続きです
リーガルハイ
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病院
(暗幕開ける)
(照明つける)
黛•服部さん先生は……?
服•黛先生、以前手術を拒否なさっております。なにせ確率は5%ですので……。
一日中あの木をみつめております。
最後の葉が落ちたら自分の命も消える時だと。そうおっしゃって。
黛•(木の方へ行き ガシャガシャガシャ最後の葉をほうきで落とす)
小•あああ!お前、なにするんだよ・・・!
(外国人風?)
黛•盲腸の手術で死んだりしない!さっさと手術を受けなさい
小•なんでそう言えるんだ、確率が5%なんだぞ
黛•失敗する確率でしょうが。それもコミカド先生独自調べの~!
小•その5%に私がならないという保証など、どこにもないだろうがぁぁぁぁ(立ちあがる)
君のように心身ともに超合金出てきている無神経な人間にわからないだろうが
私のように繊細な精神の持ち主は、例え成功率の高い手術であっても非常にナーバスになるのだ。
それも理解もせず、心の支えであった最後の一葉を故意に棄損したことは病人の虐待に等しい。
ただちに接着剤で葉っぱを復元すると共に精神的苦痛に対する謝罪を要求する。
黛•(腹パンチ)
小•(倒れる)
服部さぁん。盲腸が破裂したかもしれないので、ナースコールを押したのち、この暴力性異常者を隔離病棟へ拘束してくださぁい。
服•はい。
(照明消す)
(暗幕閉じる)
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(暗幕開く)
(照明つける)
小•服部さーん、傍に居てくれないかなぁ。終わるまで手ぇ握っててぇ~
服•手術の邪魔になりますので
小•服部さんが執刀してよ
服•私は以前、外科医をやったことだけはありません
小•なんで~・・・、あ、辞世の句!辞世の句詠んでない!まだ辞世の句を読んでない!
黛•金が好き ああ金が好き 金が好き
小•勝手に詠むな
黛•毒舌の~ 最低弁護士 コミカドだぁ
小•そんなコミカドかるたみたいなのやだぁぁぁ
(黛、服•舞台袖へ移動)
小•あぁー!服部さぁん!!!
(弟•左手から舞台に上がり、お辞儀をする)
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→裁判所
『暗幕開けない』
長•それでは開廷いたします
小•(前文『いたし』から入場)
遅れて申し訳ございません。分け目がなかなか決まらなかったもので。
黛•先生!
小•(相手の方へスタスタ)
黛•えっ?
小•本日高橋鉄鋼株式会社からの依頼を引き受け、本件代理人となりました古美門研介です。
(古、黛•あっかんべー)
(古•お尻ペンペン)
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→古御門の家
小•あーー!リハビリにすらならなかったなぁー。相手がポンコツすぎて。
黛•やけ食い中
蘭•あれ?真知子ちゃんどーしたの?もしかしてやけ食い?
服部さん。俺もご飯〜〜
服部•はい。ただ今。
TV•続いてのニュースです。昨日、千葉県船橋市の病院で新薬による癌治療を受けていた女性が亡くなりました。女性の家族は投与された新薬が死亡の原因ではないかと述べており、病院側を訴える方針を示しています。続いてスポーツです。
テニス全米オープン準決勝が昨日夜米国ニューヨークのアーサーアッシュスタジアムで行われ、
(電話が鳴る)
小•もしもし……え?……いいですが私は高いですよ〜 ?
3千万です。それ以下は……
あ、はい‼︎やります!やります!
早速明日伺いますのでよろしくお願いします。
黛くん。仕事だ!
リハビリにはちょーどいいくらいのやつがね。
黛•えっ?
古•服部さーん!
ヘリコプターでも買っちゃいましょー‼︎
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→病院
小•いゃ〜、お目にかかれて光栄です。
近藤院長‼︎
院•小御門君と言ったね。ウワサは聞いているよ。
(小、院•握手)
知っての通り、新薬について訴訟を起こされてしまってね。
☆院•矢澤くん彼らにカルテを見せて差し上げなさい
☆弟•わかりました
(資料の中からカルテを取り出す)
亡くなられたのは林由美子さん28歳女性です
この病院にいらっしゃった際には既にガンは今までの治療薬では治癒が困難なほどに進行していました。
そこで、我々は最近新たに開発された新薬を投与することを決定しました
しかし新薬を投与してからも病態は悪化し続け、一週間後に林さんは亡くなってしまいました
弟•どんな薬でも危険性はあります。林さんの死因も新薬が原因だった可能性もなくはありません。しかし、仮にそうだとしても、あの時点では新薬が原因だったとはわかりようがなかった。防げない事故だったんです。
黛•新薬の危険性についてはちゃんと説明なさったんですよね?
弟•もちろんです。同意書にもサインをいただきました。
小•なら問題ありません。(立ちあがる)
弟•ご家族の気持ちもわかりますが、こーゆーことでいちいち裁判を起こされては病院は破産してしまいます。
小•そーだよねぇ〜〜
★黛•ちなみに亡くなった後の病院側の対応はどのようなものだったんですか?
☆弟•医院長の指示で亡くなってから2時間後には立ち退きをお願いしました
☆黛•たったの2時間ですか⁉︎
☆院•死んだ人間にいつまでも病院にいられても邪魔なだけだ
☆黛•いくらなんでも早すぎます‼︎
☆院•病院の経営とはそーゆーものだ、こっちは次々来る患者の治療に努めなければならないのだ
死んだ人間に構っている暇はない
そんなことより、相手は強いのか?勝てるのかね?
☆黛•相手の弁護士は九條和馬先生といって、
長いキャリアを持つなかなかの強敵です
小•(黛の『強敵』からスタート)
愚問ですね、私が負けることなどあり得ません。あんなやつ明日にはけちょんけちょんにしてやりますよ
もっともこの超合金一人で充分かもしれません
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→古御門の家
『暗幕開けない』
服•お疲れ様でございます。まるで医学部を受験するようですな
黛•(医学書を読み漁る)医療裁判はどれだけ専門的知識をもっているかにかかっていますからね。頑張ります。
服•小御門先生もたくさん本を買い込んで一心不乱に読みふけっておりますよ。
黛•(スタスタ)ばん!
ブラックジャックですけどね!
小•医療漫画の最高傑作だ。きみこそちゃんと勉強したまえ。
黛•やってますよ。
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→裁判所
☆裁判長•名前と職業を述べて下さい
☆証人女•近藤総合病院で看護師をしています、遠藤です
☆裁判長•ありがとうございます。では被告代理人
☆黛•病院側は林さんから新薬投与に対する許可を頂いていたのですよね?
証人女•はい。近藤院長自ら説明しましたし同意書にもサインしていただきました。
黛•これですね?
女•そうです。
黛•たしかに林さんご本人のサインがあります。以上です。
長•原告代理人
九•知ってたんじゃありませんかねぇ。
女•何をですか。
九•新薬に死亡の危険性があることをです。
女•ですから、当時は知り得ませんでした。
九•(古御門側から資料を奪う)
でもこの同意書の副作用のページ、細かい字で色々書いてありますが非常に稀というところに、心筋梗塞をおこす可能性があるとかいてあります。これは、心臓発作が起こるってわかってた証拠ではないでしょうか。
女•それはあくまでも理論上の可能性の話で現実に起こるとは。
それにわたしは医師ではありませんので、正確にはわかりません。
九•院長は知ってたんだ
女•知ってたら使うわけないじゃありませんか
九•でも病院の実績は上がるでしょ。世界中から患者が押し寄せる。
黛•異議あり!憶測で被告をおとしめる発言をしていますし、質問の内容は証人が答えるべきものではありません。
九•すみません。でも、院長をかばうために嘘をついているのかなぁと思いまして。
なぜなら、あなたが院長の愛人であるから。
女•根も葉もない話です。
九•わたしが調べたところ院長はあなた以外の女性とも関係をもっています。
あなたと同じく看護師の池田さん
渋谷のホステスの山本さん
銀座の高木さん
八王子のキャバクラ嬢の渡辺さん
あなたの写真もありますよ。
(写真をばらまく)
近藤院長は医師として以前に人間として問題があるのではないでしょうか。
以上です。
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→裁判所
☆裁判長•名前と職業を述べて下さい
☆証人α•クスノキ製薬の代表取締役、クスノキです
☆裁判長•ありがとうございます。では被告代理人
九•あなた方は近藤医院長に裏金を渡していたのではないですか?
証人a•そんなことはありません。我々クスノキ製薬は近藤院長に研究費として寄付金はしておりますが決して裏金ではございません。
九•その金の使い道は近藤院長の独断で決まるんですよね?
a•はい。
九•では、寄付した後の管理は近藤院長に任せてあると?(怒った感じで)
a•えーと……はい。
九•そのような資金を寄付金と言って良いものでしょうか、裏金そのものではないでしょうか以上です。
黛•裏金を貰っていたという事実はありません‼︎
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→古御門の家
服•黛先生、災難でしたな。
黛•ひどいもんですよ。小御門先生より性格が悪い人は初めて見ました。
服•でも、九条弁護士とやら。写真をばらまいたり裏金と決めつけて質問をしたら自分の首を締めることになるように思えるのですが……。
黛•ヤケクソなんでしょう…。こちらは粛々と医学的な証明をするのみです。
小•君は相変わらず何もわかってないようだなピノコ。
黛•だれがピノコですか?
小•教えてやろう。世論というのは事実よりもスキャンダルが好きなのだよ。たとえそれが真実であってもなくても一度発火したら止まらない……。
もっとも恐ろしいのは、捨てるものが何も無い人間だ。
黛•そもそも新薬の投与の問題から逸脱した裁判になってませんか?
ちゃんと医療が正しく行われたのかどうかというのを裁判するべきです。
小•世論は売られた喧嘩を買わなければ負けた、とみなすのだよ。
本当におめでたい頭だ
あっちょんぶりけ
(黛•古を突き飛ばす)
(古•ソファに倒れこむ)
服•これだけ大きく報道されてしまっては病院もイメージダウンではないでしょうか?
医学論争は放棄して院長の個人攻撃に徹するということでしょうか?
小•(ソファから立ち上がる)
流石です服部さん。
黛くん。医学書を捨てよ!
もはやそんなものに意味はない‼︎
ルール無用の殴り合いが始まるぞ〜
……もっともわたしの得意分野だがなぁぁ
はっはっはっっはーーー
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『暗幕開けない』
→道路
記•こちら近藤総合病院前です
(院•登場)
記•医療過誤では無いのですか?
院•うるさい‼︎
記•愛人については?
院•通しなさい!
記•裏金があったのではないですか?
院•うるさい‼︎
そんなものはないと言っているだろ!
(院•記者を突き飛ばす)
記•暴力です、やはり悪の医者近藤院長には裏がありそうです。
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→病院
古•院長、やってしまいましたねー
院•記者が無礼だっただけだ!
それにわざと突き飛ばしたわけじゃない!
(一瞬静まる)
弟•もう限界ですよ、、、、和解するべきだ
過ちを認めることは恥ずかしいことじゃない!
黛•わたしも弟子先生に賛成です。
お互い醜い罵り合いをして傷付け合うだけならこれ以上やっても無意味です。
小•出た出たポンコツ理想主義者
院•(ばん!机叩く)
ここまでコケにされたわたしの名誉はどうなる。
黛•(手で口を隠しながら)
お言葉ながらほとんど事実なのでは?
弟•どこもかしこもマスコミに囲まれ、抗議の電話は鳴りっぱなし。逃げ出す患者も続出している。正常な病院運営ができない。
院•だからどーした!
弟•それに、院長の奥様も家を出ていかれましたよね
院•うるさい‼︎
弟•院長のお孫さんはいじめの対象になっている。
院•そんなことはどうでもいいことだ‼︎
弟•何ですって?!あなたのお孫さんですよ。そんなに自分の名誉が大事ですか?!!!
院•誰に向かって口を聞いているんだ‼︎
弟•もう結構です!
(舞台からはける)
黛•矢澤先生!待ってください‼︎
古•彼少し危なっかしいですね
院•あいつは自分の将来を考えられる人間だ。
自分たちが不利になることは言うまい
小•そーですか
では院長手始めにこのマスコミによるごたごたを終わらせましょう。
院•何か手はあるのか?
小•えぇ。
目には目を、歯には歯を。スキャンダルにはもっと惨めなスキャンダルをです。
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→裁判へ
九•院長は新薬についてしっかりと説明をしてくれましたか?
原•えーと、まぁはい。でも機械的にただ読み上げただけだったので……。
九•新薬のことはどのように勧められましたか?
原•他の薬よりも効果があり危険性も少ない魔法の薬だと言われました。
☆九•しかし新薬を投与してから病態は悪化をたどる一方だった
医院長は原告を騙したんだ!
もう一つ伺います
奥さんの亡くした後の病院側の対応はどのようなものでしたか?
☆原•よし子が死んでから、だいたい2時間くらいで病院から追い出されました
☆九•近藤医院長はどうしてこんなに非情な対応を林さんにしたのでしょう?
それは近藤医院長が遺族の気持ちも介さない冷たい人間だからでしょう
以上です。
長•被告代理人
小•これは何でしょう?(写真を見せる)
なくなった奥さんと出会う前、あなたは他の女性と結婚、またはお付き合いなさっていましたよね?
そして、あなたは何かと理由をつけ、すぐ返すと言ってお金を借りた。今そのお金は?
原•…………違う。今回は違うんだ!死んだ由美子と出会って俺は変わったんだ。ほんとだ信じてくれ
小•今回、、、「は」?誰もあなたが女性を騙して金を手に入れていたなんて言ってないですからご安心を。
九•異議あり!本件とは無関係な質問だ‼︎
小•何言ってるんですか。あなたもこの前やってたでしょ。それに原告の人間性を判断することも必要です。
やられたらやり返す倍返しだ
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→裁判所
小•矢澤先生。あなたは林さんの担当医でしたね?
弟•そうです。
小•弟子先生は将来も有望で他のスタッフたちからの信頼も厚く、極めて優秀な内科医です。その弟子先生が新薬がもっとも有効だと考えて、しっかりと説明をした上で投与したのですから間違いはないでしょう。
この説明の時リスクについて何一つ隠していることはありませんでしたよね?
弟•………………
小•ん?どうしました?
あなたは当時知りうる限りのすべてのリスクを原告さんに伝えた。何一つ隠していることはありませんね?
弟•…………いいえ。
小•え?質問を変えます。なくなった原因が新薬であると断定できませんよね?
弟•断定できませんがその可能性は高いと思います。
小•質問を終わります
弟•わたしは新薬の危険性について知っていました。海外で死亡例が出ていたことをしっていました……
小•もういい。質問にだけ答えてください。
やめなさい‼︎
質問を終わります。
(古•自分の席へ戻りふてくされる)
(九•古と入れ替わりで証言台へ)
九•あなたは新薬の危険性について知ってたんですよね?
弟•はい。
九•近藤院長も?
弟•投薬をしたのはわたしです。責任はわたしにあります。
九•院長の指示に従ったんですよね?
弟•最終的に判断したのはわたしです。わたしにすべての責任があります。
九•なぜ院長は新薬にこだわったのか、製薬会社から多額の裏金をもらっていたからでしょう。ここでしか受けられない治療なら患者はこぞってやってくる。どんなに高額だろうが命が助かるなら払う。こんなにうまい商売はない。だから新薬にこだわったんだよ!そうだろうが!ちがうか!?
弟•…………。
九•林さんと奥さんになにかいいたいことはありますか?
弟•医は仁術なり。わたしの座右の銘でした。ですが、忙しさの中でわたしはいつかそれを忘れ、患者さんやそのご家族の気持ちに寄り添うことをないがしろにしていたと思います
(弟•原告を見る)
林さん本当に申し訳ありませんでした。
古•(机を叩いて立ち上がる)
僕負けた⁉︎
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