突きつけられた現実に……、自分とソニアの圧倒的な差を思い知らされたことで、気分は相変わらず最悪だった。おまけに今日のお昼は母さんの都合で購買のパンなのだ。
…何なら体調不良で休みたいぐらいの気分の酷さだ。
「……はぁ……」
「ねぇ瞬くん。もしかして…何か悩み事…?」
「…いや、悩み事ってわけじゃないよ。悩んだって意味ないんだし…」
「ふぅん…。でも、もし何かあったらいつでも相談してね。私、いつでも瞬くんの味方だから」
「…………っっ……」
…まったくありがたい。本当に綾は僕にとって…最高の「妹」だ。
でも、こればっかりは相談してもどうしようもないのだ。綾に…、いや、誰かに話してどうにかなるような、助けてもらえるような話なんかじゃないのだから。
「ありがとな。綾。…気持ちだけ受け取っとくよ」
「うん。でも受け取って欲しいのは気持ちだけじゃないんだよ?」
「……え…?」
「今日のお昼、購買のパンか学食なんでしょ? だから……」
そう言うなり、急に綾がごそごそと通学バッグをあさり始めた。そして出てきたのは……。
「…じゃーん! 瞬くんの分のお弁当、作ってきたんだよ」
「お……おぉ………!」
思わず僕は言葉を失った。あの熾烈なパン争奪戦に負け続け、つい先日もどんな誰がターゲットなのか一ミリも理解できないような謎の創作パンを食べざるを得ない寸前にまで追い込まれた僕からすれば、これは渡りに船どころか、まさしく天からの蜘蛛の糸にさえ思えた。
「これは…ホントにありがたいや。でも…どうして……」
「…そんなのわたしがあーやに教えたからに決まってるでしょ。バカなの?」
と、僕からすればごく自然な疑問を口にした途端、絵依子がまたも急に話に割り込んできた。というか……。
「あ……なんだ、居たのか絵依子」
「…さっきからずううっと居ますけど何か? その目の玉、代わりにビー玉でも入ってんの?」
「わわ……え、エコちゃん、も、もうそのぐらいで…」
「……ふん」
「そ、それでね、エコちゃんの分もちゃんと作ってきたから、今日はみんなでお昼、屋上でどうかなぁって」
「はぁぁぁぁ……。う……うぅ……」
何かもう、僕は感動で涙が溢れそうにさえなってしまった。本当に綾がいてくれてよかった。思わず僕は手を合わせて、綾を拝んだのだった。ありがたやありがたや……。
「……? だ、だから…どうかな瞬くん。お昼…一緒に…」
「どうって…そんなの決まってるだろ。ありがたーく頂きます。絵依子もいいだろ?」
「そりゃ…別にいいけど……」
「よし、じゃあお昼に屋上に集合な。これで退屈な授業もなんとかやり過ごせそうだ」
…我ながら現金なもので、本当の一番の問題は何も変わらず、どうにもなっていないけれど、お昼の問題が解決したというだけで、僕の心はさっきまでとは比べ物にならないほどに軽くなった。まるで身体まで軽くなったみたいに、重かった足取りも嘘のように軽くなっていく。
「…あの…、…瞬くん? 授業はやり過ごすんじゃなくて、ちゃんと聞いてた方がいいと思うな……」
・
綾が何か言ったような気がしたけれど、僕はとりあえず聞こえなかったフリをして、軽やかなステップを刻み続けた。
「……では渡城、この英文を訳すと…どうなる?」
「むにゃむにゃ……」
「…渡城? おい、渡……」
「うっせーよ! 渡城は疲れてんだよ! 寝かせといてやれや!」
「は、はわわ…。で、では…日名瀬! 渡城の代わりに答えなさい!」
「え、は、はい。えーーーと………」
……キーンコーンカーンコーン……
どうにか何とか、寝たり落書きに集中することで授業時間を無事にやり過ごし、ついにお待ちかねのランチタイムがやってきた。
「おいーっす渡城。メシ食おうぜー」
「あ、ごめん。今日は先約があってさ。また今度ね!」
と、そこへ掛けられた声に振り向くと、そこには弁当の包みを持ったクラスメイトの福沢君がいた。でも今日は、今日ばかりは無理なのである。窓の外を見れば今日も見事な秋晴れだ。いい感じの空きっ腹を抱えて、さっそく僕は手ぶらのまま椅子から立ち上がり、教室を後にした。
…がちゃり。
「もお! 遅いよ、お兄ちゃん!」
「うぇ…っ? な、なんなんだ……いきなり……!」
乾いた音を立てて扉を開けた瞬間、いきなり飛んできた声に思わず僕は面食らった。扉の向こうにはなぜか絵依子と綾が仁王立ちで待っていたのだ。
「だ。大丈夫だよ、エコちゃん。時間はまだまだあるから…」
ふと周りを…屋上を見渡してみると、以前にも見たことのある顔が今日もいた。いわゆる常連という奴なんだろうか。
そしてその中には日名瀬さんの姿もあった。なるほど、彼女もここの、屋上の常連組だったということか。僕の存在に気がついたらしい彼女がこっちを見てきた。とりあえず僕も軽く右手を上げて挨拶すると、日名瀬さんも軽く手を振り返してくれた。
「お兄ちゃん! こっちこっち!!」
またぼんやりしかけていただろう僕に気づいたのか、先を歩いていた絵依子が大声を出しながら手招きする。あわてて僕は綾と絵依子の後を追って歩いたのだった。
屋上の外れの、やや人の少ない場所で、綾がピクニックにでも使うようなお座敷シートを広げた。そこへ僕たち三人が向かい合うようにして座る。
「…はい、どうぞ。腕によりをかけて作ったんだよ。いっぱい食べてね、瞬くん。……って、あ、あれ?」
バッグから出されたお弁当を受け取ると、次いでまたゴソゴソとバッグを漁っていた綾の手がふいに止まり、顔には焦りの色が浮かんだ。
「……? どうかしたのか? 綾」
「ご、ごめんね。私…うっかりしてお茶…入れてくるの忘れちゃってた…」
「なんだ、別にお茶ぐらいいいよ。…そうだ、なんなら今から買ってこようか?」
「うぅん、瞬くんは座ってて。私が買ってくるから!」
「……え、ちょっ…あ……」
そう言うなり、立ち上がった綾が脱兎のごとく駆け出して、屋上から降りていった。まさに止める間も暇もなかった瞬速の出来事だった。残された僕たちは、ただぽかんとするしかなかった…。
「……へぇ。あーやもこんな失敗するんだ」
「…そりゃ綾だって完璧超人ってわけじゃないからな。たまにはこんなこともあるだろ」
少し驚いた風な絵依子に、フォローになってるのかなってないのか、我ながら微妙なセリフを口にした。実際、綾は勉強はできるし品行方正で顔立ちだって決して悪くはない。でも少々引っ込み思案だったり地味だったりと、強いて言えば欠点……とは言えない程度のものはある。だからこんな失敗とも言えない程度のうっかりぐらいはあっても当たり前だろう。なにより、それぐらいの方が人間らしいってもんだ。
しかし10年以上の長い付き合いであり、家族同然の僕らからすれば、むしろ絵依子がそこまで綾のことを買い被っているのが意外だった。
ま、頭は悪いしガサツだし超幼児体型と、欠点だらけの絵依子からすれば、それでも綾はほぼほぼ完璧であるがゆえなのだろうか。
などと考えながらふとお弁当箱を開けると、そこには……卵焼きにアスパラのベーコン巻き、プチトマトに唐揚げ、そしてのりたまが振り掛けられた白ご飯という、彩りも配置も完璧な王道ラインナップ……、言い換えれば「絶対美味しいやつ」ってやつだ、これ。
考えてみれば、綾の作った料理やお菓子は子供の頃から何度も数え切れないほど食べてきたけれど、お弁当、となると何気に、意外に記憶にない。でもこれまでのことを思うと、これも美味しくないはずがないだろうと僕は確信できてしまう。
そしてぎっしりと詰まった中身は、お弁当箱のサイズ以上のボリュームに思える。どれもこれも、見れば見るほど超絶美味しそうだ。
さっきまでは程いい感じだった空きっ腹が、これを見た途端に一気に空腹レベルがマックスになってしまった。
いかん……。これはもう……辛抱たまらんぞ……!
「い、いただきます!!」
「え、ちょ……、お兄ちゃん?!」
ぱん、と両手を合わせてから、さっそく僕は弁当に食らいついた。やはり、というか実に、というか、どれもこれも本当に美味しい。特にこの卵焼きが実に絶品だ……!!
「もお……なんで勝手に一人で食べ始めてるの……?!」
「もぐもぐ……、あ、ご、ごめん。あんまりにも美味しそうだったからさ。ついつい……」
「…ついつい、じゃないよ。お母さんが知ったらまたぶん殴られるよ」
「うぐっ……! お、おまえ…それ…脅してるのか……?」
「んん~~? 何のことかなぁ~? さぁて、どうかなぁ~~」
あまりにも魅力的な弁当を前に、うかつにも僕は「ご飯はみんな揃って、いただきますしてから食べ始める」という我が家のルールに違反してしまった。だけど…。
「そ、それは家の中とか家族だけのルールだろ。今は…これは違うだろ!」
「あっそ。いつもはあーやも家族だ妹だ、とか言ってるくせに、そういうこと言うんだ。ふーん」
「うぐぐっ………!」
「その言い訳、お母さんにも通用したらいいけどねっ☆」
「ぬぐ……くくっ……!」
…絵依子の正論に完膚無きまで論破された僕に、これ以上の抵抗は不可能だった。
…やむを得ず、おそらく絵依子がこの中では一番好きそうな唐揚げを箸でつまみ上げ、絵依子に向けた。途端にニヤリと絵依子の口元が悪そうに吊り上がった。
「で、ではひとつ…どうかこれで……」
「…ほぉぉ、瞬屋の。お主もなかなかの悪よのう……」
絵依子のいつもの謎の時代劇ムーブには呆れるしかないけれど、しかし悪そうな笑顔でノッてきてくれたことには少々感謝だ。なぜならこれを食べたら僕と絵依子は共犯だからだ。であれば、そうそう告げ口されることもないだろう。
…ただ、お皿も何もないこの状態に、箸の持って行き場に僕は迷っていた。
「…なんかないかな…。うーん……」
などと考えあぐねていると。
「…おにいひゃん。あーん」
突然、いきなり絵依子が口を開けて、顔を突き出してきた。これは……まさか…このまま絵依子に「あーん」で食べさせろ、ということなのか…?
「……は…っ?! お、おまえ……なに言ってるんだ…?」
「ひひはら、はあう。…あーーーん」
…こいつ……いったい何を考えてるんだ?
あーんなんて、いい歳した兄妹がやるようなことじゃないだろ?!
でも……ここでこいつのご機嫌を損ねるのは得策じゃない。昨日や今朝は妙に不機嫌だったのに、今は不思議といつもの調子なのだ。
「ぐっ…くっ…、わ…判ったよ。じゃあ…あーーーー……」
意を決して、絵依子の口に唐揚げを運ぼうとしたその時。
「エコちゃんっ! 何してるのッッ!!!」
・・・どんっ・・・・・・!!
「っきゃ………ッッ!!」
いきなり、何故か、…聞いたことのないような金切り声の後に、絵依子が小さな声を上げて、僕の目の前からぶっ飛んでいった。
「…え……な………?」
「はぁはぁ……はぁはぁ……、エコちゃんの分もちゃんとあるって言ったでしょ!! なのになんで……そんなことするの!!!」
…その金切り声の主は…綾だった。お茶を買いに行っていたはずの綾が、いきなり絵依子に肩口からぶちかましたのだ。そして、今まで見たこともないような形相で叫んだ。
一体全体、何が起きたのか、僕にはまったく分からなかった。
「あ…綾? おまえ……何を……」
「え……、あ……しゅ…瞬…くん? あ、あの…ち、違うの! これは……あの…」
僕が声をかけると、一瞬、はっ、とした表情を浮かべ、そしていつもの、元の綾の顔が戻ってきた。そして、あわてたように倒れた絵依子を抱き起こした。
「え、エコちゃん、ごめんなさい。大丈夫?!」
「いたた……。…もお、あーやってば急に何なの?」
幸い、というか当然というか、絵依子に怪我はまったくなかった。まぁ綾のぶちかましぐらいで怪我をしたりダメージを受けるほど絵依子の身体はヤワではない。錬装していない生身でも、たぶん子供メスゴリラぐらいの頑丈さやパワーはあるのだ、こいつは。
「ご、ごめんねエコちゃん。瞬くんも…ごめんなさい。でも……せっかくの機会なんだし、やっぱり皆で一緒に食べたいなって思ってたから……」
「………」
「…屋上に戻ってきたらエコちゃんと瞬くんが食べてるのが見えて…。だから……急いで戻ろうと思って…」
「あ…あぁ…、…そうだったのか…」
「で、でも、突き飛ばすつもりなんて無かったの! でも走ってたら途中で足がもつれちゃって…」
すっかりいつもの通りに戻った綾が、申し訳無さそうに僕たちに頭を下げる。
でも、よくよく考えてみれば、僕らが…いや僕が悪い。元はと言えば僕が我慢できずに勝手に一人で食べ始めたからこんなことになってしまったのだ。だから…一番悪いのは…僕だ。
「…い、いや。僕の方こそごめん。みんなで一緒に、って言ってたのにな。だから…ごめん」
「うぅん、やっぱり私が悪いの。私がお茶を忘れたせいで…二人ともお腹減ってるのに待たせちゃった私が悪いの…。…ごめんなさい」
「…わたしもごめんね。お兄ちゃんだけ美味しそうに食べてるから、ちょっと意地悪したくなって…」
「そんなことない! 悪いのは…私なの。エコちゃんにあんなことしちゃったなんて…。だから…ごめんなさい…」
…なんだろう、このごめんの輪唱みたいなのは。
まぁとにかく、綾も悪気があった訳じゃないのは確かだろう。ただ、綾がぶちかましてきた時、何かを叫んでたような……。
あの時は気が動転してて、はっきりとは聞き取れなくて覚えていないけれど、確かに何言かを叫んだように思えた。それも何か良くない…不穏な言葉を。
「ま、まぁともかく。そういうことなら、さっきのはもう忘れよう。この話はもう終わり! ナシ! ノーカン! それでいいだろ?」
ふっ、とよぎった記憶の欠片を頭の隅に押し込んで、僕は事態を収集するべくパンパンと手を叩いて二人に言った。
「え…でも、それじゃ私……」
「いいから。絵依子もそれでいいだろ?」
「わたしは初めから気にしてないし。あ、でもお兄ちゃんを追い込むなら協力するよ?」
「え…絵依子……、おまえ……」
「…くすっ。もう、エコちゃんってば……」
…絵依子の言葉に一瞬青ざめかけたものの、それでやっと綾が笑顔を見せてくれた。ようやくこれで一件落着かな。
「じゃ、じゃあ仕切り直しということで……頂きます!!」
「「いただきます!」」
各々の前にお弁当と、綾が買ってくれたお茶を置いて、今度こそ改めて僕たちは揃って頂きますをした。いったん閉じた蓋を開け、僕だけ少し減ってしまったお弁当に改めて箸をつける。
「……ん……?」
ふと絵依子の方を見ると、黒っぽい何かを口に運んでいるのが見えた。
「絵依子、それって……?」
僕の弁当には入っていない、黒っぽいその何かが気になって絵依子の弁当を覗き込むと……。
「え……、これってまさか…牛丼…?」
「うん。エコちゃんにはこっちの方が良いかなぁって思って」
「その通り! さっすがあーや! 分かってるぅ! 肉! うま! かゆ!」
「いや……、こいつにそこまでする事ないって。作り分けるなんて手間だろ」
「お肉と玉ねぎを煮込むだけだから、手間ってほどじゃ…。その間に別のおかずを作ればいいんだもの」
「うーーん……。そうかなぁ……」
いまいち納得しかねるが、料理上手な綾がそういうのならそうなのかもしれない。なにせ僕は料理などほとんど出来ないのだ。素人目線でああだこうだ言っても、綾が違うというのなら違うんだろう。そう僕は自分を無理やり納得させた。
綾の方の弁当を覗くと、こっちは僕のと完全に一緒だ。
「ね……、瞬くん。ちゃんと美味しくできてるかな…?」
「…大変結構なお味です。こんなこと言うとアレだけど、母さんのお弁当より美味しいかも」
「ほ、ほんと? お世辞でも嬉しいな……ありがとう。……エコちゃんは…どう?」
「はふっ! むぐむぐ! はふっ! はふっ!」
「…聞くまでもないんじゃないかな」
「あはは………」
…そうして3人ともお弁当を完食し、残ったお茶を喉に流し込み、食後の余韻に浸っていると、ふいに綾が口を開いた。
「あ、あのね、瞬くん、エコちゃん。もし…良かったらなんだけど……。今日だけじゃなくて明日からも…おばさんの代わりにお弁当作ってこようか?」
「………え…?」
綾の唐突な申し出に、思わず僕と絵依子は顔を見合わせてしまった。
「え、い…いや、それはさすがに…。なぁ絵依子」
「う…うん……。だねぇ……」
「…どうして? 一人分作るのも三人分もたいして変わらないから平気だよ?」
「………い、いや…、そういうことでもなくてさ……」
「…うぅん。違う。本当は私が作りたいだけなの。作って二人に…、瞬くんに食べて欲しいの。それじゃ…ダメ?」
「え、あ、その……厚意は嬉しいよ。でも………」
「でも……何?」
「あ、いや、こういうのは母さんとも相談しないと…。僕らだけで勝手に決めるのは…。なぁ絵依子」
「あ……う、うん。そうだね」
…綾の申し出は確かにありがたいし嬉しい。もしそうしてもらえれば、ただでさえ仕事が忙しい母さんの負担は格段に減って、きっともっと楽になるし、いろんな余裕だって持てるようになるだろう。
だけどそれは、母さんの代わりに今度は綾に負担を被せるというだけで……。それはなにか違う気がするのだ。
「だから…っていうか、上手く言えないけど、その……」
だけどその気持ちをうまく伝えるための言葉が出てこない。どう言えば綾に分かってもらえるだろうか。そう思って次の言葉を探していた次の瞬間。
「…どうして! なんでそんなこと言うの?!」
…いきなり綾が立ち上がって、さっきのような金切り声を上げた。まるで急に人が変わってしまったみたいに髪を振り乱して声を上げる綾に、僕は思わず……目を疑い、一瞬呆然としてしまった。
「あ、………綾…?!」
「さっき美味しいって言ってくれたじゃない! 本当は嘘だったの?! だからそんなこと言うの?! ねぇ!!!」




