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Realita reboot 第二幕  作者: 北江あきひろ
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10月21日-3



「……う~~ん……」



 …今日の面接は超重要だ。これで全てが決まってしまうかもしれないことを

考えると、あんまり後の予定なんかは入れないほうがいいかもしれない。

 もしかすると時間もかかるかもしれないし、それだとお見舞いは難しいかも

しれない。


「…う~~ん…。今日の面接はけっこう重要だからな…。時間も読めないし…

……任せてもいいか?」


 1分ほど悩んで、僕はそう決めた。


「うん、いいよ。りょーかーい!」


 いつものようにビシッと敬礼のポーズを決めると、絵依子がけらけらと笑う。

 まぁ、綾の家は僕らにとっては勝手知ったる他人の家ってヤツだから、こいつ

一人でもたぶん大丈夫だろう。


 ・・・キーンコーン カーンコーン…





「お、そろそろ教室に戻らないと…」

「じゃあね。お兄ちゃん」

「うん。綾のこと、頼んだぞ」


 そして僕たちは屋上を後にして、お互いの教室に戻っていった。




「あれ、谷口くんは?」

 5時間目の開始ギリギリに戻ると、教室には彼の姿がなかった。僕らより

ずいぶん早く戻ったはずなのだけど。


「おぅ、谷口だったらさっき腹が痛いとかでフケちまったぞ。何かヘンな

もんでも拾い食いしたんじゃねぇの? うひゃひゃひゃひゃ!」


 一番無難そうに見えた激辛キムチカレーパンでも、それほどの破壊力とは…。


 …ごめんな。谷口くん。悪気は…ちょっとだけあったんだ。許してくれ…。

 午後のかったるい授業をいつものように何とかやり過ごし、ようやく一日の

お勤めを終えた僕は、急いで駅前に向かうことにした。





 少し早足で辿り着いた駅前は、昨日とは違って日常そのものだ。もしかしたら

またソニアさんがいるかも、なんて一瞬考えた自分に笑ってしまった。


「……まぁそりゃそうだよな。あれだけの人なら、毎日忙しく飛び回ってるん

だろうし…」


 会えなかったのは残念だけど、お楽しみは明日に取っておけ、という神様の

思し召しなのだと僕は考えることにした。

 それもこれも含めて、今からのバイトの面接にはできれば上手くいって欲しい。

改めて僕は気合を入れ直したのだった。





 途中のコンビニで、寝癖はないか服装は乱れてないかを自己チェックする。

人は見た目が9割、なんて言葉もあるぐらい、こういうのは最初の印象が重要

なのだ。

 仕事できるアピールも大事だけど、むしろこっちの方が重要なのだと、僕は

経験でそれを学んだ。


 まぁ、元々が僕なので、付け焼き刃でいまさらどうにか出来る部分はほぼ無い

のだけど……。





 ともあれ、目指すは路地裏にある、こじんまりした焼肉屋だ。さて、上手く

面接を乗り切って雇ってもらえればいいのだけど。



 ・・・・・・からり・・・



「あの…、すみません……」

「おう、昨日のバイト希望の子か。週に何日ぐらい出られる?」


 店ののれんを潜り、扉を開けた瞬間、ねじり鉢巻にはっぴを着ている人から

声をかけられた。

 …昨日のおじさんではない。ということは、この人が店長さんなのか……?

 いきなりのことで少し面食らってしまったけれど、とにもかくにも面接はもう

始まった、と見ていいだろう。切り替えて好青年をアピールしていこう。


「は、はひ! たぶん週に3日…いや、4日ぐらいは入れると思います!」


 ……なるべく好印象を与えるべく、僕は出来る限りのハキハキ声で答えようと

したものの、気合を入れすぎて声が裏返ってしまった。

 しかしまだ戦いは始まったばかりだ。ここからだ。勝負はここからだ…!



「…そうか。選考の結果、今回は採用を見送らせて頂く。今後のご活躍をお祈り

申し上げる」


「………は……?」




 は・・・早っ!!




「え、あ、あの……!」


 …っていうか、こんなの「面接」ですらない。せっかく気合を入れて、あれや

これやと受け答えを考えてきたのに、こんな一言で終わるだなんて………想定外

すぎる!


「…まぁ聞いてると思うけど、あんたの前にもバイト希望の子が来てな。毎日

フルで入ってくれるならあんたにしようかとも思ってたんだがな」



 ……これは…しくじったか…。


 いや、でも週に6日も7日もバイトなんて、さすがに無理だ。


 僕の体力的もそうだけど、何より絵依子が黙っちゃいないだろう……。



「は……ぁ……」


 ……残念だけど仕方ない。縁がなかったってことか………。


 また一から探し直しだな……。





「てなわけで、無駄足させて悪かったな。ちなみに…良かったら次の機会が

あれば…連絡しようか?」

「………え!!」


 がっくりとしていたところにかけられた、意外な店長さんの言葉に僕は耳を

疑った。

 次の機会…ということは、またバイトの欠員が出たら…ということか…!?


「来月になるか、再来月になるか……いつになるかは判らんけれども、それで

いいなら……」

「い、いいです! ぜひぜひお願いします!」


 続く店長さんの言葉に、僕は思わず食い気味にがぜん食いついてしまった。

まさかの敗者復活のチャンスを、向こうから言ってきてくれるとは。


「へぇ……、えらいやる気だねぇ。何? 将来はあんたも独立起業を考えてる

って感じなのかい?」

「あ、いや、そういう訳では……」


「…まぁいいや。連絡先は履歴書のままで大丈夫なんだな?」

「はい! 大丈夫です! よろしくお願いします!」


 降って湧いたような、まさかのチャンスに、今度こそ僕は精一杯のハキハキ声で

答えた。

 ここのバイトの条件とかは、僕の希望にまさにドンピシャだ。今回はダメでも

いずれは就けるかという提示には飛びつくしかなかった。


 最初の好青年アピールも無駄ではなかった…と思いたいところだ。


「じゃあまた追って連絡するから。はいお疲れさん」

「はい! 失礼します!」


 何度も店長さんに頭を下げ、僕は店を後にした。






「…ふっふっ…。もう駄目かと思ったけど、首の皮一枚でつながったな…」


 焼肉屋さんを後にして、また他の店先のバイト募集の張り紙をチェック

しながら、いろいろと僕は考えていた。いつになるかは分からないとはいえ、

「次」はたぶん確実にあそこでバイトできるということになったのだ。

こうなれば、後はそれまでの、いわば腰掛けのバイトを探すだけということだ。


「…適当にまたコンビニあたりのバイトにでも入ろうかな…」


 などと思いつつも、どこも人手不足のこのご時世だ。入って1ヶ月で辞めたり

したら、向こうにも迷惑だろう。


「となると……短期の日雇いなんかがいいのかも……」


 日雇い系はけっこう体力勝負な仕事が多いので、あんまりやりたくはない

けれど、給料は悪くないし、何より日にちや時間に融通が効くのがいいところだ。

 フルに入るのではなく、さっきの焼肉屋さんに欠員が出るまでの繋ぎと割り

切ってしまえば、意外に悪い選択ではないように思う。




「……よしよし、そうと決まれば…とりあえず明日明後日はなんとかなりそう

だな…」



 思わず頬がまただらしなく緩んでいくのが自分でも分かってしまった。残念

ながらバイトが決まった訳ではないけれど、とりあえずの猶予は確保できたの

だから。

 あとは明日の京都旅行のためのアリバイ工作をどうにかでっち上げるだけだ。




 …さて、絵依子のやつはどうだったのかな…。


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